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魔物討伐、再び。
本日二度目のリキュー村の者たちからの盛大な送り出しを受けたアルは、同じ道を通って先ほどの畑にやって来た。
繁殖力が強いと聞いていたが、畑にはゲースマーハの姿はひとつも見当たらない。さっき全滅させたばかりなのにもう復活してたらどうしようと思っていたアルは、空っぽの畑を見てホッとした。
「……それで、ゲースマーハの本体はどこなんですか? ここに来れば分かると言いましたよね」
「地下茎で殖える魔物ってのは、一定の間隔で地上に顔を出すもんだ。……見ろ」
農夫が顎で指し示した方向をアルが見遣ると、畑から大分離れた場所に草が生い茂っているのがうっすらと見えた。荒野にぽつんとあるその茂みは、何やら見覚えのあるフォルムだ。
「……まさかあれは」
「この畑に生えてたゲースマーハの群れは、あそこから伸びてきたんだろうな」
「つまり、ゲースマーハの群れをたどっていけば、最後は本体にたどりつける……というわけか」
「腕っぷしは弱いが、おつむはまだマシのようだな」
しれっと言い放った言葉に、アルはムッとして言い返した。
「……助けてくれたのは礼を言います。だが、見ず知らずのあなたにそんなことを言われる筋合いはありません。そもそも何故、私の連れなどと村長に嘘を? 私に文句があるくらいなら、討伐に付き合わずにとっとと消えたらよかったでしょう!」
「田舎モンてのはよそ者に警戒心が強い。村のモンの信用を得るにはおまえの連れだって言った方が手っ取り早いからに決まってるだろ。そうすれば、一緒に討伐に行けるしな」
(「一緒に討伐に行ける」……?)
向こうのゲースマーハの群れに向かって歩き出した農夫の後を歩きながら、アルはきょとんとその後ろ姿を見た。
(もしかしてこの男は、私一人では討伐は厳しいと知り、協力してくれた……? もしそうならば、悪いことを言ってしまったな……)
「──路銀が必要な身の上としては、それが手っ取り早い。だから俺は、さっさと魔物退治を終わらせて早いとこ金をいただきたいんだよ」
「金のためかい!」
男に失礼な物言いをしてしまったことに悩んでいたアルだったが、余計な悩みだったようだ。
「……で? そんな弱っちいのに、何だって無茶な討伐依頼を受けたんだ?」
「あの村には旅の途中にたまたま訪れただけなんですが……村人総出で泣いて頼まれちゃ、むげに断れないでしょう。だから畑にちょっと様子を見に行くだけでもと思ったんです。剣は持っているから弱い魔物なら私でも倒せるかと思って」
「本当に甘ちゃんだった、ってわけだな」
農夫があからさまにため息をついたので、アルの顔がかっと赤くなった。
「何ですって?」
「あのな? その立派な騎士様の見た目じゃ、村人が泣いて頼んでくるのは当然だろ。その鎧に、その剣、結構な代物だな。特に剣の方は、レベル30以上の戦士がようやく扱えるほどのクラスの。装備主の実力に不釣り合いすぎて、剣と鎧が可哀そうなくらいだ。どうやって手に入れた? かなりのお値段だったろ」
「そ、そうなんですか? それは知らなかったなあ……!」
今度は顔を青くして目を泳がせるアル。あからさまに何かを隠している顔である。
(盗んできたってわけではなさそうだな。そんな勇気なさそうだし。……ということはアレか。金持ちのボンボンってとこか。このひ弱そうな体格を見るに)
……剣士を夢見て家出したボンボン?
そうと分かれば、やることはひとつ。農夫はアルの背中をバシンと叩いて言った。
「よし、仲良くしよう」
こいつが危ない目に遭いそうになった時でも助けてやれば、ちょっとした小遣い稼ぎになる。お近づきになっておいて損はない。
「名前、まだ言ってなかったな。俺ぁ、グルトってんだ。おまえは?」
「アル……」
「アルだな。ゲースマーハ退治、よろしく頼むぜ相棒」
「は?」
農夫、もといグルトの態度の変貌ぶりについていけないアルは、ただきょとんとするばかりだ。しかも、頑丈な鎧を着ているというのに、グルトに叩かれた背中がヒリヒリと痛い。
だが、仲の悪い状態で討伐に行くよりは仲良くなってからの方がいいに決まっている。アルは背中をさすりながら、謎の農夫グルトと共に歩みを進めるのだった。




