30話 見た目で判断するべからず
探しはするが一向に見つからない。なんせこの街にはお高そうな洋服屋がひしめきあっている。クエスト受付が先に見つかる始末。
困った俺達はかわいい獣耳の住人に尋ねてみる。
「この辺でおいしいお店はありますか?」
「そうだね。この一本道を奥に行った所右手にオーシャンというお店があるわよ」
お姉さんは親切に答えてくれる。だから言っただろう獣耳には悪い奴はいない。
「ありがとうございます」
俺はお姉さんにお礼を言い、早速お店に向かうことにする。石で出来たデコボコした地面を踏みしめながら上り坂を駆け上がる、ふと後ろに居る二人の様子を振り返るとセリナはばてている。無理も無い。リストは元気いっぱいにはしゃいでいる。
「セリナ後もう少しだ。いけるか?」
「ええ。なんとか。はぁはぁ」
口ではそう言うものの歩くペースは落ちてきている。気温は真夏に近く立っているだけでも汗がだらだらと垂れてくる。もう少しの辛抱だ我慢してくれ......
「着いたぞ」
魚に似たモンスターが店の看板に描かれている。中には水槽があり、何かが泳いでいる。
俺達はようやくお店に入ることが出来た。
ーー
お店の中は鮮魚屋さんみたくなっておりカウンター席に案内される。どうやらお寿司屋さんみたいだ。
「いらっしゃい」
頭に鉢巻を巻いたおじさんが威勢の言い声を張り上げる。
「メニュー表ありますか?」
俺達は受け取ったメニュー表をじっくり見る。
《オーシャンメニュー表》
店長オススメ ゴブリンの炙り
・サハギン
・イソギン
・ウーニ
・グロマ
・カイ
・ハゲワシ
沢山あって選ぶの大変だな。悩んでいるうちにリストとセリナは次々に注文をして行く。
「はやく頼みなさいよね」
その目には食べ物に飢えて必死そうだった。黒いワンピースの肩からしたたり落ちてくる汗はきらりと光っている。
「お腹空いたよにいやん」
リストは顔をグイッと近くまで寄せてきて睨み付ける。ニタッと笑う顔は正に小悪魔そのものだった。
「わかったよ。すぐ頼むから」
俺も適当にあるもの頼んでおくことにした。
出されたものはどれも見たことが無い。クラゲのような物体がお米の上に乗っている。俺は覚悟を決めて喰らいつく。
「う、うまいじゃないか」
思わず口から出る言葉。うまいもんはうまい。見た目等やはり関係なかった。そう。人は外見だけで判断されてはいけないんだ。ふと下らない事が脳裏によぎる。
ーー
お会計を済ませて本来の目的であるバザーに。バザーの勢いは衰える事を知れず活気に満ち溢れていた。繁盛しているんだ。
「おじさん。例のペンダントはまだあるかしら」
そこにいたおじさんはいつぞやのリストの情報を教えてくれた恩人だ。
「譲ちゃんじゃないか。あるぞ。買う気にでもなったのかい。そいでリストは今日は全然来てないんだが知らないか?」
「おじさんはリストとどういった関係で?」
「それは教えられないな」
おじさんの目つきは鋭くなる。
バザーの品はまさかリストが盗んだものか。この人には恩がある。あえて触れないでおこう。
「いいえ。確認しにきただけだわ」
彼女は安堵の表情を見せる。
「そうかい。また寄ってくれよな」
俺達は叔父さんに手を振りその場から離れる。
ーー
「グランド王国に向かうとしようか」
俺は口火を切る。二人もつられて「おう」と声を上げて、スカヌハの街を後にする。
リストは街の人にまるで気づかれていない。
門の管理人さんに事務的な話をして、また熱い砂漠の道へと歩みを進める。
「リスト。ここはサソリが出てくるから気をつけてな」
先に知っていて損ではない情報を俺は開示していく。
「まかせなよ。逃げ足なら私に構うものはいないから」
自信満々に言っている所申し訳が無いが戦うという発想はこのこにはないのか。
「戦うのよ」
セリナは子供をあやかすかのようにリストの頭を撫でて諭す。
「わってるよ。冗談だって」
彼女は膨れっ面をして答える。
「うあああ」
俺の足は見る見る砂漠へと吸い込まれていく。足元を見ていなかったためあり地獄の存在に気づかなかった。脱出を試みるも足が思うように動いてくれない。まるで固まった石をどかすかのごとく。俺はここで死ぬのか。人間の死はあっけないものだな。
「二斗!」
彼女は必死に腕をこちらへと伸ばす。だが俺はそれに応えるべきではない。
セリナの声はだんだん遠くへ聞こえなくなっていく。
「二斗やん」
リストの泣き顔を始めてみた。何も出来ず立ち尽くしている。ああ。異世界での生活は幕を閉じるのか。
短い間だったたけど、この世界嫌いじゃなかった。やがて俺の意識は飛んでいき夢の世界へと入っていった。




