第18話 孤高のイケメンの本音
夕方
通学路
私 上月は、学校一のイケメンコミュ症くん 佐藤 陽光の隣を歩いていた。
先程、私は生まれて初めて恋という感情を経験した。
その感情の矛先は...
正しく今隣をボーっと歩いている彼にだ。
この人と一生一緒に居たい。
私は彼にそんな感情まで抱いてしまっている。
すこし重いのかも知れない。
しかし、もう止めることはできない。
恋が芽生えた後にやるべきこと...それは何だろうか
いくら恋に鈍感な私でもわかる。
告白だ。
どうやって告白すればいい?
「大事な話があるから」といって呼び出せばいいのか?
食事中にいきなり告白すればいいのか?
どうすればいいだろう。
さわは、そんなことを考えながら帰り道を歩いていた。
お気づきだろうか
もう、さわは告白をしようとしている。
普通の人であれば、好きを自覚した後でも『フラれたらどうしよう...』『私のことどう思っているのかな..』という具合に、告白するかどうかを悩むものだ。
しかしさわは、思い立ったら即行動!!の人なので、いきなり告白を断行しようとしている。
『んーー考えてもよー分からん
ええい!告白しちゃえ!』
さわはそう心を決める
「なあ ひかるー
大事な話があるんやけど聞いてくれるか?
私.....ひかるのこと....
って 大丈夫か!」
いざ告白しようとして、陽光の方に目を向けると彼は顔を赤くしフラフラになりながら歩いていた。
明らかに体調がめちゃくちゃ悪そうで、立っているのがやっとでは無いかというような様子である。
告白なも二の次になり、思わず心配そうな表情になるさわ。
そんなさわを見て陽光は
「はは... さわさん... 大丈夫ですよ... 心配しないでください...」
微笑みながら何とかそう返した。
さわに心配をかけないように微笑むことを心掛けたのだろう。
しかしそんな微笑みですら苦しそうな気持ちが伝わってくる。
「なにゆうてん!
全然大丈夫じゃないやろ
てか、早く気づけなくてごめん
一旦どこかで休む?」
そう心配そうに尋ねるさわ。
「 ….大丈夫です... もうすぐ着くはずだから....そのまま歩きます
ほんと..すみません」
2人は、家がすぐそこに見えるところまで帰ってきていた。
「じゃあ一緒頑張るよ
バック貸して」
そう言われた陽光は全く遠慮すること無くさわにバックを渡した。
いつもなら、さわに迷惑をかけないために、遠慮するところだが、それだけ限界だったのであろう。
「あと腕借りるで」
さわは陽光の腕を自分の首回りにのせて、支えながら歩き始めた。
通学用のバックを2つ持ちながら、高校生に肩を貸し歩くのは正直しんどいだろう。
しかし、そんな苦しさよりもさわの気合いと陽光への思いの方が圧倒的に大きかった。
なんとかマンションにたどり着き、玄関の手前まで来た。
「鍵開けれる?」
さわは、肩に乗ってダランとしている陽光に話しかける。
2人の距離は非常に近く思わず意識してしまう距離感であるが、今はとにかく陽光が心配で...どうにか陽光を早く楽な体勢にしてあげたい。
その一心だったため、特に意識することは無かった。
「..はい」
そう言ってポケットから鍵を取り出す陽光。
少し震える手でガチャッと鍵を開けた。
そうしてゆっくりと陽光の部屋に入る。
思えば、いつもさわの家で2人は過ごしていたため、陽光の部屋に来るのは初めてだ。
全体がグレーで統一されていて、スタイリッシュでかっこいい部屋である。
ワンルームの部屋に直行し、とりあえず陽光をベットに座らせることができた。
陽光も何とか自分の部屋に着いて安心したのか、すこし表情が緩んでいる。
「すみません
ありがとう..ございました」
陽光は声を絞り出し、さわに感謝を伝える。
そんな陽光の前でさわは、しゃがみ込み目線を合わせながら優しく話しかける。
「ほんと大丈夫か」
「はい.. 今日ちょっと慣れないことしすぎて 無理しちゃったのかな」
陽光は、さわに心配を与えないようにとぎこちない笑顔を作り話す。
今日陽光はクラス皆の前に出てきて話、さわの潔白を証明した。
人前に出ることが大の苦手な陽光にとって相当大きな負担のかかる行動だっただろう。
「なんかして欲しいことあったら言って」
そんな陽光のために、辛そうな大事な人のために何か尽くしたい
その思いで尋ねるさわ。
「え..」
「おかゆ作る? スポドリいる? 何かとってこようか?」
「いやいや...そんな申し訳ないです...
