57 さらに地底からの挑戦 その1
※前話を確認するのがめんどくさい人のための登場人物紹介
石川瀬利亜 三年雪組生徒でモンスターバスター。光一の奥様。一人ノリツッコミが特技のスーパーヒロインでもある。
錦織光一 三年雪組担任の関西弁をあやつるイケメン教師。瀬利亜はんの旦那。サイバーヒーロー、電脳マジシャンとして活躍。技術者としても一流。瀬利亜はんを溺愛している。
リディア・アルテア・サティスフィールド 三年雪組副担任。長身のゆるふわ美女で世界最高の魔法使い・『大魔女リディア』。瀬利亜はんを溺愛している。
伊集院聡 三年雪組生徒で伊集院グループの次期総帥。思い込みの激しすぎる優等生でイケメン。異世界召喚勇者。
三條院楓(カエデ・エターナル): 伊集院聡の婚約者で、旧華族。実は地底王国の姫でもある。ツンデレで聡をいじるのが大好き。
マグナ・エターナル: 地底王国『科学研究所』の所長で、王弟。地底科学や地底魔法を存分に操り、謎のロボット(笑)を(趣味で)開発している。
◎平和な地底王国に恐るべき『本家・地底帝国』の先兵『本家・地底巨人』達が襲い掛かってきた。
地底王国に召喚された瀬利亜は正義の巨大ロボット・シードラゴンロボを駆使し、『本家・地底巨人』たちを撃退…するまえに地球防衛軍によって彼らの侵略は阻止された。
それに腹を立てたマグナ博士は『本家・地底帝国』を侵略し返し…みんなが何とか止めることに成功した。
だが、安心してはいけない、いつ第2、第3の地底帝国がマグナ博士に襲われないとも限らないのだ!!
いやいや、この紹介文おかしいからね?!!!(BY瀬利亜)
私と伊集院君、楓さんは放課後教室の掃除をしていた。
「期末試験も終わって、間もなく夏休みだわね。進路相談も終わったし、いよいよ受験……そういや、お二人は進路は決まったの?」
私は手早くモップかけを済ませながら二人に問いかけた。
「ええ、風流院大学へ進学します。」
「風流学院大学へ…楓、お前もか?!」
…えーと、お二人とも新設される『私立風流院大学』へ進学されるそうです。
「ええっ?!!また聡と一緒なんだ…。『偶然』て怖いわね♪」
楓さん。うん、そんなに『嬉しそう』に答えると『確信犯』だとバレバレなのですが…。
「ふう…。またしても楓との『腐れ縁』か…。」
嫌味たらしく言ってるけど、あまり嫌そうじゃないよね。二人とももっと素直になれば楽なのに…。
「ところで、風流院大学なんですけど、来年度は『異文化交流学部』、実体は『モンスターバスター学部』しかないんですよね…。お二人ともモンスターバスターの資格をお取りになられるのでしょうか?」
「ええ、そうなんです。親父と話し合ったのですが、異世界召喚勇者になったものが、その能力を完全にコントロールできないのではちゃんと責任を果たせない!…という結論に達したのです。」
「ええ、私も地底王国のこれからの行く末を踏まえて、『能力』もだけれど、『共存共栄を前提とした交渉術』を身に付ける必要があるかと思いまして。
企業同士も国同士もこれからは『対立と競争』から『協調と交流』という流れに入ってきてますものね。」
おおっ!二人ともいろいろと考えているんだね。
「あの、瀬利亜さんはどうされるのですか?」
今度は楓さんが私に振ってくる。
「ええ、私もモンスターバスター協会や理事長と相談の上で、『講師として入ってくれ』ということになったの。お二人ともおそらく『推薦』で入れると思うから、よろしくね。」
私が返事をすると、伊集院君は若干微妙な顔で、楓さんは嬉しそうにうなずいてくれた。
「さあ、そろそろ終わりそう…。」
ここで、私は以前も感じた違和感を覚える。
私の様子に不審そうだった楓さん、続いて伊集院君も『それの気配』に気付く。
「あーー……また、マグナ博士ね…。」
地底魔法の召喚術はすごく「独特の空気」を醸し出すのだ。
まもなく、私たちの足元に召喚陣が現れ、楓さんは私にすまなそうな顔をしてうつむいた。
「異世界召喚勇者の諸君!!よく我が召喚に応じてくれた!!」
「いえ、なんとなく状況はわかるので、ちゃっちゃと話を進めちゃいましょう。」
地底科学研究所の指令室で私はマグナ博士をジト目で見つめている。
「申し訳ない、またまた緊急事態なのだ!
