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第二章 二十


狭長だった川の流れは、下流に行くに従い揺蕩たゆたうねりへと姿を変え、いきなり現れた遠大な奈落へと落ちて行く。


ゆらゆらと揺れ続ける 熱風が常に地の底から吹き上がり、いくら眼を凝らしても穴の反対側はおろか、底を見ることはできない。


迷宮の中心部、〈火口〉呼ばれるその場所は、小さいながらも数戸の建物が並び、意外にも人と物が集まる活気に溢れていた。


辺りは夕暮れに等しい明るさに落ち着き、光の玉がゆっくりと奈落へと落ちて行く。

これから半日は暗闇の時間が始まる。


「あれが大薬師神宮の本尊、神功光明なのか?」


「ハイ。あれが上下して迷宮内の昼夜を生み出しているみたいです」


「きれいだ」


 火口からそそり立つ光の柱は幻想的な輝きを放ち、宙に浮かぶ球体にぶら下がる空船を紅く染め上げる。


ここへ来る途中、商人に話は聞いていたが実際に目の当たりにするとなんとも信じがたい光景だ。


迷宮に入ってからというもの常に疑問に思っていた。


この閉ざされた空間にある日昇と日没の如き時間の流れ。そして暖かさと天井の雲。


あの光体が穴の中を上下する事で昼夜が生まれ、火口に流れ込む水が熱と雲を作り、迷宮全体に行き渡っていたのか。


故郷へ帰ったら叔父上にこの話してやらねばなるまい。あの人はこういう奇想天外な話が大好きだからな。


火口を見下ろせる崖の上には、空船が着岸する木製の桟橋が並んで設置されている。多勢の空商人は薬師神宮本殿へ物資を運ぶためここから公設の空船に乗って飛び立つのだ。空船は近くで見ると、その大きさに圧倒される。船の上部にある球の正体は〈風船葛〉という植物で最大で直径七間(12.74m)にもなるという。


内部に充満するガスは、温められると浮力を生じ物資を軽々と持ち上げる力を持つ。


私達はこの空商人の中に、木に止まる"森の人"の話をする人物がいると聞き、この桟橋までやって来たのだった。


「……なぜお前がここにいる」



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