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モブキャラ人生が終了したら二周目が始まったんで、今度は主人公になりたい  作者: 長篠金泥
第4章

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第127話 「手裏剣とセットで忍者感を高めてもいい」

「店内になくても、言ってくれりゃ大体のモン、用意できるから」


 護身と防犯用品を扱う『御護屋ごごや』の店長が、愛想よく声をかけてくる。

 ココで監視カメラを何台も買って、ついでに攻撃的なセキュリティ用品もまとめ買いしたお陰か、上客として扱われているらしい。

 店長の名前は王庫おうくらだと聞いたが、それ以上の情報はまだ知らない。

 現時点でわかるのは、危険な商品を扱うのが趣味で、倫理観に盛大な欠落がある人物、ってぐらいだ。


「大体、ってのはどの程度だ?」

「ブラジャーからミサイルまで、何でも揃えてみせるぜ。でも飛行機だけは勘弁な」

「混ざってる混ざってる、二人分が」


 自慢できそうもないルックスの三十男が、細い目を更に細めた。

 人間的には信頼できないが、商売的には信用できる――気がする。

 危ない橋をスキップで渡りそうな雰囲気だし、きっと大丈夫だ。

 カウンターに身を乗り出し、怪訝けげんそうな顔をする王庫にたずねる。


弾丸タマ、用意できるか」

「……拳銃のは、かなり高いぞ」


 俺に合わせるように、小声で応答してくる。

 少しだけ間があったのは、コチラの顔色を読んでいたのだろう。

 とりあえず、冗談にまぎらわせる逃げは打たれなかった。

 この感じだったら、取引を進めても問題なさそうだ。


「猟銃の方。散弾で」

「ゲージと弾数は」

「12番を五十発」

「それだと……こんなモンだ」


 タタタタンッ、と電卓を操作して液晶画面の表示を見せてきた。

 元値は一発百円もしないのに、文字通り桁違いの額にハネ上がっている。

 コチラの渋い顔を眺めていた王庫は、何個かのボタンを追加で押す。


「ま、お得意さんだから一割引きってことでよ」

「もう少し、勉強できないか」

「だったら、10%(テンパーセント)オフでどうだ」

「英語の勉強は頼んでないんだよなぁ」


 払えない額ではないし、妥当だとうと言えば妥当なライン。

 今後も付き合いが続きそうだし、ゴネても得はないな。

 ここはやはり、上客との印象をもっと強めておこう。


「まぁ、いいか……それで買うわ」

「じゃあ、準備するから三十分ほど待ってくれ」

 

 了解の意味で軽く手を振ると、王庫はどこかに電話をかける。

 おそらく、散弾の配送を準備させているのだろう。

 危なっかしい商品は手元に置かない、ってのは基本だ。

 違法薬物を扱う連中も、摘発を避けるため似たような工夫をしていた。

 街中をウロつく売人は、現物は近場に隠して客が来たら取りに行く。

 トルエンみたいなショボい品でも、リスクを避けて持ち歩かない。


 そして、売人が自分でも使い始めると、大抵すぐに潰れる。

 どんなクスリでも、使ってると大抵は頭の回転が急速に低下。

 すると何もかも雑になり、マヌケな理由で破滅フラグを立ててしまう。

 あの荏柄えがらのヤツも、放って置いても遠からず自滅していたはず。

 アレが使っていたクスリの出所、アルジェントに調べさせていたが――


「そのアリスとサメ子は……あそこか」


 同行の二人は、電子機器のコーナーで何やら盛り上がっていた。

 各種通信を傍受ぼうじゅできるマルチ受信機、簡易かんい式の赤外線警報装置、ナンバーディスプレイのプロトタイプのような機械――

 その昔、雑誌の通販広告で見た記憶がある、如何いかがわしい品々の実物だ。

 どれもこれも、本当にこれが適正価格なのか疑いたくなる、いかつい数字の値札がつけられている。


「ねぇケイちゃん、このモザイク消し機って本当に消えるの?」

「消えねぇよ。つうか女子高生が食いつくな、そんなんに」


 歴史と伝統のインチキマシンに、瑠佳るか興味津々(きょうみしんしん)になっていた。

 防犯とも護身とも関係ない気がするが、どういう文脈で置いてるんだ。

 謎のボタンとダイヤルだらけの機械に貼り付けられた、それらしい説明文を読んでいると、アルジェントが滔々(とうとう)と語り始める。


「このタイプは、モザイクを消すってよりモザイクと周辺の色調を変化させて、パッと見で消えたように画面を加工するヤツだね。その隣に置いてあるのは、反転ボカシって呼ばれる修正を再反転させて、修正前に近い状態に戻すヤツなんだけど、最近のAVだとそういう消し方をしてるのは殆どないんだよなぁ。スイッチの切り替えで違う形式のボカシ四種類にも対応、って書いてあるけど効果は期待できなそうかな。ぶっちゃけ、モザイクってのはほぼ全部が不可逆に処理してあるから、無修正状態を見たければ原版の流出を待つか制作会社から盗むしかない」


