第6話〜最終話
激しい夕立のように過ぎ去った日々が落ち着き、二人が静かに柚子茶を酌み交わしたあの日から数日。
季節は歩みを止めず、確実な冬の訪れを告げていました。
本章は、身を切るような冷気の中で二人が見つけた、ささやかで温かい「雪宿り」の記録です。白く染まりゆく世界を背景に、重なり合う二人の心の機微を、どうぞ静かに見守りください。
二人が静かに柚子茶を飲み終えてから数日後。予報通り、その日の朝は冷え込みが一段と厳しく、庭の隅にはうっすらと霜柱が立っていました。
「秋弘さん、これ……」
冬子は、母屋の勝手口から外を覗き、驚いたように声を上げました。
庭の飛び石の上、そして柚子の木の葉に、小さな白い粒が静かに降り積もっています。ついに、この冬の初雪が舞い降りたのです。
「おや、本当に雪になりましたね」
秋弘は、防寒着の襟を立てながら庭へと歩み寄りました。彼の吐く息が、真っ白に染まっては消えていきます。
「昨日、柚子を全部収穫しておいてよかったです。これでは、外の空気は氷のようですね」
冬子は少し身震いをしながらも、天を仰いで嬉しそうに微笑みました。
「ええ。ですが、この寒さがあるからこそ、あの柚子茶の温かさがより身に染みるというものです」
秋弘はそう言って、昨日もらった小さな柚子の実をひとつ、ポケットから取り出して愛おしそうに見つめました。
「今日も少し、寒さ宿りをしていかれませんか? 今度は、柚子を使ったお汁粉でも作ろうと思っているんです」
「それは魅力的ですね。喜んで、お邪魔させていただきます」
二人は、ちらつき始めた雪を背に、再び温もり溢れる母屋の引き戸を開けました。外の白世界とは対照的な、おだやかな火の気配が、二人を優しく迎え入れま
【了】
本作を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
激しい夕立のようだったあの日々から、初雪が舞い散る今日まで。移り変わる季節の中で、少しずつ、けれど確かに重なり合っていった秋弘と冬子の心の機微を、皆さまと一緒に見守ることができ、作者としてこれほど嬉しいことはありません。
外は身を切るような寒さですが、母屋の引き戸の向こうで交わされる二人の会話と、温かい柚子のお汁粉が、読者の皆さまの心も少しだけ温めてくれたなら幸いです。
またどこかで、二人、あるいは新しい物語でお会いできる日を楽しみにしています。
温かい応援を、本当にありがとうございました。
2026年7月15日




