第14話
久々に書きました!
短いですがどうぞ!!
「さて、勝負はついたから今度は理由を聞かせてもらうぞ、羽瀬川」
「わ、分かってますわ……」
「しかし何で理由を聞く為に、態々こんな所に来なければいけないのかが分からないんだが……」
試合の後に理由を聞くつもりだったのだが、羽瀬川が場所を変えると言い出して何故か今は人気の無い剣道場の裏口にいる。
始めは態々場所を変える必要なんて無いだろうと言ったんだが、羽瀬川がどうしても変えて欲しいと言って来るからな。理由を聞くだけでそんな必要は無いと思うが。
「まあ良いか。でだ羽瀬川。何でお前は今まで俺を剣道部に入部させようとしたんだ?」
「……………………」
「おい、何でそこでダンマリになるんだ?」
いつもは物事をハッキリ言う羽瀬川だと言うのに、何故にダンマリなのかサッパリだ。別人なんじゃないかと思うくらいに。
「そ、その……ど、どうしても言わないといけないのですか?」
「おいおい、今更それは無いだろうが。お前が条件を呑んだから俺は勝負したんだぞ」
「そ、それはそうですが……」
「分かってるならさっさと言ってくれ」
綾ちゃんの件があるからな。あの子が父さんに全て言ったのか気になる。
「………え、えっと……」
…………本当にどうしたんだコイツは? 言い辛いかのようにモジモジしてる上に顔を赤らめてるし。まさか俺を剣道部に入部させようとする理由って実は凄く下らない事じゃないだろうな?
「……あ、天城……。い、一度しか言いませんから、ちゃんと聞いて下さいね」
「何で一度しか言わないんだ? 別に理由を言うだけで……」
「とにかく! 一度でちゃんと聞くように!! いいですわね!?」
「は、はい!」
羽瀬川が突然大きな声を出して念を押してくることに、思わず俺は頷いてしまった。何で頷いてしまったんだろうか。たかが俺を入部させる理由くらいで。
「そ、それでは言いますわよ……」
「…………………」
一度しか言わない事を了承してしまったので、取り敢えず俺は一字一句を聞き漏らさないように静かに待つ。
「わ、わたくしが、天城を剣道部に入部させようとした理由は……」
「…………………」
「………お、同じ剣道部仲間として見過ごせないのも理由の一つになっていますが……」
いや、それはもう知ってるからな。と、突っ込みたいが今は敢えて何も言わないでおく。
「い、一番の理由は……」
理由は?
「…………そ、それは……~~~~~! そ、そんな静かにしながらジッと見ないで下さい!! 言えないじゃありませんか!!」
「………あのさぁ、お前が一度しか言わないって言うから、俺は静かに聴こうとしているだけなんだが……?」
おいおい羽瀬川さん。何を訳の分からん事を言ってるんだよ。俺が悪いのか?
「で、ですから今から言おうとする時に貴方が……!」
「あ~はいはい。もう分かったから、いい加減さっさと言ってくれ。見られるのが嫌なら後ろを向いて聴いてやるから………」
今の羽瀬川に下手な事を言うと口論になってしまうかもしれないので、俺は敢えて妥協し後ろを向く。
ったく。よく分からんが女って時々面倒だな。紫苑さんの場合は傍迷惑な事をするのがよくあるけど。
「これで良いか? もう文句は言わせないぞ」
「…………や、やっぱり前を向いて下さい」
「…………お前なぁ」
………何なのコイツ? さっきから矛盾してるんだけど。羽瀬川が一体何をしたいのかが全然分からない。
「羽瀬川。今日のお前は本当に変だぞ。て言うか、頼むから早く言ってくれないか?」
こっちは早く店に戻って綾ちゃんに色々と聞かなきゃいけない事があるんだから。
かと言って、後日に聞くなんて事になると、また面倒な事になりそうな気がするから今の内に聞いておかないといけない。
「わ、分かりましたわ。では……」
やっと意を決した羽瀬川が言おうとする。顔が未だに赤いままだが敢えて気にしないでおこう。
「あ、天城……わ、わたくしは……中学の頃から……そ、その……」
「…………………」
「一緒に剣道をしてる内に……す、す、す……」
「す?」
“す”の次は何なんだ? 早く言ってくれ。
「あ、貴方の事を――」
「ゴラァ~~~!! 幸せになろうとする悪い奴はどこだ~~~~!?」
「「!」」
羽瀬川が言ってる最中、突然聞き覚えのある第三者の叫び声が聞こえた。俺と羽瀬川は振り向くと、そこには穴が開いた紙袋を顔に被り、バットを持った男子学生――錬がいた。
「お前か~~!? 幸せになる奴は~~!」
「あ、天城! 何ですのアレは!?」
「…………錬。お前は一体何をやってるんだ?」
戸惑う羽瀬川を余所に、俺は怪しい格好をしてる錬に内心凄く呆れている。
何故目の前にいる怪しい格好をした男子生徒が錬であるかと言うと、見覚えのある赤髪と声で分かったからだ。それに加えて、こんなアホな事をするのは錬以外に考えられないからな。
「お、俺は鬼灯錬ではない! 通りすがりの幸せクラッシャーだ!」
「………苗字を言った覚えは無いんだがな」
ってか“幸せクラッシャー”って何だよ。訳分からんぞ。
「と、取り敢えずだ天城修哉! 羽瀬川に告白されて幸せになろうとする貴様を俺は許さん!」
「!」
「告白? 何の話だ?」
俺は羽瀬川に剣道部に無理矢理入部させようとする理由を聴こうとしているだけだが。
「とぼけるな! お前が羽瀬川に告白されるのはもう分かってぶげらっ!」
「な、な、何を言ってますか貴方は~~~~!!」
不可解な事を言ってる錬に羽瀬川が黙らせるかのように、持っていた竹刀で錬の頭を叩く。
「ちょ、ちょっと待ってくれ羽瀬川! 俺は修哉に用があってだな!」
「貴方はさっさとこの場から去りなさい! 人が今やっと言おうとしてたのに……!」
「痛い痛い痛い! 言おうとしてたのって……お前やっぱり修哉に告白するつもりで……」
「!!! い、今聞いた事はすぐに忘れなさ~~~~い!!!」
「ぎゃあああ~~~!!! すんませんでした~~~!!」
錬は羽瀬川からの竹刀攻撃に負けて逃亡していった。アイツは一体何がしたかったんだ?
「はあっ……はあっ……はあっ……」
「……………え、えっと……取り敢えずお疲れさん」
いきなりの展開に俺はどう言えば良いのか分からなかったが、一先ず錬を追っ払った事に感謝しないとな。
「ところで羽瀬川。さっき錬の奴が告白とか何とか言ってたが……一体何の話し――」
「天城!」
「な、何だ?」
「この際ですからハッキリ言います! ちゃんと言いますから聞き逃さないで下さい!」
「お、おう……」
何か羽瀬川がヤケクソみたいな感じがするな。と言うか、いつもの羽瀬川に戻ったみたいだ。
「わ、わたくしは……………あ、貴方が……」
俺が?
「い……以前から貴方の事が好きで一緒に剣道をやろうとしていたんです!」
………………はい?