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アンジュと白のペンダント  作者: 北村 清
Case 1 黒豚はなぜ殺される

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アンジュ、決意を新たにする

再びリュミエール家の部屋に戻り、ああ疲れた。とソファーの上でくつろいでいるとお父様が戻って来られた。


「お父様ー!」


思わずテンションが上がり駆け寄ると、お父様は

「アンジュ!」

と名前を呼んで抱き上げてくださった。


「ご無事で良かったですー!」

「ああ、大公を殺した犯人が名乗り出て来たそうだ。それで、私も兄上も母上も帰って良いという事になった。夜遅くまで待たせてしまったな。さあ、アンジュ。家へ帰ろうか。」

「え・・でも。」

私はお父様の腕の中でもじもじした。


「こんな姿になって家へ戻ったら、使用人のみなさんがびっくりします。私はどこかでひっそり地域猫として暮らします。港の辺りにでも行けば、親切な漁師さん達が余ったお魚とかわけてくれると思うのです。」

「何を言っている!その地域のボス猫や犬よりしつけのなっていない悪ガキにいじめられたらどうするんだ⁉︎アンジュが騎士団の医局で飼っていた猫とでも説明すれば十分だ。一緒に帰るぞ。」

「お父様。ありがとうございます。ありがとうございます。・・あの、お礼に肉球に触ってもいいですよ。」

「そうか?」

お父様はなんか嬉しそうに私の肉球をもみ出した。それからふと、デルフィーヌ様の足元で香箱座りをしているお兄様の方に視線を移した。


「ジュストは肉球をもませてくれないのか?」

「はあ⁉︎」

とお兄様が嫌そうな声をあげた。


「嫌ですよ。絶対触らせませんからね!無理矢理触ろうとしたら怒りますよ!」

そう言って母親のスカートの陰に隠れる。お兄様。その態度は可愛いだけですよ。


「わあー、アンジュのおうちに遊びに行くの初めて。嬉しいー!」

「たしかジュストんちは、港の近くにあるのだよな。」

「騎士団長、僕の部屋はアンジュ嬢の隣にしてくれ。勿論、同じ部屋でも良いぞ。」

「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」


全猫、ついて来る気満々らしい。でも、彼らが猫になってしまったのは私の責任だ。私は瞳をウルウルとさせ、もう一方の前脚の肉球も父の前に差し出した。



そうして私達は皆で帰途についた。




その後。


ロートル大公が殺され、犯人が妻である大公妃だという事は王都中の新聞に載った。

動機もがっつり新聞に載った。

王都民は幸薄い大公妃に同情し、夫の大公と妹のマリーカ公女の事を口を極めて罵った。


大公妃は正当防衛が認められた。

そして亡命を申請し、それも認められた。

私が住んでいるこの国は東西に長く『東の辺境伯』と『西の辺境伯』がいる。エミリカ大公妃は、西の辺境伯の預かりという事になった。自然の美しい田舎の辺境伯領で、心と体の傷をゆっくり癒していくのだそうだ。


「お祖父様もお祖母様も優しくて立派な方だから、大公妃は大丈夫だよ。」

とリュッカが言った。西の辺境伯は、リュッカの祖父なのだそうである。



隣国が、大公妃の事で何か言って来るかと思ったが、結局何も言って来なかったそうだ。隣国は王様が交代したばかりでまだ国内がゴタゴタしているし、そもそも新国王と大公は腹違いの兄弟で仲が良くなかった。なので、何が何でも仇をとろう!という事にはならなかったらしい。


ただ、騒ぎの元凶であるマリーカ公女には厳しい処分が降りた。他国の王族に薬を盛り、恥さらしな騒ぎを起こしたとして国王の命令で、ド僻地の修道院送りになったらしい。

さすがに外国の王族相手に騒ぎを起こしたとあっては、父親にもかばいきれなかったようだ。


まあこれで二度と、セブラン王子の前に彼女が現れる事はないだろう。


そのセブラン王子は事件の後遺症で寝込んでおり、面会謝絶となっている。という事に表向きなっている。


王子が寝込んでいるのは、大切な側近が四人も『私』と一緒に行方不明になっているからというのもある、という設定らしい。

私とお兄様、リュッカにブランシュそしてアシールは、現在失踪行方不明中という事になっているのだ。

隣国に誘拐されたという噂も流れていて、隣国の人達は必死になって否定しているそうだ。


私達の真実を、お父様は国王陛下にだけ話したそうだ。三毛猫王子はお父様に連れられて一回王宮に行き王様と面会した。


私が『古の秘宝』の継承者になったっぽい事。『古の秘宝』は一年に一回しか使えない事をお父様が王様に説明すると、一年後に元に戻るならいいか。とあっけらかんとおっしゃったそうだ。


ただし!


もしも一年経っても王子が人間に戻れなかったら、責任とって私が王子と結婚するようにとも言われたそうだ。


冗談じゃない!

と私は蒼ざめたが、そんな人生、いや猫生も良いなあ。と王子は言っていて、子供は10匹くらい、三毛猫が5匹トラ猫が5匹は欲しいな。とほざいている。

本当にさあ、この王子頭に虫湧いてんのかよ!と思う。

スワイプするたびに出て来る動画の広告よりうざい王子だ!


そんなセブラン王子は、騎士猫達を引き連れてふらふらと散歩に行くのが最近のお気に入りで、市井の人々の様子が自分の目で見られるのが楽しくてたまらないようだ。うちの隣近所の人達ともすっかり仲良くなって、よく猫用のおもちゃやお菓子をもらって来ている。


三匹の猫騎士達は、走り込みをしたり筋トレをしたり鍛錬に余念がない。そんな彼らと対照的に、秘書官のアシールはひたすら寝ている。死んでるんじゃないかと時々不安になるくらい眠っている。好きなだけ昼寝できるのが幸せでたまらないらしい。一年経っても人間に戻りたくないなんて言っているくらいだ。そりゃ、人んちでタダ飯を食べるだけの生活は楽でいいよね。使用人のみんなには「可愛い、可愛い」と言ってもらえるし。


そして私は、ひたすら読書と勉強に励んでいる。絶対、次こそは医師試験に受かって医者になるのだ。と心を燃やしている。

探偵アンジュは一回でおしまいだ。これからはこれ以上変な事件に巻き込まれたりせず、平和に穏やかに暮らしたい。

人間に戻り医者になり、王都から出ていつまでも幸せに暮らすのだ。と決意している。


願わくば、その決意通りに穏やかな毎日を過ごせますように。



黒豚殺人事件編が終わったので、ひとまず完結と致します

他の完結作品の番外編を書きながら、case 2の内容を推敲する予定です

case 1が完結したのでブックマークと下にある☆☆☆☆☆評価をよろしくお願いします

面白かったと思って頂けたら星多め、いまいちと思われたら星少なめでけっこうですのでぜひぜひよろしくお願い致します

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました

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