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出てこい‼ 怖いおはなし  作者: どっぺる
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18/18

家庭教師の先生

少年だった僕の心を深く傷付けた話を最終話としました。どんな出来事よりも胸に刻まれたショックは生涯消えることはありません。

その頃の僕にとってこれ以上の恐怖はありませんでした。

僕は中学2年の時の家庭教師をつけてもらっていた。受験も近くなり親が僕の成績に不安を募らせた為だろう、親の心子知らずとは良く言ったもので当の僕はまるで真剣では無かったんだなぁ...


派遣されてきたのは家庭教師のト○イの大学生の男の人だった。男性か女性どちらの先生が良いか聞かれた時に男性を選んだ。本当は女性がいいに決まってるが恥ずかしがりやの僕は緊張して話せないだろうと本音を圧し殺して即答した。周りの眼も気にしていたと思う。今考えてみたらこれが最大の過ちにだった。


家庭教師は基本週に1回で夕方6時から8時までの2時間。夏休み等は週に3日。

初日に現れたその先生は見た目は少しチャラそうな僕が苦手なタイプの男性だった。親に案内されて二人で部屋へ行くと親は出ていき二人だけとなった。

「はじめまして、○○って言うんだけど宜しく。」

意外にも爽やかな印象の先生だった。

「よ、宜しくお願いします。」

こうして初日が始まった。購入しておいた教材を開いて勉強開始!

「このページのこの問題とこの問題解いてみて!」

そう言うと先生は優しく笑いながら隣の椅子に座った。難しくて解けない...一問、二問...時間がかかったが何とか誤魔化しながら全問終了。

「出来ました!」

「ふーん...」

そう言うと先生は僕の部屋をキョロキョロと眺め始めた。僕の部屋は漫画やプラモデルなんかが並べられてるから魅入るのは仕方無いかなとそれを眺めて待っていると

「じゃさ、これとこれとこれ!解いてみて!」

そう言って本棚の宇宙図鑑を手に取るとそれを読み始めた。


えぇまたかよ...わからないのにとか考えながら苦戦していると、ふと、先生が気になり横を見ると先生はまだ宇宙図鑑を夢中で読んでいた...

これ家庭教師の意味あるのかなぁ?とその時感じた。ただ問題を僕が解いて先生は隣で図鑑熟読と言う奇妙な構図が約2時間続き初日は終了。

部屋を出て下に降りると親がお茶とお菓子を用意して待っていた。

「あのうちの子大丈夫でしょうか?」

「ええ、全然大丈夫ですよ!基本もしっかり出来てますから!」

そう言うと笑顔で笑った。雑談が暫く続きお金を支払うとその日は帰っていった。


そんな日が数ヵ月続いたある日、いつも通り家庭教師の日。僕はこの日が嫌で堪らなかった。ただ問題を解かされるだけの地獄の時間が。

「じゃ、これとこれ!解いて!」

いつものルーティンが始まり問題とにらめっこ。

先生をみる、漫画を読んでいた。

問題に集中しようと教材に目を戻すと突然先生が口を開いた。


「お前さ、何で何も言わないの?」

「!?」

「つかさ、俺今漫画読んでんじゃん?」

「はい...」

「分からないなら普通聞くよな?何で何も言わねえのって!」

「......」

僕は返す言葉が無かった。確かに僕は分からなくてもあまり聞かなかったし自分で解かなければならないと勝手に決めていたかも知れない。先生は僕が聞いてくるのを待っていたのか?

何も言わない僕に先生が更に続けた。


「俺さ、ぶっちゃけここに来るの嫌なんだよね!暇だし、だから漫画読んでんだよ!まぁ、2時間漫画読んで5000円貰えるから我慢して来てるけどなww」

「......」

悔しくても何も言えなかった。思い返して見ればそれまで僕は人と本音で会話した事あっただろうか?ムカついても相手に文句を言ったことがあっただろうか?自分の考えを相手に伝えることが無かった僕は先生に言われたい放題の大サービスをプレゼントされた。


「何か言えよ?お前さ、喋れんの?お前の親に俺の事言っても良いよ!どうせ言えないんだろ?」

「...」

「俺、お前の親の前ではいい顔してるけどはっきりいってお前ら見下してるからなwww」

「...くぅ」

「こんな何も言わない奴の為に5000円も払う馬鹿ww」

ここまで人に馬鹿された事なんて無かった、友達にも、ましてや大人に親もろとも馬鹿にされてショックのあまり胸が締め付けられ言葉も出ない。ここまで馬鹿にされたら文句の一つも言いそうなもんだが僕は何も言えなかった...ただ胸が苦しくて苦しくて消えてしまいたいと本気で思った。

沈黙が続く中、先生がさっきとは違うトーンで話はじめた。

「あんま言う意味ねぇけど、俺の親がさ失踪して今どこにいんのか分かんねぇんだよ...借金残してよ!」

「...」

「だからもうここに来るのはこれが最後だから、まぁ来たくも無いけどな...一応言っとくわ」

「...」

「これにお前が今までしてきた問題の番号とか書いてあるから引き継ぎの先生に渡しとけ」

そう言うと先生はメモを僕に渡した。


「お前どうせ何も言わないから説明出来ねぇだろ?じゃ、俺帰るから!」


下に降りていく先生。僕は一人部屋に残されたままうつ向いているしか無かった。


その後僕は家庭教師を断った。先生から渡されたメモをグチャグチャに握り潰すと気持ちが少し楽になった。なんだか少しだけ大人になれた気がした。

僕は吃りながらでも気持ちを相手に伝えれるように努力した。もうあんな苦しい思いをしない為に...


あの時の先生の言葉は何を意味していたのか?文にしてみると少し理解出来たかなと思います。


実体験、聞いた話を書いてきましたがやはり一番怖いのは人の言葉なんでしょうかね?

これで僕が知っている話はお仕舞いです。

新たな体験に巡り会うその日までお別れとなります。今まで読んでいただき有り難うございました。

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