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私は地球人です!

本にダイブした………はずだった。



「………………」



痛い。とてつもなく鼻が痛い。

鼻血が出ているんじゃ?と疑うほどに鼻が痛い。

そもそも万年文化部。体育が五段階の評価で万年二の私が、転んだ時にとっさに手が出るはずがない。

無様にもベットから床に顔面からつっこんだ。

辛うじてぎりぎり間に合うか間に合わないかくらいの時に手が床に着いたとはいえ、勢いを完全に消すことはできなかった。

痛い。鼻がとてつもなく痛い。

けれど驚くべきことに鼻以外痛くない。

なぜなら本にぶつかることも、それによって積み重なった本が崩れ落ちてくることもなかったからだ。

驚くべきことに私は本にぶつからなかった。

それは私が本を華麗に避けることに成功したから………ではなく、本が私を避けることに成功したからである。

もう一度言おう。本が私を避けることに成功したからである。

誤字でも文法ミスでもない。

本が私を避けることに成功したからである。

私は見た。見てしまった。積み重なっていた本、一冊一冊が私を避けていく所を。

まるで紙を鳥の翼のようにして飛び、私が転んだ場所にスペースを見事にあけた所を。

そして本たちは今も私の上をばさばさと飛んでいる

そうまるで鳥のように、ばさばさと。

私の上を本は飛んでいる。

夢か。

最初にそう疑った。

だが、鼻の痛みにそれは違うと否定する。

こんな痛い夢があってたまるか。

ではこれは何なのか、それは四次元空間と同じようにやっぱり説明はできなかった。



「………え?」



呆然と飛ぶ本を見つめていると、突然床が光だした。

今度は何!?

慌てて下を見ると、よくアニメとか漫画とかで見るような円状の魔方陣らしき物が浮かび上がっていた。

最初光は小さな光だったのに、だんだんと光は強くなっていく。

そして眩しさにおもわず目を閉じたその時



「どなたですか?」



男の人特有の低いけれど澄んだ声が頭上から聞こえた。

突然の声に驚き、反射的に閉じた目蓋を持ち上げる。

光はすでに消えていた。

眩しいほどの光は一瞬だけだったらしい。

強い光を少しだけ直に見てしまったせいか、視界が白と黒に点滅していた。

チカチカする視界の中で私は目を閉じるまでには確実にいなかった一人の青年を見つけた。

突然現れた青年をおもわずガン見してしまう。

青年は茶色いローブに身を包み、染めているのか髪は普段そうそう見る機会のない白銀をしている。

一瞬目がおかしいための錯覚だと思ったが、しばらくたっても青年の髪は変わらず白銀だった。

ふいに青年と目があった………ような気がした。

断言できないのは青年の長い前髪と深く被ったフードのせいで下から見上げているのに、顔の上半分がよく見えないからだ。



「………あなたは……」



青年の息をのむ音が聞こえた。

どうやらひどく驚いているらしい。………驚きたいのはこちらだが。

突然現れるというマジックを見事やり遂げたくせに逆に驚かされるとか意味がわからない。



「あなたは………こちらの世界の方ではないのですか?」


「は?」



突然の意味不明な言葉に四次元空間も本が飛んだことも突然人が現れたのも全て忘れ、ぽかんと口を開く。

何を言っているのだこいつは。

しばらく、首を傾げて考え、はっとした。

そういえば昔同じようなことを同級生に言われたことがある。

当時小学生だった同級生は私の顔を指差しながら「やーい!やーい!宇宙人!そんな不細工が地球人な訳ねーよ!」と笑ったのだ。

つまりこの青年も「お前不細工だな。人間になんて見えねーよ」と言いたいのではないか。きっとそうだ!



「………私は普通に地球人ですけど」



とりあえず、反論しておく。

声に少しだけドスがきいていたのは仕方がない。



「………ちきゅう……?」



そんな、ありえないと言いたそうな声で青年は私の言葉をそう反復した。

なんだこいつマジで失礼だな。

顔はともかく他はどこからどう見ても私は人間の形をしているではないか。

たとえその問題の顔が千年に一度生まれるかどうかと称される、不細工具合だとしても!

青年は私の背中の後ろに浮かび上がっていく炎が見えないらしい。「そんな………」「でも、もう……」とかぶつぶつと呟いていた。

いったいなんなんだ。軽い放置プレイなのかこれは。

たまらず青年に声をかけようと口を開くと、音を発する前に青年に先を越されてしまう。



「あなたは………本当にちきゅう人………なのですね?」



まだ言うかこいつは。



「そうです。私は地球で生まれ!日本で生活している!!地球人!!!です!!!あなたと同じ人間ですよ!!!」



イラついたので語尾が少し、いや、大分強くなったが仕方ない。

誰だって「あなた地球人ですか?」なんて聞かれたらキレると思うんだ。

さあ!謝罪しろ!今すぐ私に謝れ!!と青年を睨む。

けれど青年が口にした言葉は謝罪ではなかった。



「ちきゅう人?私が?………いいえ、私は違いますよ。ちきゅう人ではありません。私の生まれは第三世界であって、第四世界ではありません」



は?第三世界?第四世界??なんだそれ?

ていうか地球人じゃないって、この人何言ってんだ??

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