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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第二章【ブエナビスタ】二等兵
22/42

22. スタイリッシュざまぁ不発っ!

「ふふん。あんたもこれで年貢の納め時ね。これから、うちのパパと連隊長、それに国王陛下があんたの取り調べをしにやってくるそうよ! ザマァ!」


 いや、ザマァって。余りといえば余りな言いぐさである。


「……いや、心配することは無い。陛下は月に一度のお楽しみ。ひなこの料理を食べに来るだけ。連隊長と彼女らの父君は、単純にメロンの身を案じて来るだけ。まぁ、唯一の部外者であるノーラが詰問される光景は火を見るよりも明らかであろうが、心に疚しい事が無ければ恐れる必要も無かろう」


「それがね、実はかくかくしかじか……」


「……なんとっ! いきなりLV9まで上昇!?」


「なんですとーっ! 流石に吾輩もそこまでの御仁とはつゆ知らず、数々のご無礼平にご容赦を~」


 なんで、こんな可愛いエルフなのに三下言葉が似合うんだろう? いきなり土下座されても困るんだが。


「そういえばひなこは?」


「……今頃陛下達に振る舞う食事の支度をしている筈。今日の夕餉は国王陛下と爵位持ちが二人同席するのだ。無礼を働けば首が物理的に飛ぶ。注意めされよ」


 うわーん! 超こえー!


 ……ん? 何か変な話してなかったか?


「えーと、同席するのは国王陛下と連隊長とメロン、マロンの父親だよなぁ?」


「……その通り」


「で、国王はいいとして」


「え! いいのでありますか!?」 ガビーン!


「爵位持ちが二人ってことは残りの二人共貴族」


「……その通り」


「まぁ、連隊長は知らないけど」


「知らないで済ますんじゃないわよ! 恐ーい鬼の連隊長様よ!」


「もう一人はお前らの父親なんだよなぁ?」


「ふふん。その通り!」

「あ、あの~」


「つまり、お前らは……え? マジ? ネジ? マジ? モジ? マジ~? マジで! 貴族の令嬢!!」


「頭が高いわよっ! よくもワントナック侯爵令嬢様二人に対して数々の辱めをしてくれたわね!」


 しかも、よりにもよって上から二番目かよ!

 蝶野さん(ちょーちゃん)! 明るい未来が見えません! (てめぇで見つけろっ!!)


「せめてもの手向けにひなこの美味しい料理を最期に共に食す機会を与えてあげるわっ! 最期の晩餐を楽しみにしていなさい。おーっほっほっほ!」


「マロンちゃん! なんで? そんな酷いこと言うの?」


「お姉ちゃんは騙されてるだけよ。こーんな何の取り柄も無さそうな男、信じても不幸になるだけよっ!」


 う、自信を持って否定出来ない自分が恨めしい。


「いや、凄いスキル持ちの麒麟児でありますよ?」


 空気を読まず味方してくれるレイジィが眩しい。三下扱いして悪かった。


「ちっ!」


「こわっ!!」


 すごすごと引っ込んだ。やっぱ三下だった。


「いずれにしても、あんたの運命はカウントダウン中と言う訳よ。身の程を知らない欲を掻いた自分を恨んで死んでいきなさい」


 そして、運命の時はやって来た。




◇◆◇◆




 結論から言うとマロンの言う最期は訪れなかった。


「ブルータス! お前もかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ギャース、ギャースと泣きわめくマロンには悪いが、ここでアウエーなのは完全にマロンの方である。

 他所の家の事ではあるが、父親つかまえてお前呼ばわりとは……

 言いたくはないが、国王も連隊長も完全にドン引きである。

 まぁ、こういう我儘な所が悪役侯爵令嬢っぽいと言えばそれっぽいのだろうか?


「はじめまして。メロンとマロンの父親でジョバンニ=ド=ワントナックと言います。以後お見知りおきを」


 と、娘の暴言にもめげず、気さくに話しかけてきてくれた紳士が二人の父親とのことだ。が、どうにも似ていない。二人はもっとエッジの効いた狩猟犬といった雰囲気であるが、(いや、内面の緩さは別として)かの御仁は人懐っこい印象のダルメシアンっぽい。しかも、白一色のぶち無しである。顔も、獣人というよりは犬そのものだし。聞いていなければ血の繋がりがあるとは判らないだろう。


「二人は外見は母親似なんでねー」


 と、言うことらしい。一方、


「第02連隊の連隊長、ブルーノ=ブルペイジ伯爵である。メロン一等兵、無事の帰還大儀であった」


 と、正真正銘ブルドックな強面が、一言メロンに声をかける。


「痛み入ります。連隊長殿。この度は自分の捜索に人員を割いて頂きありがとうございました」


 思いの外、堂に入った敬礼を交わして礼を述べたメロンに頷いてから俺の方に向き直ると、


「君は軍に志願したそうだな。辞令は明後日出る筈だが、それまでは君は儂の部下では無い。とはいえ、不慣れな環境で困る事もあるだろう。何か困ったら何でも言ってきなさい」


「はい。お心遣い痛み入ります」


 すると、最後に残った今一人、というか、至高の御方自ら俺の方に近寄ってきた。歳は他の二人と同年配位だろうか? 豪奢な仕立てのガウンの中には俺同様の黒い毛色が王冠を載せていた。


「ふむ。なかなか良い若者のようだの。余は第38代国王 ウィリアム=ヨナキム=フロ○ャルド」


「わーわー!」


「! 突然どうしたのじゃ?」


「某ごときの為に御身の名をお聞かせ頂くなど勿体ない」


 片膝ついて誤魔化す。まったく、この国、時限爆弾だらけじゃないかよ。


「ふむ。噂に違わぬ殊勝な若者よの。苦しゅうない。この場では余は旨いものを食いに来ただけの只の食いしん坊じゃ。皆も楽にせよ」


「ははぁっ! 勿体ないお言葉」


 なんか、俺キャラがぶれてきてないか? 国王から変な磁場が発生してるんだろか?


「それにしても、毛色といい、この国では珍しく余に似た、というか、伝説の英雄、ノラマロ様に似た立ち姿、もしかして、そなた王室の血を引く者ではないのか? 或は余の御落胤であるとか」


「いえいえまさか! 只のしがない風来坊でゴザルよ!」


「ゴザル? まぁ、それは良い。流石に初めて都に来た流れ者が余の子供というのも無理があるだろう」


 しかし、ノラマロ? のらく○じゃなかったんだ。


「しかし、そうなってくると……おい、ブル! 近う! あの者はもしかして……」

「はっ! ……その通りどうやらスキルの方に……との事でございます」


「成程、相分かった! ノーラとやら、この場は食事の席じゃ。後は晩餐を楽しみながら話すとしようではないか。皆も良いか?」


 まあ、そんなわけで、この後はみんなで食事をしながらの歓談という運びになった。

 しかし、軍の最下層に居る俺や彼女らと、国王がこんな近くていいのかねぇ?


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