第四章 二十六
「私の良人になり、道場を継いでくれ」
「おっおっとお⁉ 」
「なんならこの街で料理屋を開いてもいい。ハイドラの腕ならすぐに繁盛する」
「ちょっ……いっ一度落ち着きましょう!いったん離してください」
「ダメ」
「オルヒアさん⁉ 子供じゃないんですから!」
「返事をくれるまで離さなさない」
今までもたまに見せていた精神的暴走域に入ってしまったか!
僕の必死の頼みにも耳には届かず、より一層拘束力を強めようとする。
それどころかその豊かな胸に僕の顔を強引に押し付けられ、呼吸ができない!
殺られる!コレは乳殺されてしまう!
「このまま窒息するか!ハイと返事するか!選べ‼ 」
「モガモガッ!(それは選択じゃなくてキョーハクですよ!)」
「お前を手に入れるためだ、女だろうが乳だろうが何だって使うさ」
もう後まばたきを何回かする間に、肺に空気を入れなかったら、きっと僕は柔らかさの中で息絶えていただろう。
しかし救世主は意外な形でやって来た。
轟音とともに本殿を襲った巨大な振動は、建物全体を傾かせ部屋にあった全ての物を一方向へ引っ張る。その中に、死にかけと殺りかけの僕たち二人も含まれていた。
「た……助かった……」
「せっかくいいとこだっのに!何だいったい!」
そこで今までの浮かれていた頭が醒め、急に現状僕達の置かれた立場を思い出した。
ここは永久迷宮の天井にぶら下がった建物だ。今の衝撃でそれが傾いたということは……
「まっまさか……落ちるのか?」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、僕らは床に転がっていた武器をひっつかむと、傾いた扉を飛び出していた。




