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お人好しではない
「そこまでする義理はありませんよ」
「たはは……ずばっと切り捨てるねぇ、兄さん」
「……」
冷たいようだが、相手の要求そのものが過度なものなのだ。
それに、のこのこついて行った一を集団で襲おうという、『世界と繋がった者』専門の野盗ではないという保証もない。
一は構わず、歩き出した。
「ちょ……ちょっと、兄さん!?」
「ついてくるなら勝手にどうぞ、外までなら一緒に行くので。
お仲間が大切で、残るなら一人でどうぞ」
あとは男次第だ、と一が考えたところで男は静止するように手のひらを突き出した。
「ま、待ってくれよ、せっかちすぎるよ、兄さん」
「体調を整えるために早く帰りたいんですよ、無駄な時間を浪費したくない」
「いや、待ってくれ!ちゃんと礼はする!それなりのものを渡すから、協力してくれよ!」
「礼?」
「ああ、だから……」
「いや、礼って何をするつもりなんですか?
余程のものでないと心動かされませんよ?」
現金な人間だと一は自分自身で思った。
ただ、この『ミダスの森』で当たり前のように手に入るアイテムでは一は納得しないのも事実だった。