↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

2章 4つの星と暗黒雲

2章


⑴

木曜日の朝5時、望海はいつも早起きをしてのランニングが日課になっている。ここ数日までの冷え込みに比べて今日は朝から春の暖かさに溢れていて、走っているととても気分が良くなる。

太陽の恩恵は色々な所で感じられるが、この温もりに関しては科学を得意とする俺であっても科学的ではない何かを考えさせられる。

望海の家は、学校から1キロほどの所なのでランニングコースは学園の外回りを使っている。この時間帯では関係者の目もなく、外からでも十分に中の様子を伺うことができるが、外周をたどるように電圧線、監視カメラ、赤外線監視システムなどがびっしり張り巡らされているように見える。

(でもこのシステムってなんか頑丈に見せてるだけって感じだよな…。)

実際は、この柵の向こうには地面全体に把握センサーが敷かれていたり、学園を中心として私有地内全てを中央棟からの電磁力センサーでの監視などの本命が大量に仕掛けられている。以前、校舎内の設備を確認したことがあったので望海からすると大抵の不審者であればお縄にかかるだろうと考えていた。

すると、突如前方から複数の猫らしき動物が山の中にはいって行こうとするのが見えた。見た目では普通の猫に見えるが、何処か動きに生き物っぽさに欠けている。思考する間も無くそれを見た瞬間、望渼は足元の石を思いっきり投げつけた。バチッ、という機械の故障音が響くと煙を上げて止まったのだ。

(動物の毛皮を被ったロボットか…。それに、ここまでの隠密性能なら想定外だろうな。)

望海が破壊したのは、高性能の潜伏探知に特化したロボットだった。ステルス性能などから明らかに学園への侵入を目的にしているものらしく、先程目視で確認できたのは三体だったので二体は侵入したようだった。

望海は、ポケットからケータイを取り出す。表示された画面には、猫型のキャラクターがしっぽ揺ら揺らしながら眠っていた。そのネコに向かうようにマイクに向かった指示を出した。

「おーい、今さっき学園敷地内に入った小型物体の探索と出来るならハッキングまでお願いできるか?恐らく二体は目視できたけど一応全部確認しておいて。」

『むにゃ〜…。わかったにゃけど、ちゃんと上手く行ったらなんかくれにゃ!』

「おいおい、AIのくせに生意気すぎんだろ…。」

『そんじょそこらの石頭ロボと一緒にすんじゃないにゃっ!!』

「はいはい、わかったからよろしく頼むよ。」

するとホーム画面のネコは探索アイコンに向かい、画面から消えた。望海はケータイをしまうと、家でネコが帰るのを待つために、止まる前より早く走り出した。


家のドアを開けるとそこには人形型のネコがお出迎えしてきた。

「って、幾ら何でも早すぎなんじゃないか?」

「ニャー、わての腕をなめるでないにゃ。でもあまりに逃げ足が早すぎて本体は取り逃がしちまったにゃ。褒美は諦めるがにゃあ…。」

こいつの探索能力は相手のレベルを測る指標にもなるのだが、基本スペックはかなり高いので逃れた相手はかなりの強者らしい。

「じゃあ、今度は1日学園の管理システムに潜り込んで情報収集頼めるかな。煮干し置いていくからさ。」

『煮干しにゃっ!!!よろこんでやるにゃ!!』

「そーいやお前味覚認識機能なんて付けたっけ??」

『お前さんの飯食ってるの見たら羨ましくって自分で作ったにゃ。じゃあなんかあったらまた連絡するにゃあ〜。』

話をしながら自分で作ったはずなのに、本当の生き物のようだと思ってしまう程に多様な成長に感心しつつ、パソコンを切るとトーストを食べ切り遥希達と学校に向かう為、支度をして出ることにした。


⑵

二時間目終了のチャイムが鳴った。この時間は席が一番後ろの窓側で、横には転校生のスバメと前に180センチ程の大柄な人が座っていたため、金髪に見惚れたり、熟睡してしまっていた。この授業を全く聞けなかった三ツ葉は、ノートをどうしようかと考えているとケータイの音が鳴り響いた。見てみるとメールが2通届き、望海と遥希が昼食に少し遅れるらしく、

