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進むか止まるか
一はどうすべきか決めかねた。
昨日の手応えを考えたらより稼げそうな、さらに高水準のダンジョンに向かうべきだ。
しかし、一の性格はどこまでも安定を求めてしまう。
これまでの生活が常に命の危険があった反動なのかも知れない。
余程の油断が無ければ、やられることはないであろう昨日のダンジョンはそれはそれで魅力的だった。
それなりの稼ぎも見込める。
必ずしも高水準のダンジョンに向かったことで、より稼げるというのは……おおよそその通りなのだが、誰かに保証されるものでもない。
瑞葉との約束もある。
無理をして怪我をするのも好ましくないと考える。
反面、ここでより高ランクを目指せなければ……先に進むことを常に恐れていては、いけないのではないかという感情もらあった。
決めかねて、結局コインを投げて決めることにした。
表なら進むで、高水準に挑戦。
裏なら止まるで、昨日と同じダンジョン。
そして、結果は現状維持だった。
一は内心ほっとしてしまった。
それと同時に、こういうところは自分らしいと思った。