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ホテル内を探したが佐伯正雄は見つからなかった。
「神影さんどうでしたか?」
「…ホテル内を探しましたが、見つかりませんでしたね」
「そうですか…。私も関係者が入れるところを探しましたが、見つかりませんでした」
「…ホテル内にいる可能性は低いですね」
「そうですね…」
外を探しましょうかとホテルから外へと向かいながら、
佐伯雄星に話しかけた。
「…以前、正雄さんがお客様と問題を起こしたことがあるとおっしゃっていましたね。どのようなことがあったのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「…そうですね。神影さんはこのホテルの噂話を聞いたことがありますか?」
「…吸血鬼がいると言うお話ですか?」
「やっぱり…聞いたことがあったんですね…。それは祖父が言い出したことなんですよ…。私は祖父の教えでお客様を大切にするよう育てられました。子供の頃に両親を亡くし、祖父に育てられたのですが、本当にお客様を大事にする憧れの祖父でした…。でも、ある日祖父は変わってしまったのです」
「…正雄さんが変わられてしまったのですか?」
「そうなんです。突然、もう佐伯家は終わりだと言い出して…自分が吸血鬼だなんて突拍子もないことを言いはじめたのです。それから、何かあるとお客様と口喧嘩をしたりしてですね…。吸血鬼がいるなんて噂が流れてしまったのです」
「…佐伯さんは正雄さんがどうしてそう言われるようになったのか心当たりはあるのでしょうか?」
「いえ、全くありません。どうして祖父がそう言いはじめたのか私もよくわからないのですよ」
「…そうですか」
外に出て、木々が生い茂る山の中に入った所で、
佐伯正雄がこちらに歩いてきているのを見つけた。
「爺ちゃん!なにやってたんだよ!?」
「雄星か…。こんなところでなにしてるんじゃ?」
「爺ちゃん!それは俺の台詞だからな!いったい山の中で何してたんだよ!」
「散歩ぐらいしたっていいじゃろ!全く雄星は…」
佐伯正雄はブツブツと小言を言っている。
「神影さん。ありがとうございます」
「…いえ、何事もなくてよかったです」
「ほら!爺ちゃん!部屋に戻るよ!」
「わかっとるわい!」
佐伯雄星と佐伯正雄はホテルの中へと戻って行った。
佐伯正雄は何をしていたんだろうか?
僕は少しだけ気になったので、山の中に入り、
調べることにした。
佐伯正雄が歩いてきた方向へと歩いていくが、
何も見つからなかった。
本当にただの散歩だったんだろうか?
ふと枝が折れていることに気付き、
その方向へと獣道を歩いていく。
「…これか」
そこには洞穴があった。
人がなんとか入れるほどの大きさだな…
僕は中に入った。
中には何もなかった。
何もなかったのだが、少しだけ…
ほんの少しだけ、血の匂いがした。




