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ボツ作  作者: Eクラス
第1章 新学期
10/13

1-7 天罰と連鎖式召喚大魔法

 魔法陣を解除しようとした灘は呪われて爆ぜた。

 光の粒子になって情報体は消え去った。

 ゲームオーバー。

 今、間抜けにも強制転送されてギルドルームに戻ってきて、ギルド管理室長の早乙女にドンマイと声を掛けられていた。

 そして、エルとの会話を思い出す。


『灘、この魔法陣をBプランの解除法を使用した際に発動するのは恐らく天罰。それから連鎖式召喚大魔法の類だと推測されます』


『シューコー……コーホー……そりゃまたおったまげーなトラップですわなー』


『えぇ、ですので灘には天罰を食らってもらいます』


『ヒュ~、Aクラスのこのアタイを捨て駒にしてきやがりますかー』


『ここはオマエの犠牲をもってしてイルステリア・ファーストといきましょう。もちろん、回避することも可能ですが敢えてここは全て受けて貰います。これが最善の策ですね』


『シューコー……コーホー……若以上にアタイの扱いが容赦ないっすわー』


『まぁ、灘ですから。オマエを甘やかして碌なことにはなりません。それにオマエだからできるカウンターを次に起動する連鎖式召喚大魔法と術者に打ち込んでやるんですよ。それで自滅してくれれば万々歳です』


『なるほど、なるほどー。やられたら倍返しなお嬢らしいやり方ですなー。そういうの嫌いじゃないZEー☆』


『えぇ、ですから後の処理のことはワタシたちに任せてください。そして、オマエは京と合流して……愚か者共の追跡と後始末をよろしくお願いします』


 灘はギルドルームを後にして、校内をうろついた。スマホを取り出し1年Eクラスの木船京きふねみやこにコールした。

 ガスマスク越しにニヤリと笑う少女。


「若―、今どこですかー? 仕事の時間でっせー。お嬢ブチギレ案件、若の大好きな血の滾る殺しのお時間ですよー」


 雨衣の知らない裏側で何かが動き始めていた。



 ◇



 シェルパの街、その地下に張り巡らされた地下水道のとある一角。

 トラップ魔法が少女の身を襲った。

 天罰。

 術者の許可なく解除すればペナルティーが下る。

 あれは神様のソレだと仰々しいので呪いという解釈で、術式のレベルを落とし、やっと人間が扱えるようになったソレだとか。解除コードを少しでも間違えれば街全体に被害が及んでいたソレを灘1人が背負ったわけだが。


「鏑木エル……やってくれましたわね。今はとやかく言いませんが、これで終わり…というわけでもなさそうですわね?」


「えぇ、そうですね花山院雲母。灘の犠牲を無駄にしないよう、このあとの掃除もこなしていきましょう」


 ここから始まるのは第二のトラップだ。

 新たな魔法陣が発動した。

 予想されるは連鎖式召喚大魔法。

 術者の排除を目的に、大型の魔物でも召喚するつもりだろう。

 何が出てくるかはお楽しみ。

 蛇が出るが鬼が出るか……しかし、思ったよりもソレは小さかった。

 まぁ、地下水道の広さだと大型魔物は窮屈だろう。唯一他のエリアよりも広そうなココですら10メートルを超える魔物は入りきらない。


「……も、もしかしなくてもボス戦だ!?」


「若干1名、テンションがおかしな殿方がいますわ」


「はい、知ってました。子供をあやす様に適当に相手しといていてください」


 魔法陣に稲妻のような閃光が迸る。

 先ほどまで召喚されていたヘドロスライムがクリスタルな魔力の塊の彫像の方に吸い寄せられていく。くっついて、へばりついて、交わり、変形して、合体していく。


「連鎖式召喚の正体はこれでしたか……まぁEクラスのワタシ達にとって悪くはねー敵です」


「まさか、錬成魔法ですの!?」


「……違うよ、花山院さん。たぶん、これは融合連鎖合体魔獣ヘドロキメラだ」


「雨衣さんは少しゲームのやり過ぎですわね……」


 ソレは5メートルほどの魔物。彫像の名残も若干残されたヒトか獣かよくわからない得体のしれないモノ。おどろおどろしいヘドロの塊。

 そこらの雑魚と一緒にしていけないのは明白で、ボス戦と呼ぶに相応しい敵だ。

 ただ、雨衣にとって残念なお知らせがある。

 このボス戦、既に決着がついているということ。

 すでにエルの策略により自壊が始まった。魔物の胴体からヘドロがぼたぼた落ちていた。


「成功はしたみてーですね」


「……何かしたの?」


「わかりやすく言えば、自滅コードのウイルスみたいなものをお返しに仕込んでやったんですよ。ですので馬鹿正直に正面からやり合うこともありません」


「……そ、そっか」


(雨衣さんが見るからに残念がってますわ)