「全く…、なんでタイミング悪く連絡しようとした相手からくるかなあ…。」

「あの…、大丈夫ですか?」

「えっ、私しゃべってた??」

「思ってることが勝手に出る事ってありますよね。もし良かったらノート見ますか?」

「えー!いいのー!?じゃあがたく見させてもらいます。」

三ツ葉はスバメに見とれていた事はさすがに恥ずかしかったので言わなかった。だがスバメは満面の笑みで答えてきたので逆に辛くなり沈黙が続いてしまう。すると今度はスバメが真剣な面持ちで質問してきた。

「そう言えば、ハルキ様という方を知りませんか?昨日のお礼を改めてしたいのですけど会えてなくて…。」

「ん?ああ、遥希に会ったのかあ。それならこの後一緒にお昼食べようよー。遥希達と屋上で食べる予定だったからちょうどいいし。」

「えっ…でも、突然伺ってもいいんですか?迷惑になるんじゃ…」

「そんなこと無いって。お弁当無くても今日はでっかい弁当があるから問題ないしねー。」

(…まあ近いうちに連れて行きたかったからちょうど良かったかな。)

「は、はい…。分かりました。」

スバメは何かが気にかかる様子だったが、三ツ葉は早速屋上に二人で向かうことにした。


学園の屋上は、小さな公園ほどの広さがある。生徒向けに自由に解放されているのだが、昼休みは学食に人が流れてるので落ち着いて話すことができる。実際、三つ葉たちがついた時には生徒は誰もいなかった。

