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臓器拒絶とガラスの免疫抑制剤

大公が主祭壇ハイ・アルターから最初の一歩を踏み出した時、大聖堂の丸天井ヴォールトが震えた。彼の左腕の代わりとなっているモーニングスター(戦棍)――石灰化した椎骨と企業の光ファイバーケーブルの冒涜的な融合物――が淀んだ空気を唸らせ、過熱されたプラズマと黒い膿の雫をモザイクの床に滴らせた。


『貴様らの肉は……』彼の声は二つの重なり合うチャンネルに分かれていた。石化したヨーロッパの冷酷で貴族的なトーンと、コンソーシアムのテクノロジーの騒々しい静電気ノイズだ。『……我が新たな移植片グラフトとなる』


戦棍は、その怪物の質量を無視するような慣性で放たれ、ほんの一瞬で俺たちの間の距離を切り裂いた。


ブロックしたのは俺ではない。


グリッスルが前方へ身を躍らせ、リヴァイアサンの骨の斧を緑色の残酷なバリケードとして振り上げた。オークの武器と大公の変異した腕の衝突は、熱と音波の衝撃波を生み出した。プラズマが飛び散り、グリッスルの肩を焼いたが、彼女は1ミリも後退しなかった。


「てめぇ、消費期限切れの肉の匂いがするぜ、陛下!」将軍が唸り声を上げ、首の静脈を隆起させながら、戦棍の鎖に抗って斧の刃を押し込んだ。


そのブロックを利用する。サイバネティックな左目が、異形の解剖学的構造アナトミーを戦術的にスキャンした。


診断結果は明白であり、恐ろしいものだった。ヨーロッパの原初の水晶(大公の右半身)は、常に壊死した肉と企業のチューブ(左半身)を凍らせ、粉砕しようとしていた。生物学的な崩壊を起こしている怪物の体に強制的な「平穏」を注入し、被造物が爆発するのを防いでいるのは、身廊に膝をつく彫像たちからエネルギーを吸い上げている何千本もの青い光の糸だった。


「奴は急性拒絶反応アキュート・リジェクションを起こしてる!」戦闘の騒音を越えて俺は叫んだ。「凍った市民たちは、奴の免疫抑制剤イムノサプレッサーだ! 点滴のラインを切り落とせば、奴の解剖学的構造は自らを喰い尽くす! ヴァレリア、ルナ! 青い糸を狙え!」


「了解だよ、先生!」ヴァレリアがモザイクの床を滑りながら衝撃ゾーンから離れ、プラズマライフルを構えた。


エンジニアは怪物ではなく、天井に向かって発砲した。過熱された青いビームが丸天井の暗闇を引き裂き、石化した礼拝者たちの上にぶら下がる何十本もの発光フィラメントを切断した。プラズマが光を切り裂いた場所で、魔法の静電気の甲高い悲鳴が響き、対応する彫像はその燐光を失って、不透明で不活性な氷へと変わった。


投薬メディケーションが途切れたのを感じ、大公が金切り声を上げた。充血した人間の目が、狂ったように俺の方へギョロリと動く。


破壊者ヴァンダルども……寄生虫め!』


彼はグリッスルの手から戦棍を引き抜き、回転させた。腐敗した貴族は水晶の手で、俺たちの周囲の床から直接突き出す紫色の石筍せきじゅんの雨を召喚した。


横へ飛び退いたが、水晶の先端の一つが白衣の裾を引き裂くのを感じた。切り傷の冷たさが瞬時に太ももを麻痺させたが、肝臓の寄生体が体内の除細動器デフィブリレーターとして働き、筋肉を動かし続けるために腐食性の熱を血流に送り込んだ。


「ルナ、分裂の共鳴レゾナンス・オブ・クリービッジだ!」怪物の側面を突くために弧を描いて走りながら命じた。


エンパスは俺の説明を必要としなかった。音波の杖の基部を床に打ちつける。這うような音波がバシリカ全体に広がり、フィラメントの魔法の光の周波数に特別に同調した。ガラスを割るためではなく、エネルギーを粉砕するために。


犠牲者と祭壇を繋ぐ何百本もの青い糸が、一斉に切れたバイオリンの弦のように、断片化された光の閃光とともに弾けた。


大公への影響は壊滅的だった。


共生を落ち着かせていた従順な人々のエネルギーを失い、怪物の胸が非対称に膨らみ始めた。腐った肉が沸騰して紫色の水晶のプレートを飲み込み、同時に原初の魔法はコンソーシアムのプラズマ・チューブを凍らせて自らを守ろうとした。機械が獣を拒絶しようとし、獣が機械を拒絶しようとしていたのだ。


怪物は祭壇の階段に膝をつき、暗い血と液体水銀が半分ずつ混ざった液体を咳き込んだ。


「ここが俺たちのオープニングだ!」俺は叫んだ。


両脚で強く踏み込み、大理石の階段を跳躍する。俺の黒水晶の腕が点火していた。奴の水晶にバベルのコードを適用するつもりはない。俺の腕と奴の右半身は、同じヨーロッパの起源という同じソースコードを共有している。大公を殺すためには、奴に「属さない」側を強化しなければならないのだ。