一人で耐えるのは、なれてるんで...
そこまで、さわさんに迷惑かけれないです」
そう言って断る陽光。
「あんな...
こういうときって頼られる方が嬉しいんやで
大事な人が辛い時に、そばで支えられへん方が断然苦しいやろ」
優しい表情を崩さずにそう話しかけるさわ。
「だから..看病させてや」
そんなさわの言葉に陽光は頬を赤らめたまま静かに頷いた。
「そしたら、まず着替えるかー
服とかって、どこあるん?」
「洗面所にあります
キッチンの横のところです
シャツと寝間着っぽいの持ってきてくれると嬉しいです...」
「オッケー」
「ほんとすみません」
「すいません禁止な」
何度も謝る陽光に内心うんざりしていたさわはそう笑顔で答えて、洗面所に向かった。
何とかシャツと寝間着をみつけ、陽光のいるリビングに戻るさわ。
「はい これ
あと暖かくしといた方が良いかなと思って、フリースも持って来たで」
「ありがとうございます」
そう言って陽光は、いきなりシャツの下部分を腕を十字にした状態で少しだけ持ち上げた。
事前にカッターシャツは脱いでいた様だ。
少しだけ脱がされたシャツの下から真っ白く透き通った肌が微かに見える。
それから、一気にそのシャツを捲り上げ勢いよく脱ぎ始めた。
「ちょっ...」
さわが驚いて止めようとした頃には、腕が頭の位置まで伸び首の下まで露わになっている状態だった。
陽光の身体は、真っ白く少し細身であった。
腹筋はほんのりの4つに割れており、胸板は少しだけ出ている。
一見細身で頼りない身体にも見えるが、よく見るといい筋肉がついている。
そんな感じだった。
「え?
あっ!」
陽光は頭が回っておらず一瞬何のことだか分からないという表情をしていた。
だが、さわの恥ずかしそうな顔をみて、自分が女の子の前で裸をさらしている事実にやっと気付いたのか、焦り始めている。
「あ...
どうしよう...」
思わず今の上裸を晒した体勢で固まってしまう陽光。
「いや 着るか脱ぐかのどっちかにせいよ」
いつも通りの優柔不断な陽光を見せられ冷静さを取り戻したさわは、ツッコミをいれる。
「じゃあ脱ぎます」
陽光は淡々とそう答えた。
その少しセンシティブな言葉に思わずドキッとしてしまうさわ。
そんなさわの様子とは関係なしに、陽光はゆっくりとシャツを脱ぐ。
「はい」
そう言ってさわは、洗面所から持ってきた替えのシャツを陽光に手渡す。
どうしても上半身が露わになっている陽光が目に入ってしまう。
上裸でベットに座っている陽光は、まるでenenの雑誌モデルのようだ。
とてもセクシーでかっこいい。
その上、今の陽光は吐息を軽く吐きながら頬が赤くなっておりとても艶めかしい雰囲気が漂っていた。
そんないつもより断然エロい陽光に対して、さわはムズムズとした気持ちが止まらなくなりそうになり、慌ててキッチンに逃げ込んだ。
それからキッチンに逃げ込んだついでに、さわは陽光におかゆを作った。
作り方がよく分からず、正直味にはあまり自信がない。
だけど、「陽光よくなれ」という気持ちを沢山込めて作った。
完成したおかゆをお盆にのせて、陽光の所まで運ぶ。
さわはスプーンを手に持ち、おかゆを掬う。
そしてそれを陽光の口まで運ぶ。
すると陽光は口を開けてくれるから、そこにおかゆを注ぎ込む。
何回も運んだ。
思えば誰かにアーンとするのは人生で初めてだった。
私のおかゆを待って口を開ける陽光くんの姿はとてもとてもかわいく、まるで小動物に餌をあげている感覚を抱いた。
非常に悪くない作業だった。
「すごく美味しかったです」
「良かったわ」
おかゆを食べ終わり、2人はベットに横並びで座りながら話していた。
「何だか食べててぬくもりを感じました」
そう穏やかに微笑みながら答える陽光。
私のおかゆに込めた気持ちが伝わったのだろうか...
「へへ
作ったかいがあったよ」
そうとても嬉しそうに言葉を返すさわ。
「身体の調子も大分良くなってきまし...