「やった!私たちで貸切だね。」

「ここは、見晴らしも良いし草木も多いから気分が良いですよね。」

二人は、園内の隅にあるベンチに行くと三ツ葉が弁当を出して先に食事する事にした。

「じゃーん、三ツ葉ちゃん特製三段弁当でーす!」

三ツ葉は自慢げに開けた弁当の中身は、豚肉の生姜焼き、おにぎり、唐揚げ、肉じゃがという、超スタミナ弁当だった。

「す…凄いボリュームですね…。」

「いやー元々遥希達と話する予定だったし、屋上に誘ったのが私が誘ったから弁当付の条件で呼んでたんだ。でも2人がよく食べるから二人用にべつでつくってきたんだよ。」

「これからいらっしゃるのは、ハルキさんとなんて方なんですか?」

「これから来るのは同じクラスの遥希と、望海っていう理科オタクなんだけどね。幼なじみで最近よく昼に集まってるんだよ。」


「…おーい、誰が理科オタクだって?」

「良いじゃん。実際に望海は博識なんだしさあ。」

「ちょっと、二人して遅すぎでしょ…。せっかくスバメちゃん来てるのにさぁー。」

すると、望渼と遥希が三ツ葉たちの会話に割って入ってきた。

「お、例の転校生さんか。初めまして。科威 望海って言うんでよろしくね。」

「はい、スバメ ハワードっていいます。スバメって呼んでください。よろしくお願いします。」

初対面で恥ずかしいのか、ぎこちなく挨拶をして今度は遥希に向かい、

「ハルキさん、昨日は有難うございました!ちゃんとしたお礼もできずにいたので会いたかったんです。」

「あー、昨日はさっさと帰っちゃったからね。大したことはしてないよ。」

「なに遥希、まさかもうナンパしたのかよ?」

「そうじゃないよ、なんか得体のしれない奴に追われてて、ちょっかい出してきたから追っ払ったんだよ。」

「そっ、そうですよ!わあ私はお礼を言いに来たんですっ!!」

「ごめんごめん、にしてもスバメちゃんを追っかけるだけならとにかく、ちょっかい出してくるなんてねーっ。」

「おいおい三ツ葉…息が荒いしスバメが怖がってるよ。」

「そういう望海も、可愛いと思うでしょー。」

「うん、そう思うよ。」

真顔で迷いなく答えたので、スバメが固まってしまった。

「とにかく、スバメは昨日、あの後何かあった??」

「…いえ、とりあえず昨日は何もなかったです。」

すると、遥希は電話が来たので一旦会話から抜けた。そして今度は望海から質問してきた。

「もしかして、ここの所毎日続いてんじゃないの?」

「えっ…!どうしてそれを…?」

「一週間前あたりから、学園の周りに見慣れない人影が増えたんだよ。目的が読めなかったからシカトしてたんだけどさ。」

「スバメちゃん何もなかったの??」

「昨日まではずっとストーキングだけだったんです。なのに昨日突然、矢みたいなものを二、三本うってきたんですよ。そしたら遥希さんが助けに来てくれたんです。」

「遥希の奴もよく変な場面に鉢合わせするわよね…。」

「多分だけど今日の帰りも気をつけたほうがいいだろうな。」

すると、電話している遥希から声がかかった。

「おーい、そこから真上に何か見えるか??」

望海達は言われるがままに見上げると上にはヘリコプターが1機飛んでいるのが見えた。

「……ヘリコプター??」

「おい三ツ葉!、今すぐスバメ連れて影にはいって!!」

望海に声を掛けられた二人が席を立った瞬間、すぱぱぱぱぱっ、という小さな破裂音とともにヘリコプターからの攻撃が向けられた。間一髪の不意打ちから逃れると、ヘリコプターがまた射程にこちらを捉えている。

「みんな無事か!?」

「私とスバメは大丈夫だよ。望海も大丈夫?」

「遥希こそ人の心配しないであれ落とすの手伝えよ!」

「わかってるって。10秒立ったら好きにしてくれてオッケーだよ。」


「あの…今、落とすって…?」

「まあ、あの二人ならなんとかなるでしょ。」

そして、きっちり10秒後に二人は同時に動き出した。

遥希はその場で手をパチンと叩いた瞬間、周りの空気が変わる。すると、上空を進んでいたヘリコプターがピタっと前進が止まっていた。今度は、望海が敷地内ギリギリまで走り出すとポケットから球状の装置をとりだして思いっきりヘリコプターに投げつけた。

「トラ助!!煮干し10匹で窒素冷却で落としてくれ!」

『了解にゃー!煮干しにゃーー!!』

ケータイからの声の後に望海が投げた装置から足が生えてきて、足の吸盤が三機全ての側面にに張り付いたのだ。

直後、大量の煙が放たれてヘリコプターは機能が停止。そしてそのまま公園の中に墜落していく。

「あ、あの一つこっちに来てませんか…?」

「うえっ、彼奴らはこっちのことをもっと考えてやってほしいわよ。」

今度は三ツ葉がその場から駆け出すと、墜落してくる飛行機に勢いよく飛び出していった。

「乙女に後処理させないでよねっ!!!!」

そして最も接近した所でタイミングよくかかと落としを機体に叩きつけた。機体の軌道は大きく逸れ、学園内の池に向かって落ちていき、大きな水しぶきを上げて墜落した。


「あれで三ツ葉は自分を乙女というんだから恐ろしいやつだよ。」

「俺はあいつに技かけられる度に思ってるけどね。」

スバメが一人でぽかーん、としていると二人の平和そうな声が頭に入って来た。

(この人達、何者なんでしょうか…。普通の人には見えないですし…。)

「スバメちゃん、怪我はない?」

「はい、だいじょーぶです。三ツ葉さんこそ…大丈夫なんですか?」

「まあこれでも普段から鍛えてるしたいしたことないって。それより、二人ともスバメちゃんに何かあったらどうするつもりだったのよ…??」

「今回は望海のミスだろー。」

「だって三ツ葉がいたし、壊すよりも落として相手探ったほうがいいかなって…。」

「扱いがひどいでしょうが…。まあ確かに上に飛んでるのはどうしようもないけどさ…。」

「とりあえず俺は落ちたヘリを見てくるから三つ葉と遥希はスバメを頼む。」

それだけ言い残すと、望海は校舎に戻っていった。スバメはまだ、何が起こったかちゃんと把握できてない様子だったが、三人の平凡な空気にのまれて考えるのを忘れてしまう。

「まあこの感じだとまたきそうだよね…。そういや、スバメちゃんの家って2丁目だよね?」

「よし、それなら帰りも一緒に帰ろっか。その方が何かあっても大丈夫だろうし。」

スバメは正直また巻き込むのが申し訳ないと何度も言ったが二人はもう巻き込まれたも同然だろう、と結局放課後に昇降口に集まる事にしてスバメを教室まで見送った。


⑶

3限のチャイムが鳴った時、三人は屋上に集まっていた。さっきの襲撃に関しての情報共有がしたいと望海から話があったので手がかり探しにやって来ていた。

「おそらくさっきのヘリは、ATSの研究用偵察機の改良型みたいなんだ。」

「ATSって、先端科学の研究機関だよね?」

「アーク・テクノロジー・ソサエティー。名前はアークを名乗ってるけど、実際は日本科学機関が名前を変えただけの気後れ機関なんだよ。アークの技術が国と一端の法人に占有されているのが気に入らないらしくて最近は変な動きが多いんだよ。ほんっとに、頭の働かない集団なんだけどさ…。」