なんと恐るべし『真・地底帝国』の侵略の先兵が地底王国に迫ってきているだ!」
…なるほど…。次の『犠牲者』は真・地底帝国の方たちなのですね…。
なお、この場所に呼ばれたのは私たち三人以外にまたもや橋本君がいた。
半袖、半パン姿なのを見ると、帰宅後くつろいでいたところのようで、半ば呆然としています。ご愁傷様です。
「…叔父様、ちなみにどういう状況なのですか?」
明らかに呆れた表情で楓さんが博士に問いかける。
「まず、真・地底帝国の位置は地底王国から下方777.77キロ離れている。」
どうして、そんな中途半端な数字が出るのでしょうか。ま、いいですけど…。
「そして、侵略の理由だが、『本家・地底帝国』を潰した我が国が今度は『真・地底帝国』にその矛先が向かうのではないかと疑心暗鬼になっているのが原因らしい。なにしろ、その前に『地底帝国』も潰す寸前までいったからな。」
いやいや、それ、前回のマグナ博士の暴走が原因じゃん!!
「待ってください。戦う前に和平交渉はできないのでしょうか?」
私は武闘派と見られていますが、実際は『橋渡しの瀬利亜ちゃん』の異名を取るように『和平交渉』の方をむしろ重視するのです。
実際にそれで戦闘を回避したり、『いろんな集団が矛を収めてくれた』ことは何度もあります。
「うん、それなんだが、侵略の動きを見せた時に、『あまり変な行動をとったら我が精鋭のロボットが叩き潰しちゃうよ』と言ったら、『この地底帝国キラーが!!』と不遜にも向こうが起こりだして、さらにこじれちゃったんだよ。
本当に身の程知らずの連中だね…。」
マグナ博士がため息をつく。
…えーと、敵を粉砕する前にマグナ博士を粉砕してよろしいでしょうか?
「まあ、それは最初に仕掛けてきた彼らがそもそもよくないので、彼らの先兵を退けたのちに、もう一度交渉をしてみましょう。その際に『モンスターバスターの立場で平和的な和平交渉』を行うようにしましょう。」
こめかみが怒りでひきつりそうになるのを何とかこらえて、話を先に進めることにします。
「現在『地底獣モグランジャー』と同じく『地底獣オケラックス』がこちらに向かって穴を掘りつつあるのだよ。恐らくあと2時間くらいで地底王国に到着するものと思われる。
そこで、君たちには最新鋭のロボットに搭乗してもらいたいのだ!!
さあ、こちらの格納庫へ!」
そして格納庫へ入ると…
「はーっはっはっはっは!シードラゴンマスク!ここであったが百年目だ!見よ!このスーパーロボットのスゴサを思い知るがいい!!」
…ドクターフランケンは相変わらずですね…。
風流院大学講師の件で昨日会っていろいろ話をしたばかりですよね…。
別にもう『ライバルキャラ』を作る必要はないのでは?
「その通りや!!今度のロボットはシードラゴンロボをさらに大きく上廻る性能なんや!!」
光ちゃんもめっちゃ嬉しそうです。
うん、今度は光ちゃんに『プログラムが暴走しないよう徹底チェック』をお願いしているので、ロボット自体の暴走はないでしょう。
「今度は五体のメカが合体して、シードラゴンVになるんや!!」
『 V!V!V! ヴィクトリー♪
シードラゴン ワン ツー スルー♪ フォー ファイブ 出撃だ♪
世界を揺るがす シードラゴンロボ♪ 正義の戦士だ シードラゴンV!
シードラゴン・ヨーヨー♪ シードラゴン・春巻き♪ シードラゴン・頭巾♪ 』
「待って、ちょっと待って!!歌詞の内容がものすごくおかしいから!!」
あまりにすご過ぎる歌詞に私がついついツッコミを入れる。
「シードラゴン・ヨーヨーはなんとかわからないでもないけど、『シードラゴン・春巻き』と『シードラゴン・頭巾』てなんなの?!!」
「それはねえ♪」
ええと…アルさんまで来てたんですね…。
「シードラゴン春巻きはロボット用の非常食で、食べるとロボットが元気になるの♪」
うん、突っ込みどころしかない回答なんですが…。
「それから、シードラゴン頭巾は頭を守ってくれるし、防寒用にもなるんだよ♪」
……それ、ロボット用の機能じゃないよね?!!
「まあ、とりあえず、乗ってから考えればいいんや♪やった後悔よりやらない後悔の方が大きいいうんは瀬利亜はんもよう知ってはるよな♪」
いえいえ、この場合は『乗ったら必ず後悔』しそうなんですが…。
「…この流れで瀬利亜はんが素手でロボットを倒してもうたら『また』敵帝国の命運が危ない思うんや…。」
光ちゃんがこっそりと私に囁く。
…残念ながら『真・地底帝国の人達を守る』ためにはロボットに搭乗する以外の選択はないようです。
続く




