第三章 八
しかしブブキの言葉に過剰に反応したあの様子は、普通じゃない。
心の奥に何が隠れていて何がそうさせるのか、全くわからないけども、その時が、ルルディの心が決まる時が来れば、話してくれると信じよう。
「ルルディ、聞いてくれるかい? 」
僕は改めて彼女の右腕に触れ、今の自分が思う正直な想いを口にする。
「ルルディは僕にとって大事な人なんだ。だから僕らの進む道が別れる日まで一緒にいてほしい。分かるかい? 」
赤くなった眼を大きく開いて、今度は真っ直ぐに僕を見た。
考え込むでもなく、逡巡するでもない、僕の言葉が彼女の時を止め、反響しているかのようだった。
「……大事……な? 」
「そう。大事ない……わふうっ⁉ 」
いきなりに、衝突するような抱擁。
小さな身体で懸命にしがみついて、ぎゅうぎゅうと顔を押し付けてくる。
彼女の家族は、母親と祖母だけだったらしいし、それも同時期に亡くなったと聞いている。もしかしたら幼い頃十分に甘えられなかったのかも知れない。
僕自身も嬉しくて感極まると、思わずオルヒアさんに抱きついたりして十分子供っぽいと思うが、ルルディの不器用な甘えっぷりはそれをはるかに上回る。
もし僕に妹がいたらこんな感じなのだろう。
小さな身体を膝に乗せて互いの暖かさを確認する。改めて、呪いを抱えた痩せた手足でよく頑張ったと思う。無事で本当に良かった。
ロバロがボウと短く唸り、重そうに頭を持ち上げる。僕はその首を軽く叩き、その苦労をねぎらった。
この寡黙な仲間は本当に頼りになる。
迷宮に入ってから常に辺りを警戒して、いち早く危険を察知して報せてくれる。
僕達が食事をしている時も、修行している時も、もちろん寝ている時も。ロバロがいなければ、いつどこから襲って来るか分からない植物に怯え、とてもこんな長い期間迷宮内に滞在できなかっただろう。
もう一度、ボウと短く唸るロバロ。聞いたことのない鳴き声だが、何か言いたいのか?
「……あっちに……いるって」
「いる? 敵がいるのかい?」
「わからない。でも……いるって言ってる」