「望海ってこういう話するときっていつもこうよねー。」

「んで、そこの改良型って事は独断犯行って事?」

「いや、最初はそう思ったんだけど、よく考えると実は朝方ランニングしてる時にも怪しいロボを捕まえたんだ。そっちは論文で見たことがあった技術だから誰の仕業かはわかるんだけど、そいつはATSの理事にいたはずなんだ…。だから独断にやってるとは断言できないんだよ。」

「ふーん…。そういや、遥希の方はなんか気になった事ないの?」

「昨日の放課後きたのは三人だったけど一人はなんか感じが違ったんだよなー。多分、遥希の言ってる方の人は二人だったと思うし、スタンガン落としてったから誘拐するつもりだったんじゃないかな。」

「そのあと一人はだれなんだ?」

「…いや、そっちは俺の方で見ておくから大丈夫だと思う…。まあ、とりあえずこのままスバメからは目を話さない方がいい気がする。」

そう言うと、少し気になることがあると言って遥希はその場を去った。

「じゃあ明日以降は暫く私が一緒に帰ることにすればいい?」

「三ツ葉が居てくれるなら有難いんだけど…何してくるか分からないから準備はしておいてくれよ。できれば、金属以外なら安心だと思う。」

「ふーん…、分かったよ。じゃあ私はちょっと道場行ってくるねー。」


三ツ葉と別れた望海は正直、頼んだ事を少し後悔していた。

『にゃーにゃー、望海は三ツ葉ちゃんに任せてよかったんか??』

「本当は自分でどうにかしようと思ったさ。でも、もう昔みたいに一人で背負っても無駄って事はよく分かってるからね…。」

『三ツ葉ちゃんはとにかく遥希殿はどうしてにゃ??』

「幼馴染だからってのもあるけど、一番は自分の立場を無視しても近くに居てくれる事かな。あいつらには去年の事を伝えて無いけど、遥希に関しては言わなくても全部ばれてる気がするしね。」

『遥希殿はどんな人なのか全く分からないんにゃ。』

「俺だって知らない事だらけだよ。さっきのヘリだって空中で止めるなんて科学的な現象としては見たことないからね。でも、三ツ葉も含めてお互いがどんな奴でも認めあって今日まで来れてるし、時間が経てばわかる時が来ると思うよ。」

望海はトラ助と話しながら、改めて二人との繋がりに不思議な感覚を持ちつつ、トラ助にも逆に質問してみた。

「そういうお前もAIにしては出来過ぎだし、謎も多いんだぞ…。」

『わいはトラ助だにゃ。トラ助以外でもなんでもないにゃー。』

そこが疑問なんだけどなぁ…と思いつつ、この時間の授業が終わるまでは、平和を感じながらのんびり散歩に行こうと一旦校舎を後にした。


同じ頃、遥希は昨日スバメと遭遇していた茂みにやってきていた。昨日、遥希が防いだ飛び道具があればと探しに来たのだが1日経っていたので見つけるのは至難の技だ。

(鼻が効くのは犬だよな…)