 怒涛どとうの早口解説に、瑠佳がわかりやすくドン引きしている。


「そ、そうなんだぁ……」

「教えてあげたのに、その態度はないんじゃない?」

「アクセル全開すぎんだって。オタクの悪いとこ全部乗せだろ」


 ツッコミに納得いかないのか、うらみがましい目を向けてくるアルジェント。

 にしても、どうしてこんなワケわからん知識まで持ってるんだ。

 コイツの経歴や交遊関係からすると、当事者から聞いた話なんだろうか。

 どちらかと言えば、非合法ウラものビデオ作ってる連中に親和性が高そうだが。


「ガラクタはさてき、何か他に気になるモンは」

「このトランシーバーは悪くないかな。ちょっと出力が頼りないけど、ボクがイジればそこそこ使えるレベルにはできる」

「電話みたいな感覚で使える、ってのも便利そうだね」

「この値段でこの性能なら、アリ……なのか?」


 この当時の基準がイマイチわからないが、機械に詳しいアルジェントが肯定的ってことは、買う価値があるのだろう。

 現状だと色々と貧弱すぎる携帯電話より、技術を積み重ねてきている小型無線機の方が、性能も使い勝手も良さそうだ。

 携帯は携帯で手に入れるにしても、コレはコレで役に立つはず。


「サメ子はどうだ。金時計の鎖とか鼈甲べっこうのクシとか、欲しがってたろ」

「いや、そんなの言ったことないし。どこの賢者なの」

「だったら、先に悟りの書の入手か」

「転職も希望してないんだけど!?」

「まぁ賢者にならんとしても、戦う手段は増やした方がいい」


 その言葉に、瑠佳は苦笑を引っ込めて曖昧あいまいに頷いた。

 そして電子機器コーナーを離れ、武器類が展示されたショーケースに移動。

 ナイフに特殊警棒、スタンガンにボウガンと、過剰防衛感の漂う護身グッズに瑠佳の視線は向けられる。

 催涙さいるいスプレー買い足しておくか、と思いつつ俺も商品を眺める。

 近接戦闘をさせる状況は避けたいし、ここは遠距離攻撃だろうか。


「うーん……弓矢って法律的に大丈夫なのかな」

「ボウガンには、特に規制はなかったような」


 今はまだ、という言葉を伏せて応じる。

 古くからあるクロスボウを改良した、狩猟用の弓が何種か置いてある。

 瑠佳にも使えそうなのはあるが、殺傷能力の高さが気懸きがかりだ。

 多少のことでは動じなくても、致命傷となる攻撃には躊躇ちゅうちょするだろう。

 なので、護身用としてはオーバースペックと言わざるを得ない。


「右のヤツは、使い方も簡単だし殺傷力も中々だね。試射できる?」

「店主に頼めば、たぶん。地下に、それ用のスペースがあった」

「殺傷、しちゃうかぁ……」


 アルジェントの発言に引っかかったのか、瑠佳が眉根まゆねを寄せて呟く。

 やはり、攻撃力が高すぎる武器には抵抗があるようだ。

 この店に置いてあるもので、他に候補となりそうなのはあるだろうか。

 ブランクヘッズの外狩とがりが使っていたような、スリングショット。

 投げナイフや投げ矢(ダート)もあるが、JKの筋力では有効性が怪しい。

 チャクラムや手裏剣、ブーメランなんかはネタ武器のカテゴリだな。


「この筒っぽいの、何かな」

「そいつは吹き矢だ。サイズ的に飛距離はあんまり、と思われる」


 本格的だともっと長くなるんだろうが、展示品は五十センチ前後。

 射程距離が数メートルでも、護身用や牽制けんせい用としては有効だろうか。

 睡眠薬を打ち込むのは無理でも、毒物や劇物を針先に含ませるのは可能だな。

 あまり強力なのを使うと、ボウガン以上の凶悪さになってしまうが。


「普通に持ち運べるサイズだし、アリはアリじゃないか」

「吹き矢……吹き矢って普通に使えるの?」

「何なら、手裏剣とセットで忍者感を高めてもいい」

「別に忍者感は求めてないけど……ていうか、忍者感って何」

「とりあえず、試してみれば? ボクはボウガン撃ってみたい」


 アルジェントの提案で、地下の試射場に向かうことに。

 俺はチャクラムを試したかったのに、王庫に却下された……

長々とお待たせしてしまいましたが、今回から新章スタートです!

「面白くなりそう」「いいから早く続きを書け」「スピードよりもクオリティ重視で」など、様々な感情を乗せつつの評価やブックマークをよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
吹き矢かぁ 牽制用としても、口に吹き矢つけてる図を相手が脅威に思ってくれるかは微妙な気もするがどうなんだろか
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