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デブ、ギルドに入る。

「……帰りたい」

「無理」

「だよな!!」

そんな会話をしてから数日後。

俺とレナは森を抜け、ついに――

「うおおおお……街だ……!!」

石壁に囲まれた巨大な都市が目の前に広がっていた。門の前には人、人、人。鎧を着たやつ、ローブのやつ、明らかに強そうなやつ、そして俺みたいに場違いなやつ。

「ここが“ギルド都市グラディア”」

「名前からして強そう」

「実際強いよ。ここ、冒険者の中心地だから」

レナは慣れた様子で歩き出す。俺はその後ろをついていく。不審者だ。

門番に止められるかと思ったが――

「……通ってよし」

一瞬で通された。

「え、いいの?」

「見れば分かるでしょ」

「何が!?」

「“ヤバいの倒してきたやつ”の匂い」

そんな匂いあるの!?強者のオーラ的な?

街の中は、活気に満ちていた。

武器屋、防具屋、露店、酒場。どこもかしこも活気に溢れている。

「すげぇ……」

「田舎者丸出し」

「うるせぇ!!」

だが一番目立つのは――中央にそびえる巨大な建物。

「……あれが?」

「ギルド本部」

でかい。とにかくでかい。学校どころじゃない。ほぼ城。

「ここにはいくつものギルドが入ってる」

「いくつも?」

「この街、ギルド同士での派閥争いが最も激しい。」

物騒!!

「え、仲良くしないの?」

「するわけないでしょ。依頼の奪い合い、縄張り争い、資源の独占……全部戦い」

世知辛い!!

「で、どこ入るの?」

「……え?」

「ギルド。入らないと仕事ないよ」

マジかよ就活かよ!!俺の弱点の一つ!

「俺面接とか苦手なんだけど」

「腹でどうにかなるでしょ」

「ならねえよ!!」

ギルド本部内部。

中も広い。広すぎる。受付がいくつも並んでいて、それぞれ違う紋章が掲げられている。

「いい?ここには大小合わせて十以上のギルドがある」

「多いな」

「その中で“トップ3”が別格」

レナが指を折る。

「一位、“蒼天の剣”。王国直属レベルの超精鋭」

「強そう」

「二位、“黒牙”。超実力主義の戦闘狂集団」

「怖そう」

「そして三位――」

レナが少しニヤッと笑う。

「“紅蓮の牙”。一般騎士レベルの強者グループ」

なんかバランスいい!!

「そこに入る」

「え、三位でいいの?」

「一位と二位は面倒」

リアルな理由!!現実的!!

受付へ。

赤い紋章のカウンター。そこにいたのは――

「いらっしゃいませ。紅蓮の牙へようこそ」

綺麗なお姉さん。

「加入希望?」

「はい」

レナが即答する。

「実力証明は?」

「ダンジョンボス倒しました」

――空気が止まった。

「……え?」

「このデブが」

「デブ言うな!!」

受付のお姉さんがゆっくり俺を見る。

上から下まで。

そしてもう一度見る。

「……本当に?」

「証拠は?」

レナが小さな結晶を取り出す。エリシア戦で出たやつだ。

それを見た瞬間。

「……っ!!」

受付の顔色が変わる。

「……確かに、ボスコア……それも上位……」

ざわざわざわ。

周りの冒険者たちがざわつき始める。

「マジかよ……」

「こいつが……?」

「嘘だろあの体型で……」

全部聞こえてるからな!!

「……分かりました」

受付が深く頷く。

「あなた方の加入を認めます。明日、会員証を発行しますね。」

「おおおおお!!」

「よかったね」

「就職成功!!」

こうして俺たちは――

“紅蓮の牙”に所属することになった。

――だが。

問題はそこからだった。

「おい見ろよ……」

「あれが例の……」

「ボス倒したっていう……」

ヒソヒソヒソ。

めっちゃ見られてる。

「……なんか視線痛い」

「有名になったね」

「嬉しくねえ!!」

そして――

「おい」

ガタイのいい男が近づいてくる。あ、俺なんかやりましたかね?

「お前が“あのデブ”か?」

「名前で呼べ!!」

だが男はニヤニヤしている。

「通り名、もう決まってるぜ」

「え?」

「お前、“ブタエル”な」

「は?」

一瞬理解できなかった。

「ブタ+エンジェル」

「最悪のネーミングセンス!!」

周囲が爆笑する。

「似合いすぎだろ!」

「腹で戦って飛べない天使とか!」

「完成度高ぇ!」

うるせえええええええ!!

「やめろ!!その名前やめろ!!」

「無理だな」

「なんで!?」

「もう広まってる」

終わった。

完全に終わった。

俺の異世界人生、通り名“ブタエル”で確定した。

だが――

本当の問題は、その夜に起きた。

「……ん?」

宿屋で寝ていると、外が騒がしい。

「なんか外うるさくない?」

「……ちょっと待って」

レナが窓から外を見る。

その瞬間。

「……は?」

固まった。

「どうした?」

「……あんた、やばいかも」

「え?」

レナが怪しい紙を持ってくる。

そこに書かれていたのは――

『賞金首』

そして。

デカデカと描かれた――俺の顔(ちょっと美化されてる)。

「……え?」

「読んで」

震える手で読む。

『対象:通称ブタエル

 賞金:1000000 Raul』

「は???????」

桁おかしい!!!

「ひゃくまん!?」

「うん」

「なんで!?」

「ダンジョンボス倒したから」

雑!!!

「裏ギルドに目つけられた」

「裏ギルド!?なんかカッケー!!」

「表に出ない連中。暗殺、誘拐、違法依頼専門」

最悪じゃねえか!!!

「つまり?」

「今この街にいる全員、あんた狙う可能性ある」

地獄!!!

「終わったかもな……..」

「いやいやいや!!無理無理無理!!」

「落ち着いて」

「無理!!」

俺、今日加入したばっかだぞ!?

チュートリアル終わった瞬間に賞金首!?

難易度バグってる!!クソゲーやん。

「どうすんの!?」

「簡単」

「ほんとか!?」

「強くなるしかない」

脳筋!!

だが正論!!

「あと」

「まだあるの!?」

「私も巻き込まれてるから」

「ごめん!!!」

土下座。

即土下座。

「まあいいよ」

「優しい……」

「面白いし」

理由それかよ!!まあ、いいや!

その時。

――ドン!!

扉が蹴破られる。

「へへへ。見つけたぜぇ……ブタエル」

黒装束の男たち。

「ブヒ?!」

「早速来たね」

早すぎる!!!今日、安心して寝れないかもな。

「賞金、いただくぜ」

ナイフが光る。

完全に殺る気。やべぇ。

「どうする!?」

「いつも通りでいいんじゃない?」

レナが軽く言う。

「いつも通り?」

「腹で殴る」

「それしかねえのかよ!!」

だが――

それしかない。

「……やるか」

俺は立ち上がる。

「ブタエルって呼ぶなよ……?」

「無理だな」

「だよな!!」

こうして――

賞金首“ブタエル”としての、

地獄みたいな逃走劇生活が始まった。

その夜、街のあちこちでこう噂された。

「新しいバケモンが来た」

「脂肪でボス倒したらしい。」

「しかも飛べない天使」

そして――

「賞金100万のデブ」

やめろ!ほんとにやめろ。

だが。

誰も知らない。

このどうしようもない能力が、

この街の勢力図すら変えることになるなんて――

まだ、誰もデブが脅威になるなんてーー。

–––(続く)

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