29話 リストの魅力
仕方なく外で待つことに。いやぁ楽しみだな。扉腰にはワイワイ騒いでいる声が聞こえる。女の子の会話っていいなぁ。おっさんじみた事を俺は考えていた。
「おーい、まだなのか」
「入っていいわよ」
扉を開ける。
小さい猫がぽつんと居た。まじめにそう見えるくらい似合っていた。頭から足にかけてスラットした余分のない体系に白黒の縞模様が彼女には似合っていた。我ながら俺のセンスの良さには脱帽する。
「ほら、感想とかないわけ?」
リストは顔を赤らめながらこちらに問いかける。
「めちゃくちゃかわいいよ。グッド!」
思わずテンションが高くなり意味不明なことを言う。
「グッド? まぁいいわ。似合ってると言うことね。そう捉えておく」
不思議とうれしそうに見える。尻尾を振り振りとしている。
「二斗......私の時はそんなに褒めてくれなかったわよね。どういうことかしら。せつめいしてもらえるのでしょうね?」
(近い、近い。 後目が怖い)
セリナはかなり気にしているみたいで俺の反応をジッと目を離さず伺っている。
「セリナは元が綺麗だからな。どんな服でも似合っているし、文句のつけようがないよ。それに恥かしかったからうまく俺の気持ちを伝えることができなかっただけなんだ。ただしこれだけは言える。一目惚れしてしまうほどの美しさだった」
それを聞いた彼女は顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでしまう。俺も後から自分の言ったことに気づいて、恥かしくなってしまう。
「お熱いですね。お二人さん」
一連のやり取りを目撃していたリストは茶化すように告げる。楽しそうにしているのが余計に腹立つ。
「そんなんじゃない」
「そんなんじゃないわ」
俺とセリナは阿吽の呼吸が合ったように同時に言葉を発していた。お互い見向きもせずリストの方だけに眼差しを向ける。
「まぁいいんだけど。二斗はいずれ私がもらっていくから」
リストはこちらに駆け寄ってくると猫なで声を使って。
「にゃんにゃん」
「二斗どうだった。かわいかった?」
これは思った以上に破壊力があるな。手のポーズといい身体の小ささと言い。こいつは自分の魅力が何か熟知してやがる。まったく恐ろしい奴だ。
「まぁかわいいんじゃない」
ここでまた変な事を口走るようであればセリナの鉄拳制裁は覚悟しなければいけないだろう。
それを見ていたセリナは怒りこそしてはいなかったが、何処か寂しい表情を見せた。
「この話は一旦やめにしましょうよ。それよりもリストちゃんはせっかく街に出られるようになった事だしスカヌハの街を観光でもしない?」
そう言うと先程の表情は姿を消し明るく微笑む。
「賛成!」
リストは手を挙げて意思表示をする。
「そうだな」
宿への宿泊は今日で最後にしよう。リストをこの街にいつまでも居させていく訳にはいかない。
ーー
宿を後にして、3人で街をぶらつくことになった。途中街の人はリストの格好が珍しいのか多くの視線が向けられている事に気付く。当の本人はすがすがしい表状でまったく気にしていない。
「俺が言うのもなんだが、恥かしくないのか」
するとリストの顔は険しい物へと変わっていく。
やっぱり強がってはいるけど本当は恥かしいんだな。
「せっかく、二斗やんが選んでくれたから着てるだけだし」
呼び方が変わっている!? 心を開いてくれた証拠だなこれは。二斗やんかー。良い響き。
「この街に居る間だけでも我慢してくれると助かる」
「わかってる」
俺は両手を胸の前で合わせて謝る。
良かった。完全なる俺の趣味に付き合わせてると思うと心が痛い。
「とは言っても、クエスト受けに行かないとお金がない」
現世と同じく金欠である事には間違いない。SCコインは昨日の服屋で使い切ってしまった。何処かの王女さんが10着も買うから......
「それなら心配要らないよ。二斗やん」
胸の中から取り出したのは、黒色の包み袋だった。大きさは野球のボールくらいだろう。それにしても色のチョイスがセンス無いぞリスト。
「それは?」
「まぁそう焦らないでよ。お二人さん」
牡丹を外し取り出してみると。
「SCコインがこんなにもたくさん!」
ざっと100枚近くはあると見て取れる。クエスト受けり手間が省けて助かる。リストは勝ち誇った顔で。
「街の人から盗んだお金さ」
ヒソヒソ声で、俺の耳元で囁く。それからセリナの方をすっと見るとまたこちらへと振り返る。盗む事の罪悪感がまるで無いな。親子揃っての盗賊一家なら日常茶飯事なのだろう。
「セリナには内緒にしてほしい」
セリナの性格からすると盗んだお金使うなんて外道な真似を許すはずが無い。ましてやグランド王国の王女。告口でもされれば、まず牢獄行きは避けられないだろう。
「どうしたの2人とも。リストちゃんはこのお金をどうやって手に入れたの?」
「元から持っていたんだとさ。なぁリスト?」
「うんそうなの」
リストの返事は真意が篭っていなく分かりやすい嘘だな。俺であったなら見抜いていた。
なんとか話を合わせる事が出来たみたいだ。セリナは納得している。
「リストちゃんに払ってもらうのは申し訳ないわ」
彼女なりに抵抗があるのだろう。
「いいの。助けてくれたお礼だからね」
お礼ならしかないな。そう自分に言い聞かせることで罪悪感を払拭しとうとする。
「どこから回ろうか」
皆の提案を聞いてみる。
「私は、噴水前のバザーに行きたいわ」
セリナは目的地を最初から決めていたみたいだ。観光しようと言ったのはこれが一番の理由だったのだろう。
「セリナはバザーに行きたいか。リストは?」
「どこでも良いかな」
塩対応だな。リストちゃん。
「じゃあバザーに行くか!」
俺たちのいる所から噴水前までの道はそう遠くは無い。歩いて行く事にする。
「ぐぎゅるぎゅる」
誰かものお腹の音が聞こえてきた。音のした方へと耳を傾ける。
「私お腹空いたみたいだわ。少し休憩しない?」
セリナはお腹を押さえて訴える。
「仕方ない。お店を探そう」
急遽予定を変更して、美味い飯屋を探すことになった。




