14.鈴探しの再開です
「全部食べ終わったから、鈴探しの再開しよー」
お腹がいっぱいになって、テンションがノリノリになったコクバ。食べている最中、アリスのことを少しだけ話したこともあってか、フィーユの身体にべったりくっついていた。
「この態勢……探しずらくなりません……?」
「そんなことないですよー」
コクバは、その状態で木の枝の先端を見つめていた。
さっきまでとは違って、どうしたのだろう。
いや、これは――。
もしかして。
精霊の機嫌を確認しているの?
「ふむ、なんとなくわかりました。鈴はこっちです」
自信満々だ。
胸を張るコクバは指をさす。
「……なんにもわかんないんだけど?」
パッとみたところ、ただ屋台がたくさん並んでいるだけだった。
でも、コクバは確信していた。
「この道を進んでいけば、鈴がある。そう思いました」
ただの直感だろう。それでも、コクバの言うことを信じるしかなかった。
この方向に進んで鈴が落ちているというのなら、木の枝に宿した精霊の機嫌も、鈴探しに影響を与える要素のひとつとなっている、ということなのだろう。
ぴぽぴぴっ……。
「精霊が飛んだ、しかもふたつとも。鈴が近くにあります」
二人は少しずつ、歩くペースが早くなっていく。
ほんと夢中になってる。
いま、私はコクバとお祭りを楽しんでいる。
フィーネはふと思い返す。
転生前のこと。
転生する前はお祭りって楽しんでいたっけ。
そもそもお祭りに参加した記憶がほとんどない。たくさんの屋台があって、育ての親に買ったものを貰って、食べて、夜空を見上げて。
小学生低学年くらいだったか。
うろ覚えなのはたしか。
真相は、アリスにもわからないだろう。
永遠に闇の中。
まぁ、あれはあれで良いか。
転生したのだから、今目の前にあることを楽しめば良い。
さて、鈴はどこにある?
フィーネは地面を見渡す。
花壇がたくさんあるが、人だかりが見受けられない。まったくいないというわけではないけど、恐らくはお祭りで疲れた者が休憩している。
そんな感じがした。
そして、ここには表面がざらついている荒い土がある。
もしかしたら、花壇のどこかに鈴が埋もれてるのかも。
木の枝から飛んでいった、あの精霊を探して――。
「あっ、ありました。しかも二つ分ですー」
コクバは手を挙げる。
フィーネは、すぐにコクバの元へと向かう。
精霊は姿を消していたが、鈴に宿したら手で開封できるようになっている仕組みらしい。
「はい、お姉さんのぶん」
「ありがとうね……」
「いえいえ。一緒に開封しましょう」
いっせーのーでー。
封筒を開けると、四つ折りになっている一枚の紙が入っていた。
それを広げてみたら、紙いっぱいいっぱいに赤い狐の顔が描かれていた。
「お姉さんのキツネはとても綺麗ですね」
コクバは褒めていた。
ということは、一年間の厄除けがなされるということかな。
コクバはどうなのだろう。
本人に気づかれないように、チラ見してみる。
……コクバも大丈夫そう?
さぞかし立派な赤いキツネの顔が描かれていた。
ただ、なんか違和感あるような……。
ギョロッ。
一瞬、目の部分が動いたような。
「私も見終わったし、パパとママのもとに帰りましょうー」
コクバは綺麗に紙を折りたたんで、来た道を戻り始めた。
あの目の違和感は、ただの気のせい……?
「あ、置いていかないでっ――!」
コクバを見失わないように、フィーネは後をついていく。
一年に一度のお祭りは、あっという間に終わっていくだろう。
来年以降は参加できるかすらわからないけど、これだけは言える。
この一日だけでも楽しめた。
それでも気になった現象は頭のどこかで引っかかる。
目が動いた違和感のことは、後日アリスに一応報告しておくことにした。
以前に同じようなことが発生した前例がないか検索をかけた。……が、前例はないと言われた。あれは単なる気のせいだと思い込む他なかった。




