彼らが来る前に
「命が惜しければ、持っている金を大人しく出しな!」
一人の男が、もう一人の男の首筋にナイフを突きつけ、脅しをかけていた。
「も、もう金なんて持ってない! あんたが来る前に別の奴に奪われたんだ!」
「……そうかよ。」
「な、なあ……見逃してくれないか?」
「金がねえ奴は生きていられないのさ。だから、あんたは今ここで……」
男が言いかけたその時、彼の左胸から血が噴き出した。心臓を貫かれたらしい。二秒と経たずに、彼は地面に崩れ落ちた。
「……もう大丈夫だ。」
強盗を刺し殺した男の声が響く。
「助けてくれて、ありがとう……!」
「こいつ、結構な額を持ってるぜ! 大儲けだ!」
そう言ったのは、男の相棒だった。
ここの治安は最悪だ。街には強盗が溢れ、絶えず誰かが金を奪われている。だが、この村には特殊な職業が存在する。村の強盗を殺して住民の安全を守り、その見返りに強盗が持っていた金を「保護費」として頂戴する者たちだ。
俺の仕事はそれだ。危険な仕事のため、通常は二人以上で動く。相棒はアンドリュー(強盗の金を見て『大儲けだ』と言った男)だ。彼は黒い短髪で、小柄だが深みのある瞳をしていた。
俺:「こいつの金なら、二三日は食いつなげそうだな。」
アンドリュー:「じゃあ今日はここまでだ。続きはまた明日。」
俺:「ああ、帰ろうぜ。」
俺たちは家に向かって歩き出した。道中、笑い合いながら話をしていた。……奴が現れるまでは。
「何をするか、分かってるな?」
体格のいい男がナイフを手に立ちはだかった。一目でまともな人間ではないと分かる。
アンドリュー:「厄介なのが来たな。」
俺:「仕事の方からやってくるとはな。運がいい。」
俺たちもナイフを構え、決闘の準備を整えた。俺が正面から攻撃を仕掛け、奴の注意を完全に引きつける。その隙に、アンドリューが瞬時に背後へ回り込み、奴の心臓を刺し貫いた。
アンドリューはとにかく速い。基本的には俺が正面で戦い、アンドリューが背後から仕留めるのが俺たちの戦術だった。
アンドリュー:「こいつもいい金持ってるぜ!」
俺:「一週間は遊んで暮らせそうだな。」
俺の毎日は、そんな風に過ぎていった。この村には同じような同業者がたくさんいるが、たいていは二年以内に強盗に殺されるか、自分が強盗に成り下がる。強盗の方が効率よく稼げるからだ。俺やアンドリューのように五年以上続けているのは極めて稀だった。
俺たちが熟練のプロであることは知れ渡っており、まともな強盗は俺たちを見ると逃げ出す。突っかかってくるのは、たいてい何も知らない新人ばかりだった。
あの日、俺とアンドリューはいつものように強盗を狩りに出た。
「金を出しな!」
俺:「アンドリュー、いつもの作戦だ。」
アンドリュー:「言われなくても分かってるさ。」
俺が強盗の注意を引きつけ、アンドリューが音もなく背後へ回る。
シュッ――。強盗の首が地面に落ちた。
襲われていた男:「あ、ありがとう……助かった!」
俺:「気にするな、これが俺たちの仕事だ。」
アンドリュー:「こいつ、金が少ねえな。次を探そうぜ。」
俺とアンドリューが背を向けて歩き出した、その時。
グサッ。
刃物が肉を貫く音。俺が最も聞き慣れたその音がした。振り返ると、アンドリューの胸元が鮮血に染まっていた。
さっきの男:「ヒヒッ……! ありがとよ! 殺す隙をくれて感謝するぜ! 二人のうち、こっちの方が強かったんだろ? これであとはお前だけだ。三人の金は全部俺のもんだ!」
そう言うと、男は俺に向かって突進してきた。
この五年間、どんな敵の足音も聞き逃したことはなかった。だが今回は、アンドリューが倒れるまで、何の音も聞こえなかった。
奴は、これまで出会ったどの相手よりも強かった。
五分後。
俺は三人の金を抱えて、家に戻った。
アンドリューの方が強かったからこそ、俺は生き残ることができたのだ。
この仕事をしている以上、死の覚悟はできていた。俺もアンドリューも。だから約束していたんだ。もしどちらかが死んだら、全財産を生き残った方に託すと。そうすれば、もう一人はこんな危険な仕事を辞めて生きていけるから。
アンドリューの金を確認した。俺の分と合わせれば、老後まで暮らしていける額だった。足りなければ別の仕事をすればいい。
俺は彼の金を手に、この村を離れる決心をした。故郷へ帰ろう。アンドリューだって、逆の立場ならそうしたはずだ。俺たちはそう約束したんだから。
だが、心は少しも晴れなかった。
翌日、俺は村を去った。かつての故郷を目指して。
その帰り道、森を通りかかったとき、一人の少年が地面に横たわっているのを見つけた。眠っているようだった。彼はアンドリューと同じように小柄で、黒い短髪で、そして深みのある瞳をしていた。
俺は自分の目を疑った。すぐさま彼を揺り起こした。
俺:「おい! 大丈夫か?」
彼:「ふあぁ……あんた、誰だよ?」
あくびをしながら、彼は言った。
彼が、目を覚ました。
俺:「俺はアシュだ。あんたは?……それに、なんでこんなところで寝てるんだ?」
彼:「俺は、ソリタ。」
彼は自分の身に起きたことを、包み隠さず話してくれた。
俺は彼を保護することにした。彼に怪しまれないよう、当然、いくつもの嘘を並べて。
俺は……彼のことを、アンドリューだと思い込むことにしたんだ。
つづく。




