13.うちはヒロインに服を選ぶような薬屋ではないはず
ミャンが首に触れている。そこに今まであった重苦しい魔封じの首輪はもうない。
「首輪を外した直後は魔力の制御が難しくなると聞く。気分が悪くなるなどの症状が…いや、これは店長殿の方がよく知っているかな」
「ええ、注意しておきます。今日はありがとうございましたアルリアさん」
「いやなに、これも乗り掛かった舟だ。気にするな」
まだ体調に変化はなさそう。というより、戸惑い…かな。
「大丈夫ですか、ミャン」
「あ…うん」
大人しくしてるとまた雰囲気変わるなぁ…。
「なんか…不思議な気分…ねぇ、ロイ様、私これから…」
「特に何かお願いするわけじゃありません。今まで通りで良いのです」
「今まで…通り…」
「はい、いつもみたいに手伝ってくれたり、お出かけしたり…。あ、誰か好きな人できたらちゃんと言ってくださいね」
勇者とか、勇者とかな!
「好きな人…ね」
ん?ちらりとミャンがこっちを見ている?
「いい主人に拾われたな、ミャン殿は。なかなか店長殿ほど優しい人に拾われることはそうないぞ」
「いやいや…俺は普通のことをしてるだけで…」
「それが難しいと言っているのだ。いかに優しい者とて、奴隷を心の底から一人の人として扱うのは難しい」
そういうものなのだろうか…?奴隷という存在が当たり前だと、そうなのかもしれない。
「あ、そうだ」
ミャンを見てて気が付いた。今まで首に魔封じの首輪が付いていたせいで服は制限されていたが…。
「ミャン、イレイナさん達と服を買いに行ってはいかがですか?」
「服…?」
「はい、今まで首元が緩いものしか着られなかったでしょう」
「ああ、店長殿は目ざといな。確かに、もう首元に気を使う必要はないな」
言われてみればそうだと思ったのか、ミャンも頷いている。
もしかすると、自分で好きな服を選ぶのは初めてなのだろう。
そうと決まればすぐに行動開始だ。
アルリアに再び礼を言って薬屋に帰り、イレイナ、リリ、ルミナに相談すると、みんな楽しそうに乗ってくれた。
「…確かに」
「そう言われればそうね、ミャンの服を買いに行きましょう!」
「おすすめのお店へご案内します」
「にゃにゃっ!」
うんうん。微笑ましい雰囲気だ。
さ、俺は仕事を…
「テンチョウロイ、イッショニ、イクコトヲ、スイショウシマス」
え、クレイヒューマンが何か言ってきた。
「いやいや、買う服はミャンの服ですから。皆さんで十分では。それに俺は…」
「テンチョウロイ、オトメゴコロノ、ベンキョウヲ、スイショウシマス」
なんで召喚獣にオトメゴコロを説かれているのだ???
「そうよ、ロイさんも来なさい。というか、来ないつもりだったの?」
「ロイ様、それではミャン様が可哀そうですよ」
「ロイ…来ない?」
え?な、なんでだ?
「あの…えっと…ロイ様…一緒に服…選んでほしい、な」
いつも元気な猫娘が猫耳をぺたんと倒して、しおらしく上目遣いでこっちを見ている。なんという破壊力なんだ!
「わ、分かりました」
「人形…店番、よろしく」
「カシコマリマシタ」
こんな恥ずかしそうなミャンはゲームの中でも見たことない。
「さぁ、そうと決まれば行くわよ!」
「はい、行きましょう」
「行く」
イレイナ、ルミナ、リリ、そしてミャン。
少し前の自分に言っても、果たして信じられるだろうか。
「ここでございます。お値段はそれほど高くなく、獣人向けの服も取り扱っております」
「ふふ、こういうのはワクワクするわね!」
みんなが服を物色し始める。
「ねぇ、ロイ様…私に、何が似合うと思う?」
まさか俺がヒロインを着飾らせるなんて、な。
「お客様!お悩みならお手伝いしますよ!!」
は?ここはこいつの店か!?
…そうか、思い出した!そういえばいたな、服屋のヒロイン!
はぁ…この町、どこへ行ってもヒロインがいるな…。
「にゃ!?急に何にゃ!?」
「お客様可愛いですねぇじゅるり…」
「こいつ危ないにゃ!ロイ様!」
俺はゲームに関係ないキャラで。
「ロイ様ぁ!」
普通の薬屋のはず。
主要キャラ
ロイ ー薬屋ー 朴念仁
イレイナ ー召喚術師ー ミャンにフリフリな服を着せようとしてる
ルミナ ー氷術師ー ミャンに動きやすい服を選んでいる
ミャン ー獣人奴隷ー 危ない服屋の店長に襲撃された
リリ ーメイドー ミャンに機能美に優れた服を選ぼうとしている
イレイナの召喚獣
傀儡人形クレイドール 乙女心察知機能付き
サブキャラ
アルリア ー王国騎士ー 実は私服持ってない
モブキャラ
服屋の店長 ーヒロインー 女性に触れる手が犯罪チック




