031
結は紡と会って全てを知り、
気持ちが完全に吹っ切れた。
仕事終わり、
会社の窓辺で紅茶を飲みながら
たそがれていると、同期の縁人が
声をかけてきた。
縁人「結ちゃん、最近休んでたけど
大丈夫?…また彼氏となんかあった?」
結「もう平気。いつも話を聞いてくれて
ありがとね。あの人とは終わったよ。
今日奥さんが会いに来た。既婚者だった。
知らなかったとしても憎いはずなのに、
奥さん…私のこと心配してくれたの。
あんなに素敵な人が傍に居たのに
不倫するなんて…本当に馬鹿な人だよ」
縁人「あの人……既婚者だったの…?」
結「笑っちゃうよね、ずっと騙されてた。
動物園で一人で待ってたのを思い出すと、
無駄な時間過ごしたなって恥ずかしくなる」
縁人「結ちゃん…あのさ、その動物園に
俺と一緒に行かない?」
結「え …?」
縁人「今すぐにじゃなくてもいいんだ。
結ちゃんがもし気が向いたらでいいよ。
でも、これだけは伝えておきたい。
俺は、絶対に行くよ。待たせない。
何なら一時間前に動物園で待ってるよ。
あの日のことが頭に過ぎるなら
迎えに行くから。家から一緒に行こう」
縁人からの思いがけない言葉に、
結は雷に打たれたような衝撃を受けた。
結は、縁人に返事をした。
結「…現地集合にしよ?待ってた記憶、
書き換えたい。あと……一緒に孔雀を
見たいな。あの日は一人で泣きながら
見たから、今度は、縁人くんと二人で」
同時刻、
叶望神社に強い風が吹き、
絵馬掛所では一つの絵馬が音を立てた。
その絵馬には
【結ちゃんが幸せになりますように。縁人】
と、書かれている。
結が駆と叶望神社に訪れた後、
すれ違うように参拝に来たのは
縁人だったのだ。
良縁を結ぶ。
そのためには悪縁を断つ必要がある。
駆に騙されたまま永遠を願った結と、
結の幸せを力強く願った縁人。
叶望神社の神にとって、
結の縁を紡ぐことは容易かったようだ。




