36話 リストバンドの在りか
「来た道を戻ればいいんだよな」
俺は教会を後にして、路地の中へと駆け足で入っていく。
いつも通りに街の風景や人が邪魔になって仕方ない。
「リスト無事でいてくれ!」
すれ違い様に黒マントの男を見つけた。うっすらと血の匂いを漂わす。特徴のある紫色の髪。
「キグナス!? リストはどうなった?」
俺は血相を変えて問いただす。
彼は落ち着いた口調で、
「紋章のありかが分かった。あいつにはもう用がない。もっと早くに言っていればここまで痛めつける必要は無かったのにな」
彼はフードを被りこちらを指差し、
「二斗君。心配なら自分で確かるんだな。路地を抜けて小川の方に倒れている。それとこれは僕からの忠告だ。君はもっと強くなった方がいい。このままではいずれ誰かが君の為に命を落とす事だってありうる」
伝えたい事を言った後、瞬間移動で街中へと姿を消してしまった。
あいつの言う事が正しいかはともかく、その情報を頼りに探す。
◆
「リスト無事なのか!?」
キグナスの言ったとおりの場所に仰向けになり倒れていた。心臓の確認をする......まだ意識があるようだ。
「んー」
リストは気を失っていたためか状況は把握できていない様子。
「キグナスの野郎はもう此処にはいない。それから、セリナは大丈夫だ」
「そう、よかった」
そう言い残し目を閉じて眠ってしまった。
それにしても身体の傷跡を見る限り、随分とやられたようだ。早く手当してあげられるところに行かなければ。
◆
教会への扉を開くと。
「二斗にリストちゃん。私迷惑かけちゃったね」
入るや否やなきながら謝るセリナ。
「いや。セリナは悪くないんだ。俺があの時キグナスの気配に気づいていればあんな事にはならなかった。それよりもリストの手当をお願いします。ミレイさん」
「まぁったく、あんたは厄介事を連れてくるのが好きだねぇ。お代はきっちり払ってもらうわよ!」
リストの抱えていた腕を放しミレイさんに渡す。
「どうしてこんなに負傷者が多いんだ?」
ミレイさんはリストの治療をする合間にしつもんを投げかける。
「キグナスにやられたんだ」
俺は口を開く。セリナは肩を震わせてうなづく。
「セイント軍の団長さんがねぇ。あの人王様に仕えているようだから、人を傷つけるような事はしないと思っていたんだけど」
彼女はセリナの様子を見るや、
「彼の言っている事は本当見たいね」
「実はリストがキグナスの紋章を盗んだ事が事の発端だったんだ。王様から預かっていた鳳凰の紋章が書かれたブレスレットをたまたまリストが盗んでしまい、目を付けられた」
彼女はコクリと頷いて、
「王様に忠実な男だからねぇ。成る程分かったわ。という事は、リストちゃんだっけ?この子は盗賊?」
「はい。とは言っても、もう盗みはしません。俺たちと一緒にクエストで稼ぐって約束しましたから」
俺は笑顔で答える。
「ミレイさん!私も手伝わせてくれませんか?」
セリナは目の色を変えてミレイさんをジッと見つめている。
「あなた回復魔法は使えるの?」
「ええ。超級回復」
リストの傷が見る見るうちになくなっていく。
「あぶねぇ!」
セリナは急に気を失い倒れそうになる。俺は抱え込むようにして助ける。
「二斗ありがと」
「mpの使い過ぎだわね。精神力とも呼ばれるけど。人間体力と精神力ともに欠かせないわ。どちらかがバランスを崩せば、容態も悪化してしまう」
「大丈夫かセリナ」
「え、ええ。mpの残量は自分でも把握していたわ。だけどリストちゃんのボロボロになった姿を見てどうしても使わずにはいられなかったの」
彼女の目には涙がうすらと見え隠れしていた。
「座って休んだ方がいい。後は俺がなんとかするから」
俺は立ち上がり、
「悪いんだけど、セリナとリストをしばらく預かっていただけませんか?」
「1日だけならいいわ。お代分稼いできたら2人は解放してあげる」
「すまない。恩にきる!」
俺は教会を後にしてクエスト受付所へと向かう。




