序
「エイミー、はいこれ」
婚約者のヒューゴー様が、我が家の玄関で会うなり薔薇の花束を差し出してきた。
「まあ綺麗。いつもありがとうございます、ヒューゴー様」
「いやいや、愛する婚約者へのせめてもの気持ちだよ。どうか受け取ってほしい」
「ええ、もちろん。――セバス、これ、花瓶に入れて飾っておいて」
私は花束を、専属執事のセバスに渡す。
「承知いたしました、お嬢様」
今日も女性かと見紛うほど美しい顔をしているセバスは、丁寧に花束を受け取ると、奥に消えて行った。
「さあヒューゴー様、中庭の東屋にお茶を用意しておりますので、参りましょう」
「ああ」
今日は我がオルブライト伯爵家で、ヒューゴー様とお茶を飲む約束をしていたのだ。
こうして今日も私とヒューゴー様は他愛ない話に花を咲かせ、至って滞りなくお茶会を終えたのであった――。
「じゃあ、次に会うのは来週のホームパーティーだね」
帰り際、ヒューゴー様がそう仰った。
来週末は、ヒューゴー様のご実家のアシュビー侯爵家の皆様を我が家にご招待して、ホームパーティーを開くことになっているのだ。
「ええ、そうですね。とびきりのおもてなしをご用意してお待ちしておりますので、どうぞお楽しみに」
「ハハ、それは来週が待ち遠しいね。またね、エイミー」
「ええ、どうぞお気を付けて、ヒューゴー様」
ヒューゴー様は軽く手を振り、満面の笑みで帰って行かれた。
――さて、と。
「セバス、調べはついたかしら?」
私は後方に控えている、セバスに背を向けたまま訊く。
「はい、お嬢様。――やはりクロでございました」
「そう」
私の勘は当たったわね。
「お相手は、コールリッジ男爵家のベラ嬢でございました」
なるほどね。
ベラ嬢は私と違って愛嬌のある顔立ちをしているし、何より胸が大きい。
如何にもヒューゴー様がお好きそうな女性だわ。
「ご苦労様。では、予定通り進めてちょうだい」
「承知いたしました」
うふふ、来週のホームパーティーが楽しみですね、ヒューゴー様。




