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撮影が再開して、俺は指示された通りに動いていた。
なかなか難しいな〜と思いながらも、
撮影は進んでいく。
一旦、休憩になった時に撮影スタッフの人から、
声をかけられた。
「あんた、本当に初めてか?」
「え?そうすけど…」
「初めてとは思えないな。筋がいい」
「そうなんすか?俺は言われた通りにやってるだけなんすけど…」
「言われた通りにやるのは当たり前だ。だが、周りに目を配り、臨機応変に対応してるじゃねぇか。そういうことができるやつはなかなかいねぇ。あんた、こっちの世界にこないか?あんたならすぐにプロの世界でやっていけんじゃねぇかな」
「マジすか!?そんな褒められたら嬉しいっすけど、俺は今の仕事で満足してるんで」
「そうか…。もったいないな。だが、あんたの人生だ。あんたがやりたいようにするのが一番だな。この後も頼んだぞ」
「任せてくださいよ!」
おうよ!と言って、休憩しに行った。
なんか、俺…褒められちゃった!
「橘さん!すごいですね!」
「え?史華ちゃん!俺ってそんなにすごいん?」
「あの方が褒めてるところ…初めて見ました。いつも怒ってばっかりで、仕事にプライドがある方なので…その方に褒められるなんて、すごいことなんですよ!」
「そうなんだ!俺ってすごいんだ!」
史華ちゃんからも褒められちゃった!
嬉しいな〜と思いながら、鼻歌を歌ったら、
ミサミサにキツイ一言を言われてしまった。
「タッちゃん…なんかキモいんだけど…」
「うわっ!ヒドくね!俺さ!褒められたばっかりだったのにさ!ちょっとは浮かれたってよくね?」
「嬉しい気持ちはわかったけど、全身でそれを表情してるのは流石にキモいって思っちゃった…」
「うわー、ミサミサってめっちゃ毒吐くじゃん!アイドルスマイル忘れてきてんじゃん!」
「アイドルだってね、プライベートはアイドルじゃないのよ?今は休憩時間のオフタイムでしょ?だから、いいんだもん」
ぐぬぬ…何も言い返せない。
しかも、いいんだもんと言ったところに、
可愛いなこいつと思ってしまった。
負けなのか?俺の負けなのか?
いや!俺は負けてない!
心が負けなきゃ、負けじゃないんだっ!
「ミサミサ〜!お疲れ様〜」
「あ〜!ありがと〜!シオリン。アヤヤン」
アイドルスマイルやってんじゃねぇーか!
いや、あれはプライベートスマイルなのか?
そもそもスマイルにアイドルもプライベートもあるのか?なんかわけわかんなくなってきたな…
「橘さんもお疲れ様です」
「お、おうよ!ありがとね」
「ミサミサって本当にすごいですね!あんなにポージングとかポンポン思いついて!すごいな〜って見てました!」
「ありがとね、アヤヤン。シオリンも数をこなせばできるようになるよ〜。ちゃんとこのポーズの時はこうした方が可愛く写るかな?とか考えながらやってたら、大丈夫よ!何も考えないで撮られてるだけじゃダメだからね〜」
「そうなんですね!勉強になります!」
休憩は終わりだ〜!と言う声が聞こえた。
「あっ!俺行かなきゃ!」
「はいっ!橘さんも頑張ってください!」
「栞ちゃん!ありがとね!」
俺は撮影のお手伝いを頑張った。
なかなか褒めないと言われている人に、
褒められながら楽しく撮影のお手伝いを終えた。




