↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
99/100

第四章 三十三


〈彼の人に死を与えるべし〉


それが森の人の大半の意見だった。


彼らは長年に渡って”もり”と共に迷宮中に蔓延する毒と戦ってきた。


ニエベは自分の私利私欲のために、たくさんの生命を苦しめ、その命をもてあそんできた。それを考えれば決して許される行為ではないし、死を望む声があってもおかしくはない。


他ならぬ僕自身もニエベに対して複雑な思いを抱いている。間接的にだが、両親ともに迷宮の所為で死んでいるし、知り合いにも病気で苦しむ人や亡くなった人もいる。なによりルルディのことは許せない。彼女は自身の母親を失い、呪いに犯され、今は死の淵をさまよっている。


しかし憎悪の視線を向ける人々に囲まれ怯える男は、小さく、細く、薄い。この人物が、本当にそんな大罪人なのかと疑ってしまう。


ルルディならこの男に向かってなんと言うだろうか。母親を殺されたルルディなら……


「ロジエさん」


僕は人の群れから離れた場所で、事の成り行きを見守っていたロジエさんに、ニエベを見つけた時の様子を語った。


ロジエさんは腕組みのまましばらく考えていたが、やがておもむろに口を開いた。


「……わかった。我等は"もり"と共に生きる民だ。その意思は何よりも尊重される」


 そう言って集まった人々に、聖薬師ニエベが"もり"の意思によって助けられた事実を公表し、その命を奪うことは"もり"の意思に反すると説いた。


森の民は一様に困惑した表情で、思いおもいに意見を述べたが、強硬に反対する者は誰もいなかった。


「聖薬師ニエベ、お前にやってもらいたい事がある」


「……いっ命だけは助けて……頼むから」


「それは"もり"の意思による。今日は助けたが、明日は見離すかもしれない。今後のお前の行動次第だ」


「何をさせるつもりなんだ、ボクはこの通り何の力も残っていない」


「我が一族の娘、ルルディを救ってもらいたい」


 ニエベは首を縦に振り、小声で簡単な事だと答えた。


「本当だろうな!助かりたい一心でデタラメを言うと許さないからな!」


「ひいっ!ほっ本当だ。材料と、ウーヴァさんの薬事辞典があればすぐにでも……」


「辞典?なぜ辞典が必要なんだ?」


「あっあの辞典は娘のためにウーヴァさんが作った物だ。分量や調合の注意点などは全て娘の為に書かれている。ボクにはわかるよ……間違いない」


 数日後、ニエベの言葉通り生命の危機を脱したルルディは、鬼装の呪いを解かれ、僕らに真からの笑顔を見せてくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。