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第24話 夕食が消えた

 空室の客室を案内すると、クローリは部屋を見渡してベッドに腰を下ろした。


「なかなか良い部屋ね。気に入ったわ」

「それはどうも。夕食は出来上がったら呼ぶから休んでいなよ」


 ヒスクは部屋を出ようとすると、クローリが呼び止める。


「ちょっと待って。これは宿代よ」

「いや……こんなの受け取れないよ。宿代を取る気はないからね」


 クローリは金貨二枚を差し出すと、ヒスクは丁重に断った。

 魔王なら素直に受け取っておくだろうが、ヒスクは親切心で彼女を泊めてあげようとしただけなので、金銭を要求する気はなかった。


「あら? ヒスク、おかえりでしたのね」


 お隣の近所に顔を出していたキュールが帰って来ると、クローリは目の色を変えて客室を飛び出すと、玄関先でキュールと鉢合わせた。


「これは驚いた。こんなに可愛らしい女の子を養っていたなんて」

「えっと……どちら様でしょうか?」

「これは失礼。私は決して怪しい者ではないわ。魔術の名門ヴィラール家の天才魔術師として活躍するクローリ・ヴィラールよ」


 自信に満ち溢れた自己紹介をするクローリにキュールは困惑した表情を浮かべる。


「その様子だと、私がヴィラール家の人間ではないと疑っているわね。こんな村に天才魔術師が訪れている訳がないと思うのは無理もないわ」


 ヴィラール家云々よりも、単純にクローリが怪しい人物に映し出されているだけだ。

 ヒスクも玄関先で合流すると、キュールにはクローリは客として招いた事を説明すると納得してくれたようだ。


「これは失礼しました。私はキュールと申します」

「キュールちゃんね。素敵な名前じゃないの」

「ありがとうございます。夕食の仕度を整えますので、クローリ様は部屋で休んでお待ち下さい」

「クローリでいいわよ。私も料理を手伝ってあげるわ」

「ですが……」

「遠慮しなくていいの。さあ、一緒に作りましょう」


 半ば強引にクローリは料理を手伝う事になると、助けを求めるようにキュールはヒスクに視線を送る。

 ヒスクは無言で頷いてみせると、キュールは了承してクローリと共に台所へ向かう。

 キュールに面倒事を押し付けるような形になって心苦しいが、ヒスクは自室に戻ってロシェから借りた小説の続きを読んで時間を潰した。

 しばらくすると、教会から腹の虫を鳴らして魔王が帰って来た。


「ただいま。キュールちゃん、今夜の夕食は何だい?」


 ウキウキな気分で夕食の献立を聞く魔王だが、キュールの返答は弱々しかった。


「マオ、おかえりなさい。今日の夕食ですが……ないです」

「あれ? キュールちゃんって冗談を言える子だったかなぁ」

「残念ですが、本当です」


 ヒスクは夕食の時間を見計らって居間のテーブルに姿を現すと、魔王が固まったまま台所を見つめていた。


「ああ、おかえり。片付けご苦労様」

「信じられない……今日の夕食がないなんて」


 まるで、この世の終わりみたいな雰囲気で言葉にする魔王はヒスクに振り返る。

 状況が呑み込めないヒスクは首を傾げると、台所から焦げた臭いが充満していた。


「わ……私は肉を焼こうとしただけよ!」

「これは一体……窓を全開にして!?」


 ヒスクとキュールは窓を開けて空気を入れ換えると、次第に焦げた臭いは消えていった。

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