そう考えた遥希は周りを確認してから目を閉じ、

「…大権現イザナギ様の名の下に、我、神々の力を貸し給へ…。」

その瞬間、ばふっ、と目の前に袴を纏った柴犬?が出てきた。

「あや?遥希様ではないですか!!どうして神様に口上なさったのですか?」

「しばらく呼び出すことはないと思ってたからさ、使いを呼び出せる護符とか一式手元になくてね…。久々だったから緊張したわ。」

「そんなことおっしゃらず、気軽に呼んでくだされば良いのですぞ。わたくしは現在、遥希様の直属のようなものですし。」

「そっちは、大丈夫なの?」

「最初はかなり問題になっていましたが今は割と落ち着いております故、お気になさらないでくださいな。」

「…わかった。それで頼みなんだけど、ここらら辺で昨日諍いがあったんだ。それで、手がかりが欲しいんだけど物的証拠は見つかりそうもないんだよ。」

「では、匂いを探って探りを入れればよろしいでしょうか?」

「ついでに霊痕も確認してくれると助かる。ないことを祈りたいけど、念のためにね。」

「この駒、確かに承りました!『ツクヨミ式・霊捜痕占』」

駒は術を唱えると一瞬、大きな視線を感じる。この術は規模がでかいので霊感の強い生き物であれば恐怖を感じるほどの偵察術である。

「残留思念と怪しげな人が複数ありますけど、今のところは霊的痕跡は…一つだけすぐそこの池の中に有りますね。」

池は先ほど三ツ葉が蹴り落としたヘリコプターの墜落現場で元々水が多くなかったので簡単に見つけることができた。

「やっぱり…、望海の言う輩じゃない、こちらよりの人間も顔を出してやがる…。」

「前回の件はあれで一旦落ち着いているはずではないのですか!?」

「おそらく狙いは俺らじゃないんだよ。多分もう向こうはスルーして次に行く判断になったのだろう。でも、その標的は知り合いだったんだ。」

「遥希様は如何なさいますか?」

「まあ、いずれこうなるとは思ってたし、また一から頑張るしかないでしょ。また、賑やかになりそうだな。」

「遥希様の仰せのままに頑張らせていただきます。ところで、琴美様は聞くまでもないでしょうから、ケン殿とヴァラン殿は元気にしていらっしゃるのですか?」

「兼なら今頃琴美と一緒にいるから大丈夫だろうし、ヴァランは呼べば来る程には元気だよ。」

「そうですか…フフッ、また会えるのが楽しみでございますよ。」

「とりあえず明日からまたよろしく頼む。あと、ありがとね。」

「もったいなきお言葉に感謝でございます。それではまた!」


一旦、スバメを送った後に自宅に戻った三ツ葉は隣にある道場にむかっていた。細い路地を抜け、裏側の門から戸を開けて中に入る。そこには小物の短刀からヌンチャクなどのありとあらゆる武具が保管されていた。

三ツ葉の家系は元々武芸者の家系で、そこから生まれたのが我流武道の「武天道」だった。武芸者だった先代は多種多様の道具を使い戦に向かったという。それ故に、基本的な近接戦に加えて様々な道具を使いし敵を欺くというのが武天道の信念になっている。

「わたし的にはいつもの小手両刃が好きなんだけど…望海に言われた通りに選ぶなら別だよね。」ふと顔を上げた時、正面に一つの杖が置いてあるのに気がついた。以前に貰い受けたものでここに閉まってたのだが、そこの周りだけは空気の流れが明らかに異なる時間を流れているかと思える程の異様な存在感を放っている。

(これを使うのはまだ…私には使えないよね…。)

一瞬迷ってすぐにその思考を止め、近くにあった三段式の杖を取り出して学校に戻ることにした。「…いつかあれを使わなきゃいけない時が本当にくるんですよね…。」

「だーれに話しかけてんのかなぁ〜?」

「ぅあっっ!お母さん!?どうしたの突然??」

「いやあ、こんな時間に突然戻ってきて早々にここに向かったから気になって見にきたのよ。そしたら随分と乙女な顔をした三ツ葉ちゃんがいたもんでねえ。」

「はぁー。余計な心配はいいからさ…、とりあえずこの三段杖借りてくね。」

「構わんけど、昔から言ってるように変なことに使うんじゃないよ。」

「ちょっくら、女の敵を追っ払うのに使うだけだよ。」

「それなら、とことんぶちかましちゃいなさい!!」

至極真っ当なリアクションなお母さんの応援を背に今度こそ遥希と会うために再び学校に向かった。


⑷

午後3時、今日は午後の授業が早く終わる日なので予定通り昇降口に集まっていた。四人は前に三ツ葉とスバメ、後ろに遥希と望海という並びで歩いているが、側からみてもただの登下校している学生にみえていた。しかし、正門前では例のストーカーらしき人たちが見えたので学生の集団に紛れて上手く巻くことができた。