って
いてっ!」
陽光は急に頭を手で抑えながら痛そうなそぶりを見せる。
表情も大きく歪んでしまっている。
「だいじょうぶ!?」
一瞬で心配そうな表情になるさわ。
「ちょっと頭が...」
そう言って辛そうな表情をみせる陽光。
さわは心配な表情をしながら、陽光の背中を優しくさすった。
「......少し良くなってきました」
幸いちょっとの時間で痛みが引いてきたようだ。
「大丈夫か...」
そういいながら、陽光の背中にあった手を頭まで持って行くさわ。
ヨシヨシと言わんばかりに優しく陽光の頭を撫でる。
「あの.....」
そんなさわの手を感じ口を開く陽光。
「あっ ごめん触っちゃって..
痛いよな」
陽光の気持ちを察したさわは、申し訳無さそうな表情でそう謝る。
「いや 違います
もっと撫でてくれると嬉しいです..」
少し恥ずかしそうな表情をしながら話す陽光。
「さわさん手で撫でられると痛み引いてく気がします...」
「え..」
「それに少しずるいかも知れませんが、さっき言うこと聞いてくれるって....」
陽光は、後ろめたそうな表情をしながら斜め下を向いてそう話す。
確かに陽光を部屋まで運びきった直後にそのような会話をした気がする。
「わかった」
さわは陽光の頭を再び撫で撫でし始めた。
撫でられた陽光は安心しきって気持ち良さそうな表情をする。
さわもすこし呆れているようだが、嬉しそうな表情をしている。
さわが陽光の頭を黙って優しくなで続けた。
気づいたら、10分ほど時間が経っている様だ。
すると急に陽光が口を開く。
「あっ...あの....」
「ん?」
「ええっと....
いや...いいです...」
「なんやねん笑」
「いや...
えーと.....」
「何?」
「やっぱりいいです...」
そんな陽光の姿を見て、怪訝な表情をするさわ。
「なんでも聞くよ」
何かを迷っている隣の人に、さわは穏やかにそう語りかけた。
すると、その言葉に安心したのか陽光は意を決した雰囲気で話し始めた。
「膝枕..
してください」
陽光は、そうもじもじとした表情をしている。
「いいよ」
さわは柔らかな口調で答えた。
「あと...なでなでも」
「あと...耳掃除とかも...」
「あと....毛づくろい的なのも...」
陽光は、正直に本音でさわにやってほしいことを頼む。
さわにとって、正直に本音で陽光が頼んで来てくれること自体が嬉しい。
少し注文が多い気はするが
「全部まとめて、わかったよ」
満面の笑顔でそう答えた。
その答えを聞いて、陽光も嬉しそうな顔をする。
ゆっくりとさわの膝に頭をかける陽光。
「2回目です...
さわさんの膝」
「そういえばそうやな」
「1回目はすごく緊張してました...
でも..今回は沢山堪能出来そうです」
「いや 堪能するものちゃうから」
そう言って笑うさわ。
「さわさんとこんなに近くに居られるのに、堪能するなって言う方が無理ですよ...」
そう言い切る陽光。
「だって僕...さわさんのこと大好きなんですから..」
さりげなくそんなことを言ってくる陽光。
その言葉を聞いて真っ赤に照れてしまうさわ。
「でも..僕だけ楽しんじゃってすみません...
さわさんは膝疲れるだけですよね」
「私もこの時間は好き....だよ!
ひかるの髪 サラサラで気持ちいし」
そう言って、真下で目をつぶり心地よさそうな表情をしている陽光の髪に指を通すさわ。
外は日も沈んできて、夜を迎えようとしている。
2人はこの幸せな時間をゆっくりと堪能していた。
「さわさん....
好きです
めっちゃ好きです
凄く愛してます」
唐突に陽光は何かを話し始めた。
思えば今日、陽光は素直に思っていることを話し続けている気がする。
きっと体調不良の熱によって心の壁が溶け、本音を余計な遠慮や配慮なしに話してくれているからだろう。
ただ、いきなりそんなことを間近で言われると...心臓がいくらあっても足りない。
さわは陽光の言葉に心は嬉しさを感じ、心拍数はみるみる上昇していた。
「ねぇ....さわさん」
そう言って陽光は、さわの膝からゆっくりと起き上がり、そしてさわの隣に座る。
「ん?」
そして真剣な表情をして、話し始めた陽光。
「なんで僕がこんなにもさわさんのことが...
好きなのか...知ってますか?」
真剣な雰囲気でそう語る陽光。
その言葉に一瞬ドキッとするさわ。
しかし向き合わなければと、さわも真剣な眼差しを陽光に向ける。
改めて陽光の表情が目に入る。
その表情は、
なぜだろう
少しだけ悲しそうだった。




