表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第二章【ブエナビスタ】二等兵
24/42

24. 肉、肉、鰻!

「にくみぃ――――――――っ!!」


「「「「「「「「誰?」」」」」」」」


 思わず叫んだ俺のヨタにご丁寧にも全員が突っ込んでくれた。が、


「ノ、ノーラさん? いえ、それは、う、うちより前にいい人がおったからって、うちは、うちはっ!」

「お姉ちゃん! だから言ったじゃない。お姉ちゃんは騙されてるだけだって。かくなる上は、二人であいつを始末しよう♡」

「君ぃー! 娘の事は遊びだったのかね? だとしたら親として許すことはできないよっ!」

「……なんと情熱的なシャウト。余程心を残してこの世界へ来たに違いない」

「余りの超展開に吾輩どうしてよいやら……」

「あ、あ、あ、みんな、おちけつ! いや、落ち着け!」

「あの~、皆さん。お早くお召し上がり下さい」おろおろ

「余は先にいただくぞ!」


 大惨事。




 番組の最中ですが、しばらくお待ちください。


















「落ち着いたかしらん?」


「「「「「「すっごい落ち着いた」」」」」」


 そして、マイペースに肉を喰らう国王陛下。ある意味この人の反応が一番正解なんだよなぁ。


「全く、ディナーの最中に大騒ぎするなんて。みんなお茶目なんだから♡」


「「「「「原因はお前だ!」」」」」


 おこられちった。てへぺろ。


「大体誰よ!? にくみって?」

「俺の脳内嫁だ!」


 間髪入れず男らしく言ったった。すると、女性陣からは汚物を見るような冷たい目で、男性陣からは仕方ないやっちゃと生暖かい目で見られてしまった。ぞくぞく。


「いや、この料理、その肉魅の持ち料理なんだよ。ってか、良くあるだろう? 常套句という奴。戦いに勝ったら『エイドリアーン』とか、困った時は『な・な・こ・SOS』とか」


「……なにを言ってるのかさっぱり分からない」

「……うん。俺も」


 とりあえず気まずい雰囲気を流す為、丼を掻き込む。一度だけ食った事のある阿佐ヶ谷のSATOブリアンのステーキよりもガツンとくる肉の旨みが最高だ。そして肉汁のしみた白米。あえてガーリックライスを避けたのだろうこの白飯の甘さ。涙ちょちょぎれるぜっ! 


「段々ノーラさんとの心の距離が遠くなっていく気がするんやけど」


 なんか遠くを見つめながらレイプ目でうふふふと呟くメロン。これが話に聞いていた鬱状態だろうか?


「そんなことはないよ。今の俺の心の中に住んでるのは君だけさ。(きらりん) さぁ、涙を拭いて。折角二人のために作ってくれたご馳走を食べよう」


「ノーラさん♡ うんっ♡」ぱぁぁぁぁっ♡


 そうして、漸く元のディナーに戻る。陛下は既に半分残した丼の中に鰻をほぐしてかき混ぜている。そして、俺の予想通り山葵をたっぷりと乗せ、三つ葉と一緒に暖かい葛餡をかけ、お茶漬けにしてほおばっている。


「う、う、うーまーいーぞーっ!! なんだ!? 今まで余が食っていた食事は、なんだったのじゃー!」


 のじゃー のじゃー のじゃー! と木霊するほどの大絶叫。気持ちはチョーわかる。

 早い話、牛鰻丼である。素材と調理のレベルが段違いだけど。それに鰹出汁の葛餡である。


 旨みと旨みのコラボである。ちなみに鰻は関東風の蒸す奴である。すきやのうな牛はコスト面の問題だろうが蒸して無い為鰻が固いんだよな。それだけが不満だったが、この鰻はそういう細かい作業を省かずやっているいい仕事の鰻である。だから、この塩麹で味付けしたシャトーブリアンとも、相性が良いのである。

 ましてや、材料自体はどちらもスペシャルなものだし、肉はおそらくA5クラス。鰻は肉厚の三年物以上。よもや、うな牛の究極形にここ異世界でお目にかかれるとは。


「おいひいよ~」ぷるんぷるん

「おいひいね~ お姉ちゃん」ぺたぺた

「……美味」

「びっくりしすぎておなかがヤバめであります。きっと明日の朝にはゲ」ぽぎゃっ!

「おやめください。レイジィさん」


 こうして、皆が思い思いに料理を堪能していた。こうしていると、何もかも忘れて本能のおもむくままに


 ん?


 忘れる?


「ああああっ!」


 ブル連隊長殿が何やら叫びを上げた。その瞬間に俺も一つ思い出してしまったのだ。


「儂が此処へ来た理由がっ! メロン一等兵、ノーラ殿、二人は【大森林】でオークに出会ったそうだが、彼奴ら一体森で何をしていたのであるかっ!」


「「それについて、一つお願いがありますっ」」びしっ!


 俺とメロンが同時にハモって言ってしまった。



◇◆◇◆




「つまり、奴らは友軍の認識票を回収して回っていたと? この一年間?」


「はい。彼らの仲間の菩提を弔うことを目的に生き残りが活動していたとの事です」


 そう言いながらいつも担いでいるバッグから大量の認識票を取り出した。


「こちらがその認識票です。どうか機会がありましたら彼らに返還して上げて下さい」


「……わかった。それは余の名において必ず成し遂げよう。貴君らもそれでよいか?」


 国王がその名に誓うなら申し分ない。連隊長殿も頷いてくれた事だし。


 こうして、デザートまで全て堪能して食事会はお開きとなった。国王はブル連隊長殿が責任を持ってエスコートするそうだ。苦労人はどこまで行っても苦労するのだなぁ。しみじみ。と、パパさんの方はどうするのかな?


「遅くなったし、タウンハウスも用意が出来てないしね。今日はここに泊めてくれないかい?無論、ゲストルームでいいよ」


 って、言う事は、もしかして、


「俺と同室ぅ――――!!」


「じゃあ、一晩お世話になるよ。ノーラ君♡」


 凶悪なハートマークが見えた。


 さぁ、みんなですきやのうな牛を食べよう! (吉野家可)

 まぁ、劣化版ですけどね。


 ちなみに、デザートは普通にアイスクリームでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