79 地底からの召喚 その1
読者と作者が混乱しないための登場人物紹介
◎綾小路 遥: 名家の『かわいい系』のお嬢様で、瀬利亜はんの同級生。諸事情で瀬利亜はんが大好き。
◎アリス・デ・ラ・マクベイン: 異世界召喚主。聖女。清楚系美女。ガルーダ王国第1王女。三年雪組に留学中。瀬利亜はんが大好き。
◎神那岐 千早 モンスターバスター一二星メンバーの一人で巫女剣士。一四歳だが飛び級で瀬利亜と同級生。素朴で天然。姉代わりの瀬利亜はんが大好き。
◎サーヤ・エレメントリー・ガイア: ハイエルフの魔法使い。オタク。ぬいぐるみ工房の主。三年雪組に留学中。瀬利亜はんが大好き。
◎北川望海 成績優秀な『完璧な美少女』にして『完璧な兵士』。兵器全般のエキスパートで、魔法少女兼スーパーヒロイン。瀬利亜はんをすごく尊敬している。
◎バネッサ・日下部・オブライエン: 『裏世界の勇者』で、長身の美女。勇者の剣と鎧を持っている。三年雪組に留学?中。瀬利亜はんと仲良し。
◎伊集院聡 三年雪組生徒で伊集院グループの次期総帥。思い込みの激しすぎる優等生でイケメン。異世界召喚勇者。
◎三條院楓(カエデ・エターナル): 伊集院聡の婚約者で、旧華族。実は地底王国の姫でもある。ツンデレで聡をいじるのが大好き。
◎マグナ・エターナル: 地底王国『科学研究所』の所長で、王弟。地底科学や地底魔法を存分に操り、謎のロボット(笑)を(趣味で)開発している。
◎橋本太郎: 三年雪組のフツメンムードメーカー。お調子者だが、世話好きのお人よしで男子生徒の信望は厚い。雪組ツッコミ王。
◎氷室琴美: 三年雪組在籍の『リアル悪役令嬢』にして雪女の姫。長身のツンデレ美女で実はクラスメートの……。
◎早川良太: 三年雪組に転入してきた『アトランティスからの転生者』で見た目は欧米系とのハーフ。転生知識がほとんど役に立っていない普通の高校生。お人よしで恋人募集中。
◎石川トラミ: 三年雪組に在籍している未来から来た猫娘型人造人間。マイペースで気まぐれだが、意外と世話好き。『良太の保護者』を自認している。
その日も午前中の授業がつつがなく終わり、お昼休みになりました。
学食に行く人、購買にパンを買いに行く人、そして、教室でお弁当を食べる人に分かれて、三年雪組はざわざわしております。
私とちーちゃん、望海ちゃん、遥ちゃん、バネちゃん、アリス姫、サーヤさんは一緒にお弁当を食べています。……登場人物紹介ではほぼ例外なく『瀬利亜はんが大好き』になっているのはどうしてなのでしょうか?
「愛にはいくつか種類があるのをご存じでしょうか?」
いやいや、望海ちゃん、いきなり何を言い出すの?
「親子兄弟姉妹間の『家族愛』、友達間の『友愛』、たくさんの人や他の生物・無生物に向けられた『博愛』、そして、異性間の『恋愛』の四つに分けるとわかりやすいと思います。」
フムフムと言える説明なのですが、なぜここでその話になるのでしょうか?
「私とバネッサさんの瀬利亜さんに対する愛は『友愛』と言えるでしょう。私の場合はさらに瀬利亜さんを『世界で一番尊敬』していますが♪」
うん、望海ちゃん、ありがとう。そこまで堂々と宣言してもらえるとさすがに恥ずかしいですけど…。
「そして、千早さん、遥さん、アリス姫、サーヤさんの場合は、『恋愛』です。プライバシーにかかわるので、ちらっと見えた後は『細かく鑑定してない』ですが、ほぼ間違いありません。」
いやいや、ちょっとそれおかしいよね?!!
「……ええ?!違います、友愛………です……。」
「…ええ、友愛…です。」
「…もちろん、友愛…ですよ…。」
「はい!恋愛です!!!」
遥ちゃん、アリス姫、サーヤさんは顔を赤くしながらも否定されましたが、ちーちゃんは堂々と恋愛て言っているよ?!!!
「はいはーい!!私も恋愛です!!!」
いつの間にか来ていたアルさんが、手を挙げて嬉しそうに言ってるよ?!!
あなたには旦那様がいるでしょ?!!!
「ほら、だから今日のみんなのお弁当はみんなに対する友愛と、瀬利亜ちゃんに対する『スペシャルな愛情』を込めてあるから、いつも以上に自信があるよ♪」
うん、確かに今日のお弁当も絶品です。
それから、みんなのお弁当の内容が少しずつ違うとは気配りもすご過ぎです。
動作が一見とろそうに見えるのに実はすごく料理の手際がいいので、見栄えも味も抜群です。
特にハーブを上手に活用されているので、洋風メインのお弁当なのに実にヘルシーなのです。
あれ?いつもならこのグループがこの状態だとお隣の『トラミちゃん&橋本君グループ』からツッコミが来そうなのですが、やけに静かです。
そこで、お隣さんをちらっと見やると…。
みんなやけに静かにお弁当を食べてますね…。
特にいつも騒がしい橋本君とトラミちゃんが静かです。
橋本君はなぜか、顔を赤くしてすごく緊張しながら食事していて、トラミちゃんは……ニヤニヤしながら自作のオードブルをぱくついているよね…。
んん?!!橋本君のお弁当の内容がやけに繊細で豪華です!!いつもの『普通のお弁当』とは全然テイストが違います!!
