表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/90

PURGEー86 二番隊隊長!!

 御伝流(がでんりゅう)の門下生達に周りを囲まれ、端から見れば完全に追い込まれている状況。

 だが声色が変わった入間の放つ空気に、傍にいる黒葉達はクオーツの元とはまた違う、鋭く突き刺さるような恐怖を感じ取った。


(空気が変わった? これ、疾風隊長が)


 黒葉が入間に視線を向けかけるも、瞬きをする間に入間の姿は消え、同じタイミングに囲んでいた門下生達が大勢、音も立てずに倒れてしまった。


「何だ?」

「何が起こって」


 傍にいる仲間が倒れた事態に門下生たちに動揺が走ると、声を出しかけた人達もまた次々と倒れていく。動揺は混乱を生み、僅か一分も経たない間に門下生の多くは剣術の構えを解いてしまう。


「お前達、構えを解くな!」


 羅花(らか)が注意を促すも時は既に遅く、周りを囲んでいた門下生達は九割がた気を失って倒れていた。


「馬鹿な。道場の門下生が束になってかかって、こんな……精鋭だって、何人もいたのに……」


 羅花は他の門下生達と違い構えこそ、やはり動揺は隠せず太刀を持つ手元が震えている。そんな中、入間は姿は見せないままに話しかけて来た。


「こんなんが精鋭やって? なんともま、御伝流(がでんりゅう)も随分と落ちぶれたもんやなぁ。私が知っている門下生はもっと骨も芯もあったってのに……

 ()()()や、七番隊の隊長が知ったらがっかりもんやで」


 焦る羅花は、何処から現れるかも分からない入間に視線の向きを何度も変えつつ、文句ともとれる言葉を口にした。


「このような不意打ちを平然と……卑怯な!」

「多人数で囲い込んどいてよく言うわ。それに忍者に正々堂々を求めている時点で間違いやで。

 忍者は卑怯、闇討ち、裏事こそが本領。真正面から正面切って戦うなんてのはお門違いや。けどま」


 入間は混乱しつつも構えを解かない羅花に対し、敢えて真正面に姿を現した。彼女と共に来た黒葉達は、クオーツとはまた違った圧倒的な強さに棒立ちになっているばかりだった。


「ここは敢えて、その文句に乗ってやろうやないか」


 右腕を軽く上げ、指を動かし挑発の姿勢を取る入間。羅花はこれに苛立ち、挑発に乗って自ら前に出た。

 太刀を振り上げ、大きく叫ぶ羅花。彼女は踏み込んで飛び出し、一気に入間との間合いを詰めた。


「<御伝流(がでんりゅう) 牡丹(ぼたん)>!」


 羅花の叫びと共に、勢い良く振り下ろされる太刀。眉間に直撃するかに思われた刹那、入間は右足を後ろに下げて、静かに呟いた。


「<秘伝四鬼術(しきじゅつ) 浮幽(ふゆう) 脚刃(きゃくじん)居合い(いあい)>」


 次の瞬間、羅花の唐竹割が振り下ろされたときには、入間は彼女のすぐそばを通り過ぎていた。

 歯を剥き出しにして汗を流す羅花に対し、入間は静かに語り掛ける。


「一つ言っとくわ。次警隊の隊長を闇討ちしたいんなら、あの十倍あっても足りへんで」


 入間が軽く台詞を吐いた直後、羅花の太刀は刃が折れて落ちていき、次に彼女自身も倒れてしまった。しかし気は失っておらず、息を荒くしているが動けなくなっていた。


「これでも結構手加減しとんねんで。本気出したら、この道場が粉々になってまうんでな」


 黒葉達は完全に圧倒されていた。自分達と共にやって来た存在、次警隊二番隊隊長『疾風 入間』の実力に。

 自分達の隊長であるクオーツの威圧とはまた違った強さ。鋭く、容赦のない姿勢。これでも全然本気でないというのだから、なお恐ろしいものがある。


 黒葉は、同期である『西野 幸助』が彼女に鍛えてもらった事があると聞いていた。

 入隊試験時、侵入した赤服を退けてみせた幸助を知っている黒葉は、彼の実力も交えて目の前の入間に対し戦々恐々としていた。


(あの幸助が圧倒されるレベルの人物……納得っていうか、本当に凄いんだな、隊長って)


 次警隊という組織。それを束ねる人物達の強大さに、身体が震えた。


 入間は振り返り、倒れた羅花に近付いて再び声をかけた。


「さて、ここの坊ちゃんがどこに行ったか、教えてもらおうか?」


 倒れているところを見下ろす入間に、羅花は下から睨みつけていた。


「教えません……これは、御伝流(がでんりゅう)の未来のためだから……」

「心にもない事を。あの坊ちゃんしか継げる奴がおらんから、いやいや従っとんねんやろ?」

「そんなことは」


 羅花は口ではこういうも、一瞬目線が別方向によぎった。入間の言う通り、心の底には引っかかるものが残っているようだ。

 とはいえ黒葉達に羅花たちを改心させるほどの余裕はない。音尾を救うためにはもう時間がない入間は、いつの間にか手元にクナイを出現させていた。


「悪いんやけど、生憎私はクオーツ隊長と違って脅しは苦手でな。時間もない事やし、吐くまでちょっと痛い目に遭ってもらうで」

「そんな! そんな事すれば、次警隊が黙ってなど」

「私を誰やと思っとんねん。次警隊一の諜報員。この程度のゴタゴタを闇に葬ることぐらい、造作もないわ」


 羅花は自分を見つめる入間の目に恐怖した。さっきと怒りが何処か混じった鋭く尖った目付き。彼女が口先だけではなく、本当に拷問をする気であることを暗に伝えさせてきていた。


 次の瞬間に羅花に振り落とされるクナイ。喉元に突き刺さるかに思われたその時、羅花は震える口を開いた。


「教えます! 教えますから……」


 羅花の言葉に入間はほんの数ミリの所でクナイを止めた。情報戦についても、この場は完全に入間が勝利したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