「とりあえずさっきの奴らはきてないみたいだから一安心かな。」

「本当にすみません。なんか護衛みたいなことしてもらっちゃって…。」

「違うよスバメちゃん、ただ一緒に下校してるだけなんだから気にすることないでしょ。」

そのまま歩いて行くと正面に川に架かった橋が見えてきた。そこで望海からの質問が飛ぶ。

「なあ。引っ越す前からさっきの奴らが付け回してるって話だけどさ、そもそもなんでこっちに越してきたんだ?」

「以前はお母様と住んでいたのですが、急にお父様から連絡があって今年の春からこの学園に編入してくれと言われたんです。」

「もしかして住んでいたのは横浜の近くじゃない?」

「えっ!どうしてわかったんですか?」

「恐らくATSからスバメのお父さんになんらかのアプローチがあったんじゃないかな。あそこの本部が横浜にあるからまだ学園の方が安全だと考えて無理矢理入校許可を取ったんだと思う。」

「でも結局、学園にも追っ手は来たじゃんか?それならかなりの情報統制をしてるきがするけど…」

「学園のサーバにセキュリティーホール作るウイルスをメールで転送してこじ開けたみたい。ここまでの行動力の早さからしても、本部からの攻撃と見て違いないよ。」

「細々したことばっかり…。相当度胸のない野郎なのね。」

「取り敢えず、今日のうちに両親と一旦連絡を取ってみてくれるかな。話すことは大した事じゃなくていいから。」

「わかりました。確認出来たら望海さんに連絡した方がいいですか?」

「いや、多分盗み聞きされるのがオチだから、終わったパソコン開いて待ってて。」

「…パソコンですか?でもそれでメールしても同じなのでは??」

「大丈夫、こっちから取りに行くから。家ってここじゃなかった?」

話しているうちに何事もなくスバメの借りているマンションに到着した。時間としてはまだ4時前でこの時期はまだ明るいが部屋からは出ないようにと忠告をして三人はスバメと別れた。


マンションの入り口まで戻ってきた三人はこの後の予定を話していた。

「この後どうする?結構時間あるけど…。」

「内の神社よってかない?昨日、近所のおばさんからケーキを幾つかもらってるからたべれると思うよ。」

「ほんとーー!?!?じゃあ、一仕事終わったら行きますか!」

「遥希、さっきの奴どこにいるんだ?途中まで明らかにつけて来てたのを止めたのってお前だろ?」

「あ、やっぱり気づいてたかぁ。さっき通った橋のしたに寄せてあるよ。」

「どうやったら一緒にいながらそんなことできるのよ…。」

「と…とりあえず見に行ってみよっか。」

明らかに誤魔化した遥希は置いといて、三人は急いで先ほどの川まで戻る。到着してみると、そこには望海が以前遭遇した猫型ロボットがあった。

「やっぱり、この間の学園に入ってたやつと同類だな。」

「それって朝、望渼が見たってヤツなの??」

「うん、それはそうなんだけどなあ…。少し中身開けてみないとなんとも…。」

「あの、お二方…ここでお知らせが。」

「何?」「何なのよ??」

「なんか…あと20秒ほどで吹っ飛びそうなんだけど…。」

「はあ〜〜!?!?」「ちょっ、先に言いなさいよそれー!」

すぐに望海が、中身を確認して頭部に何かを見つける。

「超小型プラスチック爆弾だ!半径30mは吹っ飛ぶぞ!」

「三ツ葉、今すぐ上空までそのロボットを蹴っ飛ばして!」

「ちょっと!二人とも!!それで蹴っ飛ばした瞬間ボカン、ってことは無いでしょうね!?」

「「…多分大丈夫だと思う…。」」

「二人揃って曖昧な返事するなー!!」

「後5秒だよ!」

「三ツ葉!そいつの腹なら緩衝マットがあったからけってもいけるはずだ!」

もうヤケクソな三ツ葉は猫型ロボットをサッカーボールの如く上空まで蹴り飛ばした。3・2・1・0…………………。その瞬間、上空に二つ目の太陽が出現したように爆発した。


「なんか、危なかったな…。」

(なんか、爆発音小さくなかったか…?)

