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「ん?リンちゃん戻ってたんだ」

「…悪い。起こしたか?」

「いや、大丈夫だよ」


部屋についているお風呂でシャワーを浴びて、

上がった時に橘から声をかけられた。


「ふぁーあ。ってもう、朝なん?」

「…まだ朝方だよ。もう少し寝られるんじゃないか?」

「そっか〜。リンちゃんさ…ちゃんと寝たん?」

「橘は熟睡してたからな…気づかなかったんだろ?」

「なにそれ…ちゃんと寝たならいいけどさ…どっか行くの?」

「あぁ、タバコ吸ってくる」

「リンちゃん元気だね…俺はもう少し寝るわ。んじゃ、いってら〜」

「あぁ、おやすみ」


布団でまた寝始めた橘を起こさないように、

扉をゆっくりと開けて部屋を出る。


庭の端にある喫煙所でタバコに火を灯す。

まだ薄暗い空へと煙を吐き出した。


「鈴、もう起きてたんだ」

「…まだ寝ていてもよかったんじゃないですか?」

「私はゆっくり寝たわよ?」

「そうですか…それならいいのですが」

「…鈴、何かあった?」

「…そうですね。申し訳ありませんが、柚葉さんにもお願いできますか?」


僕は柚葉さんに藤代亮太から頼まれたことを話した。


「ふ〜ん。お座敷様ね…」

「藤代さんのお父様から許可をいただければ、調べることになると思うのですが…僕より柚葉さんの方が何かわかるのではないかと思いまして…」

「そうね〜。私に何ができるかわからないけど…鈴の頼みなら聞いてあげるわ」

「ありがとうございます」


僕は柚葉さんに軽く頭を下げてから、

空へと煙を吐き出した。


「神影さん…お早いですね」

「…そういう藤代さんもお早いじゃないですか」

「こちらの方は…楠木様ですね?」

「そうです。藤代さんからのお願いに力になってくれるのではと思いまして、僕からお願いしたんです」

「…そうだったんですね」


そう言ってから父上がお会いになられるそうなので、

一緒に来ていただけますか?と聞かれたので、

僕と柚葉さんは藤代亮太について行った。


「君が…亮太の…」

「初めまして。神影と申します」


僕はそう言って名刺を渡した。


「…探偵なんて変わった仕事をしてるんだな」

「…そうですね。こちらは協力者の柚葉さんです」

「そうか…」


藤代亮太の父親は悩んだ表情をしてから話しはじめた。

藤代亮一郎。それが藤代亮太の父親の名前だ。

お座敷様にお会いさせるのは藤代家の人、または、

藤代家が信頼できる人だけしか会わせないらしい。

今までもお座敷様に会わせた藤代家以外の人は一人だけしかいないらしい。その人は藤代亮一郎の父親。

藤代亮太の祖父の友人だったそうだ。


「亮太がどうしてもと言うから会ったが…紗絵の言う通りにお座敷様は本当に怖がっているのか?」

「父上…紗絵は嘘を言っているようには思えません。神影さんは僕の秘密を知っている方です。この方は信頼できます」

「亮太の秘密を知っているのかっ?」


藤代亮一郎は驚いた表情をして僕を見た。


「はい。父上…神影さんは知っています。本当に何もなければいいのですが…何かあってからでは遅いと思います。ですので、藤代家の為にも、お座敷様の為にも許可をいただけませんか?」

「そうか…」


藤代亮一郎は少し悩んだ後に僕に話しかけてきた。


「…神影さんだったな。亮太がこんなにも信頼できると言うのだから、私も信頼してもいいのかな?」

「…そうですね。その信頼にお応えできるかはわかりませんが、僕に出来る事ならお力になりたいと思います」

「そうか…。神影さん…君は父の友人に似ているな…」

「…そうなんですか?」

「あぁ、すまん。知らない人に似ていると言われても困ってしまうよな…気にしないでくれ」

「…わかりました」

「申し訳ないが、奥の間に入るのは神影さんだけにしてくれ…そちらの女性は部屋の前までにするようにしてもらえるか?」

「…わかりした。ありがとうございます」


では、頼んだよと藤代亮一郎は立ち去っていった。


「父上には許可をいただけましたね」

「…そうですね。申し訳ありませんが柚葉さんは部屋の前で様子を見ていただけますか?」

「私は最初からそのつもりよ?」

「…そうだったんですか?」

「そうよ〜。私は入りたくないもの」


そうですか…と僕は返事を返した。

それでは、お願いしますと藤代亮太に言われ、

3人で奥の間へと歩き出した。

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