29 お誘い。
もう名刺は要らないと破き捨てる。
翠と主従関係を無事結んだし、ちょっと一息つく。
いつものように登校して、席について、満足気な翠を眺めて和む。やっぱりマイナスイオン的なものを感じる。気のせいだと思うけれども。
「おはようございます、小紅芽さん、翠」
「あれ、早いね。おはよう、狼くん」
みやちゃんより早く来たのは、狼くん。
驚いていれば、目の前に立った。
「今週の金曜日の放課後は空いていますか?」
「え? 皆とお仕事する用しかないけれども」
魔界から来る妖を追い返すお仕事だけ。
すると、腰を曲げて狼くんは顔を近付けた。
「二人だけで、映画を観に行きませんか?」
そう囁かれる。
「ふ、二人で……?」
「はい、二人です」
「まるでデートみたいだね」
「はい、デートです」
優しげな翡翠の瞳は、私を見つめてはっきりと告げる。
にこり、と微笑む。
「……」
私は唖然とした。
「……だからそういうこと言ったら、女の子は勘違いしちゃうよ?」
「勘違いしてもいいですよ」
狼くんが微笑みを崩さない。
「あのね、狼くんが勘違いしているみたいだから言うけれど、私他の女子と同じだからね?」
立ち上がって言ってやる。
「狼くんの顔好きだし、頭がいいのもスポーツ万能なところもかっこよくって、普通に好きだよ!? それでも勘違いしてもいいって言えるの!?」
思いの外、声が教室に響いてしまった。
狼くんは目を大きく開いて、固まる。
私も告白したも同然な発言をしてしまったと固まった。
「では両想いということで、デートをしましょう」
そう狼くんが、さっきよりも笑みを深める。
「……はい」
「じゃあ詳細はあとで決めましょう。あ、雅達には内緒ですよ?」
「……はい」
私に言ってから、狼くんは教室の中を一瞥した。
そして私の教室から出ていく。
私はストンと席に腰を下ろしてから、机に突っ伏した。
あとからみやちゃんが入ってきたけれども、何言っているかさっぱり耳に入らなかった。
end
あとがき。
はいここでおしまいです!
途中バトルものになって、どこいくんだこの物語っ!!
って思いましたが、無事落ちた、と思います。
男の娘のみやちゃんに「僕も男だよ?」的なセリフを言わせたかったのですが、友情endでいいですよね。異性でも親友endでいいですよね。ね?
ここまで読んでくださりありがとうございました!!!