怪物的な君主の丸まった背中に重く着地した。人間の右手から、寄生体のキチン質の爪を解放する。


壊死した肉は銅と腐敗の匂いがした。俺の共生体は純粋な捕食者の多幸感でシャーッと音を立てた。


パンゲア・コンソーシアムが彼の脊髄に埋め込んだプラズマ・モジュレーターに、直接黒い爪を突き立てた。暴力的にねじり上げる動きで中央格納ユニットを引き剥がし、祭壇の石を溶かし始めるほどの白く焼けつくようなエネルギーの源を解放する。


『う……裏切……り……』大公の貴族的な水晶の顔にヒビが入り、腐った人間の半分が痛みに咆哮する中、声なき叫びで口が大きく開かれた。


「お前の健康保険プラン(ヘルスケア・プラン)は取り消された」水晶の腕をハンマーのように振り下ろし、残った光ケーブルを貴族の氷の心臓へと直接押し込んだ。


過負荷オーバーロードは致命的だった。互換性のない二つの性質の摩擦が、臨界質量に達したのだ。


大公の体が内破インプロードするまさにその瞬間、俺は祭壇から飛び降りた。魔法的機能不全の重力が大聖堂の空気を吸い込み、一時的な真空を作り出した後、俺たち全員を身廊のガラスのベンチに叩きつける衝撃波を吐き出した。


頭をかばいながら激しく地面に落ちる。水晶が砕け散る音が永遠に続くかのように思えた。外の嵐はまだうなり声を上げていたが、バシリカの内部には再び墓場のような静寂が戻った。


ゆっくりと立ち上がり、肩についた凍った肉の破片と溶けたポリマーを払い落とす。祭壇は破壊されていた。かつてハイブリッドの君主が座っていた場所には、くすぶるクレーターが残されているだけだ。剣の玉座は地面まで溶け落ちていた。


グリッスルが足を引きずりながら近づき、横に唾を吐き捨て、生き残った水晶の兜の破片を蹴り飛ばした。


「奴は、冷たい魔法と一緒に死ぬより、企業のスクラップの機械に繋がれる方を選んだってわけだ。惨めなもんだね」


「絶望は恐ろしいキメラを生み出すのさ」ヴァレリアがため息をつき、ライフルを下ろして祭壇の基部へと歩み寄った。エンジニアは青いフィラメントを観察した。「国家の寄生体ステート・パラサイト」が死んだ今、糸は消え去っていた。彫像たちにエネルギーは戻らない。彼らは空っぽであり、俺たちが到着するずっと前に死んでいたのだ。


クレーターに近づいた。ほこりが落ち着く。


しかし、何かがおかしい。


獣の死によっても、俺の中の寄生体は落ち着かなかった。それどころか、その動揺は鋭く冷たい不安へと変わっていた。俺の黒水晶の腕が再び脈打ち始めた。大公の残留する気配に対してではなく、バシリカの地下に埋もれた何かに共鳴しているのだ。


「アーサー……」ルナが目を丸くして俺の袖を掴み、大公の爆発が祭壇の中心に作り出した亀裂をじっと見つめていた。モザイクの床が割れ、深く暗い縦穴が現れていた。地殻へ直接掘られた通路だ。


その穴からは、寒気も、腐った肉の匂いも、テクノロジーの静電気も放たれていなかった。


放たれていたのは「歌」だった。人類よりも古く、大陸地殻よりも古い、低く絶え間ない音符。俺の義手が畏敬の念から自ら持ち上がろうとするほどの共鳴。


祭壇の中心にある深淵を見つめた。


大公は第零号患者ペイシェント・ゼロではなかったのだ。奴は洞窟の入り口に巣食うグロテスクなダニにすぎなかった。深淵から発せられる力のパン屑を喰らい、地下で眠っているものの巨大さに凍りつかないよう、安っぽいテクノロジーを使っていただけなのだ。


「診断は不完全だった」外の嵐とは全く関係のない悪寒を感じながら、ミスリルのメスをベルトに戻し、呟いた。


肩に取り付けられたタクティカル・フラッシュライトを点灯させ、その光線を縦穴に向けた。黒曜石の壁が、狂気的な幾何学模様の深淵へと螺旋状に下っている。


「ヴァレリア、グリッスル。装備をチェックしろ」


世界の終わりまで俺に付き従い、今、不毛の地獄の核へと降りる準備をしている3人の女性たちを見た。


「真の感染症は、肉もロボットも必要としない。俺たちは旧世界オールド・ワールドの『主要な傷口メイン・ウーンド』を見つけた。どうやら、針の穴を通って降りて行かなきゃならないらしい」


第零号患者ペイシェント・ゼロのクリニックへの降下が、今まさに始まろうとしていた。


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