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第23話 研究内容

 クローリは何事もなかったかのように、先頭を切って歩き始めた。


「お姉さん達! 突っ立ってないで、案内をお願い」


 自由奔放と言うか、わがままな性格の持ち主だ。

 ヒスクは着衣を整えて落ち着くと、胸と下腹部に手を当てられた感触が抜けきれない。

 魔王はヒスクの手を握ると、心配して声を掛けてくれた。


「大丈夫か?」

「ああ、不意打ちだったからびっくりしたよ。まさかあんな事をするとは思わず……衝撃で声が裏返ってしまった」

「意外と女子っぽい反応だったぞ」

「からかわないでくれよ」

「ははっ、すまん。必要なら肩を貸すけど、歩けるか?」

「何とかな。もたついていると、あのお嬢様に文句を言われそうだ」

「俺は遊具と部屋を片付けてから戻るよ、あのお嬢様の相手を頼んだ」


 魔王を残して、ヒスクは待ちくたびれているクローリの下へ歩き出す。

 道中、ヒスクは自身の自己紹介をしてなかったので簡単にすませる。


「私はヒスク・マクシャルだ。よろしくね」

「ヒスクね。さっきのお姉さんはどうしたの?」

「マオは教会の掃除をしてから合流するよ」

「ふーん、マオって言うんだ。そうなんだ……一つ訊ねてもいいかしら?」

「どうぞ」

「ヒスクはマオと付き合ってるの?」


 ヒスクは一瞬、足元がふらついて転げ落ちそうになる。

 この子は急に何を言い出すんだ。

 先程の件もそうだが、クローリの常識を疑ってしまう。


「彼女は古くからの親友で、特にそれ以上の関係じゃないよ」


 傍から見たら、そんな感じに見えていたのかとショックだった。

 ヒスクは本当の事を話すと、クローリはヒスクの目をじっと見つめて何かを探り出そうとしている雰囲気だ。


「それは勘違いして、ごめんなさいね。この村には長いのかしら?」

「最近、引っ越して来たんだ。マオも同時期に引っ越して再会を果たした時はお互いびっくりしたよ」


 正確には召喚されて再会を果たしたのだが、魔界から人間界に引っ越して来たのは事実だし表現は間違っていない。


「クローリはあの街に住んで長いの?」

「別に長くないわよ。あの街に構えていた研究所は引き払ってしまったし、新たな拠点探しの候補として、この村に目を付けたの」

「へぇ、そうだったんだ」


 ヒスクとそんな大差ない年齢で独立して研究所を構えているとは驚いた。

 黒いローブを着込んで研究所と察するに、魔術関連の研究でもしているのだろうか。


「どんな研究をしているの?」

「ふふっ……私の研究に興味があるようね。ヒスクも気付いているとは思うけど、私は魔術分野で名門のヴィラール家の人間よ。私が主に専攻している分野は召喚に関する魔術よ」


 別段、そこまで興味はなかったのだが、クローリは饒舌に語り出す。

 残念ながら、魔術方面には疎いヒスクはヴィラール家と言われてもピンとこない。

 現状で分かっている事は、クローリが高飛車な性格で研究所を構えるだけの資金源があり、お金持ちのお嬢様である事だ。おそらく、魔術分野で名門の家系であるのは本当の事だろう。


「街の研究所を引き払ってしまったのは何か理由があるの?」

「よくぞ聞いてくれたわ!? 私が召喚の儀式で、ちょっと失敗しただけで住人から苦情が殺到したの。それで余儀なく、別の場所で研究所を建てても問題ない場所を候補として探していたら、この村を見つけたのよ」


 魔王を召喚した現場を目撃しているし、その魔王から召喚はリスクを伴う事を聞いているので、クローリと街が無事なのは幸いだった。

 そんな理由なら、追い出されても文句は言えないだろうし、召喚自体を止めさせないと、この村が滅ぼされてしまうかもしれない。


「召喚は危険だよ。危険な魔物を召喚してしまったりしたら大変だ」

「一般的な魔術師ならそうでしょうが、私は天才魔術師よ。安心しなさい」


 どこからそんな自信が湧いてくるのだろうか。

 ヒスクは根気よく説得を試みるが、クローリは聞く耳を持たない。


「危険だからやらないと言う選択肢は気に入らないわ。たしかに召喚魔法は未知の部分が多い分野で危険な魔法だけど、危険を恐れて研究を放棄したままにするのはよくないわ。魔術の大半は地道な研究を重ねて解明してきた魔術師の努力と叡智があったからこそなのよ」


 魔術に関する熱意は評価するが、失敗して取り返しがつかない事態になってはたまらない。

 召喚を止めさせる説得は諦めて、ヒスクはクローリに提案を持ち掛ける。


「じゃあさ。ここで研究所を構えるなら、私とマオが召喚の場に立ち会って同席するよ」

「別に立ち会わなくても……」

「召喚に必要な素材を集めたり、協力できる事は色々とありそうだからさ」


 召喚の場に魔王も立ち会えば、少なくとも村が消滅するような事態は避けられるだろう。

 クローリはその場で考え込むと、ヒスクを一瞥して口を開く。


「そうね……助手も欲しいところだったし、お願いしようかしら」


 助手になる許可をもらうと、自分の家に到着してヒスクは玄関先の扉を開けて、クローリを招き入れた。

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