2008年―レグバ
##レグバ
出窓には家族写真が並んでいた。
寄り添う教授と女、その腕には赤ん坊。
テーブルのノートパソコンには、インタビュアーの話す姿が。
――男は、ティーセットを並べた。
「リブメタルの発生理由を突き止めれば、地球はおろか、宇宙の理論すら覆す……」
喉奥が震えた。
「かつて天文学の常識が覆されたように、地下鉱脈が発見されれば、世界の枠組みそのものが変わる……。そう、論文に書きましたね」
パソコンを見る。
「これは、事実ですか?」
ボツワナ セロウェ郊外 鉱山跡地。
巨大な掘削機が唸りをあげ、地面に突き立つ。
轟音と振動が、建物全体を震わせていた。
「11.98……」
スピーカーの声に、技師が手を止めた。
「11.99……」
研究者が、管制室の前へ。
「12km」
呟いた瞬間、男の頬が熱くなった。
「どうする? 地上へ引き上げるか?」
「おいおい冗談だろ?」
両手を広げる。
「この先には、地底世界があるんだぜ?」
その目を見た。
「落ち着けよ。映画の見過ぎだって」
「センター・オブ・ジ・アースか」
「……お前ら?」
首の後ろを掻く。
「地底を信じないのはいいけどよ、でもな……」
天井を見上げる。
「この地下に夢見てるのは、俺だけじゃないだろ?」
仲間の顔を見た。一人ずつ視線を合わせていく。
「……まず、地下でリブメタル鉱脈が発見されたとしよう」
画面の教授に向かって――ポットを高く掲げる。
「そうなれば、病気や怪我といった概念が無くなる。科学は桁違いに進化をする……」
湯を注いだ。
跳ねたしずくが教授を汚す。
「桁違い、とは?」
「千年先の文明に、一瞬で到達するかもしれない」
口角を上げる。
「想像を絶する世界になるということだ」
カップへ指を添えた。
口元へ運び、その香りを吸い込む。
教授を見つめたまま、口をつけ――
チャイムが鳴った。
続けて、二度、三度と、その言葉をかき消す。
片手を懐に。
扉を撃ち抜いた。
歩き、カップを投げ捨て、
砕ける音が、続く銃声に飲まれる。
穴だらけの扉に手をかけ、
外の光景を覗き込む。
警察部隊の銃口が並んでいた。
衝撃が突き抜ける。
胸に、穴が。
ヘルメットの奥を覗いた。
一人ずつ――
「休むな!」
衝撃が、全身に。
暗闇の底へ、深く、深く。
「……なんだ?」
警察は、銃を握り直した。
砂粒が振動し、移動している。
「退避!」
振り向く。つんのめった。
見ると、つま先が地面のなか。
「撤退だ! 早く!!」
隊員達が弾かれたように動く。
その中で、両手をついた。
手も沈む。膝から下は冷たい。
悪寒が這い上がるように、胸まで沈む。顔が引き攣る。
顔を上へ、誰かの足が。
すぐに、暗闇に埋まった。
ワゴンの中で、男は無線装置を置いた。
「作戦は中止だ……住民の避難を優先させる」
隊員たちが頷き、インカムに向かう。
息を吸い込んだ。
「クソッ!」
壁を殴る。
「クソッ! クソッ! クソッ!!」
衝撃で、車体が大きく揺れ続ける。
「化け物め……!」
そのとき、子供が足を止め、ふっと顔を上げる。
視線の先には、カメラのレンズがこちらを捉えていた。
作品プロトタイプの紙芝居はコチラ↓
https://www.youtube.com/watch?v=eq2lqUnhf2w
三鬼とレグバのイメージ映像はコチラ↓
https://www.youtube.com/watch?v=tRRtLOpOUfQ
絵や設定画はコチラ↓
https://www.pixiv.net/artworks/127381652