さてはと思って氷室さんの様子を見ると……気にしてるよ!!橋本君の動向をめちゃめちゃ気にしているよ!!!!
昨日のアルさんの料理教室で氷室さんがかなりいいお弁当が作れるようになったと喜んでいたけど、早速今日成果が出たのだね!!
はっ?!!私の視線を見て、うちのグループもそのことに気付いて、アルさんも含めて全員が橋本君の動向に興味津々になっているよ!!
固まっているよ!橋本君が緊張のあまり固まってしまっているよ!!
「橋本、お弁当がすごくおいしそうだニャ♪おかずを一品交換したいニャ♪」
おおっと?!トラミちゃんが橋本君にジャブを放っているよ!!
「ダメだ!これは無理だ!!」
橋本君が弁当箱を抱え込んで、トラミちゃんから必死になってガードしている。
「トラミちゃん、そこは遠慮してあげましょう。」
「そうだ、トラミ嬢。今日は放置してあげた方が…。」
おおっと?!良太君と伊集院君が一生懸命橋本君をかばってあげているよ!!
二人とも橋本君の心情がわかるのだね!!
「ふっふっふ、では、お弁当の感想を告げるのにゃ。『おいしいと言ったら』きっと私は満足して無理に交換しなくなると思うのにゃ♪」
トラミちゃんが『いい顔』でにやりと笑う。
「そんなことを言われなくても『すごく上品でおいしい』ぞ!なんで、わざわざそんな条件を……。」
橋本君はそこまで言うと氷室さんの視線に気づき、固まってしまう。
氷室さんは橋本君の反応を見ると、嬉しそうに席に戻っていった。
それを見て、トラミちゃんと望海ちゃんがお互いにサムズアップしているよ?!!
仕掛け人は望海ちゃんだったようです!!
それに気づいて、橋本君が望海ちゃんに歩み寄ってきます。
「トラミちゃんに作戦を授けたのは北川だね?!どうしてこんなことするの?!」
「例えば『おいしかったよ♪』と正面から伝えられるのも嬉しいものですが、もしかしたら『お世辞かもしれない』と不安になる可能性も考えられます。
今みたいに『とっさに振られて答えた場合は思わず本音が出る』ものです。
まあ、『彼女の料理の腕は大丈夫』と確信してましたので、いかに橋本さんの本音が引きだせて、それが『彼女にうまく伝わる状況に持ち込めるか』に苦心しましたよ♪」
ドヤ顔で話す望海ちゃんに橋本君の顎が落ちる。
「悪気はないのはわかるけど、心臓に悪いからやめて!!」
「…申し訳ありません。思春期の男性の繊細な神経に対する配慮が少し足りなかったようですね。次に仕掛ける時はもう少し橋本さんの男性としてのプライドと、繊細な神経に配慮するように心がけます。」
「いや、もう仕掛けなくていいからね!!」
「はっはっは、わかりました。前向きに検討したいと思います。」
「…わかった。……北川の良心に期待したいと思う…。」
橋本君はとぼとぼと自分の席に戻っていった。
「望海ちゃん、ちょっとやりすぎなのでは?」
「本来なら、ここまではやらないところですが、何もしないとトラミちゃんが今までのようにいろいろ橋本君をいじりそうな気がしたので、トラミちゃんをコントロールするために今回のような仕掛けをしてみました。
ですが、橋本君や瀬利亜さんのおっしゃるようにやややりすぎになったかもしれませんね。」
「…そうなの…。それなら仕方ないわね。引き続き、『トラミちゃんに対する配慮』をお願いするわね。」
ううむ、『先日のスーパーヒーローオリンピック』以降、望海ちゃんとトラミちゃんは絡んだり一緒に行動することが多くなったので、望海ちゃんがトラミちゃんのお姉さん的な立場に立つことが増えたのですね。
「ところで、望海ちゃん、気になることがあるのだけれど…。
登場人物紹介にマグナ博士が出ているよね…。これ、どう見ても…。」
「…ええ、やはり気づかれましたか…。『例のパターン』しか、考えられませんよね。」
私と望海ちゃんは思わず顔を見合わせる。
その時、私たちのグループが『それの違和感』に気付いて反応する。
「あらあ、この召喚陣はマグナ博士のものだわね♪」
教室の床に現れた巨大な魔方陣を見て、アルさんがのんびりつぶやく。
おっさん!またやってくれましたね!!
なお、クラスの中を見回すと、『異世界召喚未体験』の良太君はおたおたしているものの、楓さん以外の他のメンバーは『またですか?!!!』みたいなあきらめたような表情になってます。
楓さんは顔を真っ赤にして怒ってます。
マグナ博士!ちゃんと成仏してください!




