13.小休憩します
「もうちょっと歩くペース落とせない?」
「……パパとママにお祭り楽しんできてほしいと言われちゃってるから、いつも以上に気合い入りっぱなしでした。ごめんなさい」
「それなら細かいことは気にしないでおきます。こ、こーん」
視線を逸らすフィーネは、屋台に目がいってしまう。
りんご飴のような食べ物に、綿菓子が入っていそうな袋を販売する店。壁には狐のお面がたくさん掛けられていて、玩具の銃のようなものを構えるお客がいる店。
お祭りの屋台に関しては、日本と似た文化があるのかもしれない。食べ歩きしている者もそれなりにいて――。
あ、食べ物を見てると少し小腹が空いてきたような。
「何か食べたいものとかないですか?」
「私ですか? 特に必要ないですけど。……もしかして、お姉さん何かほしくなった?」
コクバはクスッと笑う。
「そういうつもりでは……」
「パパとママがあげるって言ってたものあるのに、ここで使わないとねー」
「二人で食べ歩きしましょう。こーん!」
「それ良いね。お姉さんは何を食べるの?」
コクバは屋台に近づいていった。
そして、指を差しながらどれ買うか真剣に悩みはじめた。
コクバの両親から銀貨一枚ずつ、コクバと私に配られているのだが、ここまで二人揃ってまったく使う気すら起きなかった。
だから、今になって笑っているのだろう。
その声を聞いたのか、枝に付いている精霊もほんの少しだけ笑い出した気がした。
「……どっちにしましょうかー」
コクバはすごく悩んでいた。
綿菓子か、大きな果物の丸焼きか。
銀貨一枚で買えるのは、どちらかのみ。
「コクバが素直に食べたいほうで良いのでは……」
「どちらかと言われたら悩んじゃいます。どっちも量は多いですからね。値段相応なのは確かなのですがー」
商人の視線で考えないで早く選べ、とは言い難い。
コクバ自身の選ぶ基準は、フィーネにはわからないのだから。
「よし決めた、こっちにしますー」
コクハが選んだのは、大きな赤い果実の丸焼きだった。
「それじゃあ、私はこっちください」
フィーネはすかさず、コクバが選ばなかったほうを購入した。
「これで、二人でわけわけしたら両方食べれますからね」
「ふえっ? ……ありがとうございますー」
コクバにとって予想外だったのか、困惑を隠しきれていなかった。
「食べ終わったら、鈴探しを再開しましょう」
「そうですねー」
コクバはちょうど空いていた近くのベンチに腰掛ける。
フィーネもその隣に座ると、二人で食べあった。
小休憩も兼ねて――。
「あっ、そうだ。アリスも食べさせてあげたい」
フィーネは一口サイズよりも更にひと回り小さくちぎった綿菓子を、アリスに差し出す。
お祭り中だろうと、アリスはフィーネの傍にいる。
『精霊には必要ありません』
「そう言わずに、食べてよね」
『必要ありません』
「だーかーらー、食べて!」
アリスの拒否を押しのけて、アリスの口に押し込んだ。
あ……。フィーネは後悔した。
食べ物をいきなり何もない空間に消しちゃった、ただヤバい人って思われないかな……。
「お姉さんって、精霊でも飼っているのです?」
がん見していたコクバは、むしろ興味津々になっていた。
「えっと、その……これはですね……」
はい。としか言えない。
小さく縦にコクリと頷くと、コクバは納得したのか、真顔で赤い果実の丸焼きをかじる。




