見つめないで
“寂しい”テヨンに対するその感情は、美里にとって2回目だった。1回目は、名刺交換会での再会。テヨンが自分のことを覚えていないと分かった時。でも、こうしてテヨンが会いにきた事実で、その寂しさは払拭された。
でもなんだろう? 1回目とは微妙に違う感覚がしてる。今度は偶然じゃなく、テヨンが自らの意思で、あの場所へきたんだ。いや、もしかして、また偶然? でも『やっと会えた』って……。
「あ~、も少しで危なかた~」
テヨンの声に、美里はハッと我に返った。
「え?」
見ると、自分の大事な部分を押さえながら、こちらチラッと見やるテヨン。さっき、慌てて駆け寄った拍子に、テヨンを蹴ってしまった。それを思い出し、顔から火が出る思いがした。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫……?」
「やたー! これでイーブン! アハハ、顔がリンゴ!」
な? おちょくられているわ。完全にバカにされてる。でも……、悪い気はしない。
テヨンのペースに乗せられそうになりながら、美里はそれが心地良く思えた。
「これて……」
「え?」
「DVD付いてるの……でしょ? この曲のPV撮影、たくさん時間かかたから~、大変で~。でもレコーディングの時、ドフンのバースデーケーキが落こちて、その方が大変だた」
「そ、そう……」
「そだ、PV観ていい?」
「今!?」
テヨンの突拍子もない提案に、一瞬焦った美里だが、直ぐに思いなおした。
そうよ、そうよね。DVDでも流してなきゃ、間が持たないわ。美里がイエスもノーも言わないうちに、勝手にデッキにDVDをセットし、ソファーであぐらをかくテヨン。そして、何故か正座の美里。
ここ誰の家だっけ? ま、いいけど。“若気の至り”ってヤツね。……私ったら、何、年寄り臭いことを。
美里は急に恥ずかしくなった。
テヨンのセットしたDVDの映像が流れている。East TopのPV。画面のテヨンと、今目の前にいるテヨン。“二人”を交互に観ながら、美里は不思議な感覚に落ちていった。と同時に、改めてこれがあり得ない状況だと認識する。それでも……。
なんて綺麗なんだろう。
目の前でひたすら画面に見入ってるテヨンの横顔の、その美しさに美里は知らず知らず、見とれてしまっていた。
途端に、美里の脳裏をまたあの場面が、フラッシュバックした。
初めて会ったとき、ベンチに腰掛けて携帯を見つめていたテヨン。その目に光って見えたのは、絶対に涙だった。
「さきから目がささて痛い」
テレビを見たままそう言ったテヨン。その言葉の意味が分からず、ボーッとしている美里の方に、テヨンが振り向いた。その真剣な眼差しにドキッとした美里を、更に攻撃するみたいにテヨンが続けた。
「何でそんなに僕を見つめるの?」




