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制服姿になった優衣ちゃん

 「ヒューマノイドはどこにある?」


 九重さんが声を抑えながら、たずねてきた。


 「あんたたちが気にしていた俺の父親が所長を務めている研究所にだよ」


 薄暗い闇の中、九重さんの目が見開いた。俺は全神経を九重さんの表情に集中させていたので、それが分かった。


 「ヒューマノイドは完成していて、動かせれるのか?」


 完成。どうなれば完成なのか、実は俺には分からなかったが、ほぼ完成と言っていいはずだ。俺は頷いてみせた。


 「どうやって動かす」

 「それは言えない」


 予言の歯車になってしまっていたとしても、俺はまだこのクローンたちを信用しきっちゃいない。ヒューマノイドは俺の手で動かさなければならない。


 「では、誰の命令を聞く」


 なぜ、そんな事を聞く?おれはこの質問の真意が分からず、怪訝な表情で九重さんを見つめた。


 「俺たちの命令だけを聞いてもらわなければならないだろう。

 それはどうなっている」


 なるほど。そう言う心配か。俺は納得した。起動したはいいが、ヒューマノイドが政府側の指示も聞くようでは困るのは確かだ。


 「起動した人物の指示だけに従う」


 俺の言葉が終わるかどうかのタイミングで、九重さんは携帯を取り出しながら、八重樫さんを連れて、外へ出て行った。

 照明が消されたリビング。消えたクローンたちは何をしに行ったのかと、出て行った玄関に目を向けている。そんな俺の横で、体を寄せて優衣ちゃんが少し震えている。

 やがて、九重さんが戻って来た。


 「行くぞ」


 その言葉に俺は立ち上がった。


 「だが」


 出て行こうとする俺の前に九重さんは立ちはだかって、そう言った。

 何が続くのか?

 それが条件であろう事は推測できたが、その先は分からない。俺は警戒心を抱きながら、九重さんに目を向けて、立ち止まった。


 「男のお前は危険だ。

 この子にヒューマノイドは起動してもらう」

 「わ、私ですか?」


 優衣ちゃんは完全に戸惑っている。そして、俺に目を向け、どうしよう?と訴えかけている。


 「なぜ、俺じゃだめなんだ?」

 「男はある意味戦闘種族だ。

 いつ俺たちに牙を向けるか分からない。

 お前を信じない訳ではないが、念のためだ」


 まあ、優衣ちゃんが動かすなら、それは別にかまわない。だが、こいつらがもしかすると、起動しようとする優衣ちゃんを襲う可能性だってあるじゃないか。


 「優衣ちゃんでもいいが、起動する場に立ち会うのは許さない」

 「もちろんだ」


 九重さんがあっさりと、そう答えたので、逆に俺が戸惑ってしまった。俺はクローンたちを警戒し過ぎていたのだろうか。

 とにかくだ。俺たちとクローンたちの交渉は成立した。そんな俺たちは、大森の秘書の車を目指そうと、外に出た時だった。

 ほのかな月明かりと、街路灯の明かりが俺たちの姿を映し出す。先に進むのは俺と優衣ちゃん。その後を九重さんがついて行く。

 その時だった。九重さんが俺たちに声をかけてきた。


 「どうした。スカートが汚れているぞ」


 俺たちが立ち止まって、振り返ると、九重さんが優衣ちゃんのお尻のあたりを指さしていた。俺がそこに目をやった時、薄暗い闇に浮かぶチェックのスカートに、広がる闇のような大きな汚れがついていた。

 優衣ちゃんがスカートを手にして体をよじり、その汚れを確かめようとする。


 「見えないや。

 すごく汚れてるの?」

 「ああ。

 着替えてきた方がいいかも」

 俺の言葉に、優衣ちゃんが家に戻り始めた。


 「クローンと疑われないためにも、高校の制服にした方がいい」

 「うん。そうだね」


 九重さんが優衣ちゃんに投げかけたアドバイスに、思わず俺は同意してしまった。しかしだ。優衣ちゃんはクローンとして、登録されたタイプではないだけに、そこまでしなくてもいいんじゃね?と思ったが、その時には、優衣ちゃんはすでに家の中に姿を消していた。

 九重さんのアドバイス通り、優衣ちゃんは高校の制服で戻ってきた。白いブラウスに赤いリボン。その上にカーディガン、紺のブレザー。下はチェックのスカート。どこから見ても、女子高生である。いや、実際そうなのだが。


 「行くぞ」


 俺が優衣ちゃんに見とれていると、九重さんは俺を急かすように、そう言った。

 向かう先。それはあの研究所だ。

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