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異世界突撃部隊 ゼロゼロワンワン  作者: 拝 印篭
第二章【ブエナビスタ】二等兵
19/42

19. スキル無双!

 メロンは舌なめずりしながら、大興奮状態で書類に記入しようとしていた。


「むふー! ノーラさん。はじめてうちが役に立つ時が来たで~」


 うん、自覚はあったんだなぁ。しみじみ。


 ここは、街門にある住民仮登録の申請窓口である。

 

 結局、あの葡萄酢痛飲事件の原因は俺がこの世界の文字を読めない所為で起きた悲劇であったと言って過言ではない。実際、全くと言っていい程見当もつかない文字をつかってるんだよなぁ。この世界の文字。


 当然、住民登録を自力で出来る筈もなく、こうしてメロンが代筆を買って出てくれたという訳である。ちなみに他の面々は別の手続きに行ってるので二人きりだ。


「えーと、先ずはこの水晶に手を翳してください。ああ、代筆の方じゃなくて御本人の方です」


 担当のランカー氏が俺に向かって水晶を差し出した。直径30センチ近くあるのではないかというでっかい水晶玉で、何気に生まれて初めて触るお宝にややテンションが上昇している。


「そのまま二秒程手を離さないように。……はい。結構です」


 これで、犯罪歴や主義思想に危険が無いか。後は基本的なステータスが判るそうで、基本、危険が無いと判断されたら直ぐに仮住民申請ができるそうである。


「では、名前は?」


「野浦 九郎判官義経。こう見えて38」


「いやいやいやいや、長い! 名前長すぎるから。この場で申請できる名前は4文字だけだから! それから年齢やらプライバシー情報はステータス情報で確認するから一々言わないで宜しい!」


 なんだよ! 4文字って!? どこのはみこんだよ! 【えにくす】とか、つけなきゃいけない訳か?


「いずれにしても、文盲の丙種市民権申請に代筆がメロン嬢とか、うらやまけしからん! ここはひとつ、是非自分の色紙にサインをしていただけましたら……」


「ごめんなさい。そういうのは軍の規定でお断りしてるんやよ」


「くっ! 残念です」


 ちーん


「ああ、ステータスの転写が出来たようです。ん? んんんん? なんじゃこりゃー!」


 こりゃー


 こりゃー


 は~こりゃこりゃ


「どないしはりました?」


「そ、それが、長いんです。ステータスの項目が長すぎて、オートタイプライターが止まらないんですよぉー!!」


 確かに、未だ印字が終了せずに感応紙のロールがどんどん消費されていっている。その量たるや、既に三メートル近く。


「え、え~っ! なんで? え~っと、あ! スキルの項目がすっごい量!」


「つ、つまり? どういうこと?」


 今一要領が得られず困ってしまった俺。


「普通なら精々2~4個のスキルなのに、優に1500を超えてるですけど!」


「え? 俺の? なにそれ!!」


「これは、早くスキル課へ行って相談した方がいいですな。もしかすると、関係各所が身柄を押さえようとして余計な軋轢が発生するかも知れませんぞ!」


「「わ、わかりました~」」


 そそくさと出て行こうとする俺達をランカー氏が呼び止めた。


「あ、登録名だけは記入していって下さいね」


「あ、わかりました。え~と、ノーラさん。っと!」


「おいっ! そっちは姓の方だ!」


 スキルの余りの量に心が行ってて一瞬注意が遅れた。その為、


「はい。承認!」


 ぽん! と承認のハンコが押される。


【パラパラッパパッパッパッパァーッ!】


『住民票に登録名を記載しました  登録名 ノーラ』


「「あ」」




◇◆◇◆




「まぁ、結果オーライだったんやないかな? ヨス、ゥ、イト、ゥーヌェじゃあ元々通らなかったんやし」


 言いにくそうに俺の名前を言いながらも目が泳いでいるHカップ。後でお詫びに乳揉ませろ!


「……それにしても、こんな事態はお目にかかったことが無い。自分の時もスキル5個は多い方だと驚かれた位だし。入隊前の身としては前代未聞ではないか?」


「やはり、只ならぬ御仁でありましたな~」


「今夜もお赤飯がいいですかねぇ? もち米のストック足りるかしら?」


「んー、それにしても、凄いスキルの数ね。あんた、今まで何やって生きてきたのよ?」


「マロンちゃん! ノーラさんは、記憶喪失なんやから……」


「っと、そうだったわね。埒も無い事言ったわ」


「いや、しかし……」


 俺は自分のスキル票(正しくは仮住民表なのだが)を見ながらある意味落胆していた。

 最終的にスキル(候補)の数は2143個。しかし、何しろ、羅列されているスキルのうち、大半は俺の持ち技であるプロレス技なのだから。メロンに項目を読んでもらいながら脇に速記で記入していくと、文字の法則が見えて来て、なんか辞書的な感じになって早く文字が覚えられそうだ。特に自慢する事の少ない俺の唯一の特技だ。


「変な文字を使ってるんやねぇ? これ、何て言葉?」


「速記術の一種だよ。普通の言葉使うよりもこっちを先に覚えちまった所為で普通の文字が読めないわけだが」


 そう、ごまかしつつ読み上げられた単語を綴っていく。うまくすると速記ってこの世界でも普及しないかな? と思ったけど、それ以前にジャンル自体が超マイナーだったよな? 何でこんなの覚えようとしたんだろう? 昔の俺。


「んー、チートっぽいスキルが無いわけじゃなさそうだが、元々持ってた技ばかりだし、精査するのにも時間がかかりそうだな」


 ちなみに、全てのスキルを自分の物に出来る訳でも無いそうだ。どこまで持てるのかはスキル課で調査することとなるらしい。


「閃光ライダーキック、ライダー返し、ライダー錐揉みシュート……何かコレって物に欠けるかなぁ?」


「……どういうスキルか全く分からない」


 だろうな。俺も記憶の奥底で眠ってる名前だけ知ってる技なんだよなぁ、この辺。


「ん? 『頑強』『鋼の魂』『熱血』『必中』『幸運』これだぁぁぁぁっ!」


 どうやら使えそうなスキルは後半に集中しているらしい。その中にいわゆるチーレムキャラとして目指すべきスキルが一つあった。


『鑑定LV1~9』

※ ランカー氏


 宇宙一の無責任男シリーズ(吉岡平)において、主人公が軍に入隊する時に世話をしたジェイコブ=ランカーは、それを理由として僻地に左遷されるという逸話があったが、彼の場合はどうなるだろうか?


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