表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
My Fair Vampire  作者: 九重ゆえる
第2話『フラッシュバックと脱出イリュージョン』
9/123

第2話 4

「……信じる訳ないじゃん。バカじゃないの?」

 淡泊に言ったハルカは冷静に、

「放して下さい先生」

 掴む力は弱まったものの、ハイコはまだ放さない。

「じゃっ、じゃあ、エリザベスから言われたことも全部信じてない!?」

「だからエリザベスってなに?」

 うんざりと言い放ったハルカは思った。そんなことより早く放せと。

「なにって、君が拾ったかわいいかわいいしゃべくる小鳥のことさ! あの子は君にいろいろとしゃべったのだろう? 私がヴァンパイアだということも」

 ハルカは“あの小鳥”の寝言を思い出した。確かに“ヴァンパイア”という単語が出てきた気もする──が、出てこなかった気もする。

 その前に、どうして昨日ハルカが小鳥を拾ったことを知っていて、しかもその小鳥がしゃべるということまでハイコが知っているのだろう。

「何も言ってなかったよ。ずっと寝てたし」

 寝言のことはとりあえず置いて、相手が知りたがっていることを述べてみた。

「じゃあ、今朝あの時──教卓の中で言った時──。あの時君は私がヴァンパイアだということに微塵も気付いていなかったということかい?」

 ハイコを見つめてこくりと頷くハルカ。気付いていなかったも何も気付く要素なんて何処にもなかった。どんなに頑張っても気付きようがないではないか。名探偵でも無理だ。

「そっ……ん、な……! ということは私は自ら……っ!」

 ハイコは頭を抱えて悶え始めた。なにやら自身を酷く責めているようだった。

 訳が分からずとりあえずため息をついたハルカは、

「どういうトリック使ったのかは知らないけど、さっきのイリュージョンはまぁまぁ良かったと思うよ。教師はやめてそっちにすれば? 本業」

「ト、トリック……。イリュージョン……。ハルカはクールに見えて実はおバカさんなのかい? ツンデレと見せ掛けて実は天然素材さんなのかい?」

 ツンデレ? 天然素材? またよく分からないことを言い出した。そんなハイコを無視してさっさと歩き去ろうとしたハルカだったが、

「待って!」

 腕をがっちり掴まれた。ハイコの指は細いハルカの腕を1周以上していた。「触らないで」振り解こうにもびくともしない。背は高いが決して体格がいいとは言えない体つきなのに、力はしっかりとあった。……ハルカの方の力が無さ過ぎ──というのもあるが。

 突然ハイコが鋭い目つきで言う。

「相澤ハルカ。君のことを知る為に、まずは私のことを知ってもらおうと思う。その方がフェアだろう? エリザベスを引き取るついでに君のお宅へお邪魔させてもらってもいいかい? あの小鳥は普通の鳥ではないんだ。ハルカになら特別に、本当のことを教えてあげるよ?」

 自分のことなど知られたくないしハイコのことも別に知りたくなかったが、小鳥のことだけは別だった。知りたい。そう思った。

 小鳥の存在が、憂鬱な日常という名の地下室から出る為の鍵に思えたハルカは、ハイコを見つめながら小さく頷いた。









◆第2話◆

◆END◆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