「本当にどうなるかとおもったよ…。」

(なんか、カウントより遅れて爆発したきがする、緩衝マット何てなかったきがするけど…。)


「…あーんーたーたーちー…、あれがもしそこで爆発してたらどうするつもりだったのよ!!」

「まあまあ、取り敢えずみんなケガなかったんだし良かったじゃん。?」

「そーそー…、はやく、遥希んちいこーぜ、な。」

あとで絶対、あいつらの飯を奪ってやる、と心に決めた三ツ葉はこの場に結構長居してしまったので、渋々向かうことにした。


⑸

この地域は昔から大小100近い山があると言われている。そのうちの一つの山には龍の祀られた神社があった。大きさ以上の存在感と異彩を放ち、全ての山を見下ろすように佇むこの神社は『高岩神社』と言われ、遥希の管理している神社でもある。

「ただいまー。琴美はいるかー?」

「…おかえりー、って望海くんと三ツ葉ちゃん????」

「おう、琴美じゃん。久しぶり。」

「ことちゃーん!最近会いにきてくれなくて寂しかったよーう…。」

「…すみません。最近まで色々立て込んでたんで…。」

「まあ、同じ学校なんだし会おうと思えばいつでも会えるだろうに…。」

遥希は一旦、琴美にお茶を入れるように頼むと、残りの二人を連れておくの今に向かった。


「ここに来るのは久しぶりだな。」

「多分、三人そろってきたのは1年ぶりくらいかしら…。」

「なんか、1年経つとみんな雰囲気かわるよね。」


「とりあえず確認なんだが、おそらく明日か明後日には敵が実力行使に来ると思う。」

「…俺もなんとなくそんな気はしてたけど、根拠はあるの?」

「今日、朝に学園へ侵入を図ったロボットの話はしたよな。その時、学園長は狙撃にあって大怪我してるみたいなんだ。さっきスバメちゃんからメールで確認したよ。」

「そんな発表なんてなかったし、スバメも……あっ、そうか。」

「…学園の生徒に伝えられない何かがある…。それも身内であってもばれてはならない何か。」

「まず生徒に伝えてないのは、不安を煽らない為だろう。授業中であれば、昼みたいなことは生徒に対する危害は余程のことがない限り起こらないしね。問題は身内にも伝わってなかった所で、恐らく『ARCHの研究者』が何らかの危害を、外敵集団から加えられた事を知られるのを防ぐためだ。」

「でも、なんでそれが明日の実力行使に繋がるのよ?」

「本当は、二つのシナリオを前もって用意していて、最初は朝の攻撃で学園長を始末して研究室の情報を根こそぎ持って行くつもりだったんだろう。でもそれに失敗した事で計画が切り替わった。今日の昼休み、敵は取引材料としてスバメの誘拐を図った。」

「でもそれは俺らで阻止しちゃったからねぇー。」

「土日にスバメが家を出る理由がないし、今日のロボットも回収に来れてなかった。多分、相当焦ってんだろうな。」

「だから、明日ってことかー。私はいつでも構わないんだけどさ、どうするつもりなの?」

「そりゃ……。二人に任せる…。」

「望海の欠点は、変なとこ完璧主義で大事なとこいつもあまいのよねえ…。」「めっちゃ語っておいてそこは考えてないのかよ…。」

「悪かったな……。てきの素性探っておいて後で罵るための材料集めてたから何も考えてなくてさ…。でも、敵さえ出て来れば何とかなるだろ??」

「…まあ、一人でやってドジ踏まれちゃシャレにならんしな。」

「私達じゃ三人もいると邪魔なくらいでしょーけど、女の敵を痛めつけられるなら大歓迎よ。」三人で明日の打ち合わせをしていると、琴海が望渼の所にお茶を運んできた。

「お茶ですよー。」

「おう。サンキューな。」

すると、琴美は手で望海の耳を借りて、小さな声で囁く。

「(先輩、あんまり派手な爆発は目立つから気を付けて下さいね。)」

「ごぶぁぁっ!ごほごふぉっ…。さっきのはお前がやったのか?」

しかし、琴美は笑いながら三つ葉たちの所に去っていった。

(ったく、兄弟揃って奇妙なことをしてくれるよ…。)

内心でため息を吐きつつ、望海は遥希の前にあった和菓子を食べる。

「やっぱり三人で集まるのが一番落ち着くんだよな。」

「私はこんなに長く三人で一緒にいるとは思わなかったわよ。」

「俺はこんにゃぁ…ふうにぃ会えてんのは奇跡に感じるよ。」

「それは大袈裟だろ…って俺の和菓子食うなあ!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。