 しかし、だ。


「とは言え、気を付けてください。自己修復機能は多少あるみてーですから、てめーがアレに取り込まれないように逃げ回るのがワタシたちの役目です。情報体のこの身体だとしても、魔力をごっそり持っていかれたらどうなるかは保証できませんので全力で逃げてください」


「……な、なるほど」


「了解しましたわ」


 さて、ボス戦が開始する。

 エルが一発、魔弾を食らわせた。

 雨衣命名ヘドロキメラの着弾箇所が若干弾け飛ぶだけで、自己修復機能で傷口が多少修復していく。

 続いて、花山院も炎魔法を食らわせてみたものの、効果はいまひとつの結果になった。ヘドロスライム時の弱点を克服したとするなら、それはやはり高密度の魔力を帯びたクリスタルの彫像が起因しているのかもしれない。

 何にしろ碌な魔法が使えない雨衣たちEクラスにとって厄介な敵だ。

 戦場と化したココも狭くてヘドロキメラの出現によって圧迫感を覚えるわけで、ちょっと動くだけで行動制限が著しく芳しくない。


「ここで相手するには狭いですわね」


「同感です」


 迫りくる奴の手を躱すのも、それは運が良かったから。

 次も回避できるかは、わからない。


「こうなったら仕方ありません。ギルド管理室、聞こえますか」


『はいはぁ~い、聞こえてるわよぉ~ん』


 エルはギルド管理長である早乙女伊織に通信する。


「お願いがあります。ボランティア活動は中止して他の魔法生を直ちに退去させてください」


『エルちゃ~ん。それなら、もうやってるわよ~ん』


「マジですか。流石ですね」


『まぁね~ん。こちらからもエルちゃん達の映像ばっちり確認できるているわけだし~ん。どんな作戦を実行するかも大方予想できたからねぇん。ここが踏ん張りどころって感じかしらん。頑張りなさぁい』


「感謝します」


 牽制で、もう何発か魔弾を撃ちこんだエルはそう言って通信を切った。


「鏑木エル。これからどうなさるつもりですの?」


「もっと有効的な時間稼ぎをするんですよ」


「……もっと、広い所で迎え撃つってこと?」


「まぁ、ここで食い止めれたら良かったのですが。アレが自滅するまで鬼ごっこのフィールドを広げようってんです」


「なるほど。しかし、それはわたくし達がアレに取り込まれるより、リスクが高いかと思われますが?」


 敵が鬼ごっこの相手をしてくれる保証はない。

 下手すれば雨衣たちを無視して地上へ出るルートへ飛び出すかもしれない。


「ですから餌を用意します」


 そう言って、エルは雨衣の方を振り返った。

 名付け親の雨衣に執拗に攻撃を仕掛けようとするヘドロキメラ。


「……あの、話してないで援護お願い」


「あと、15秒自力で頑張ってください。ワタシが前衛で逃走ルートを確保します。花山院雲母は中衛で機動力を底上げするバフをお願いします」


「そして、後衛の雨衣さんを餌役にしてアレを釣るってわけですわね。ですが、どうやってアレを確実に釣りますの?」


「イチかバチかですが……雨衣、いつものバチバチをお願いします。あと3秒の辛抱です」


「……もう15秒経ってるんだけど」


 そう言って、雨衣は左手に持っていた松明をヘドロキメラに投げつけた。

 投げつけて右手に携えていた魔法銃で何発かけん制する。さらに、エルに言われたとおりに左手をバチバチさせた。

 バチバチと稲光の閃光を発生させて、それをヘドロキメラに放った。


 花山院は口をあんぐりさせる。

 雨衣は魔法を使えなかったのでは……と。

 しかも、四大属性のソレから派生した極めて希少な雷系統の魔法だ。それは英雄・白野と同じ属性魔法。1年最強と呼び声高い英雄の娘と同じ雷撃・・・?

 動揺を隠させない。


「花山院雲母、バフの準備はできましたか?」


「え、えぇ、はい。完了しましたわ。いつでもいけますわよ」


「よし。雨衣、行きますよ。はぐれずについて来てください」


「……了解」


 エルを先頭にこの場から離脱した。

 そして、目論見通りに雨衣の美味しそうな魔力に釣られたヘドロキメラが若干活発化した。絶対にお前を食べてやるぅと一心不乱に追いかけてきた。


 雨衣たちは花山院のバフのおかげでヘドロキメラよりも少し早いスピードを維持して逃走を開始する。


「あの、雨衣さん…貴方、魔法使えましたの?」


 逃走中。

 花山院はどうしてもこれだけは聞いておきたかった。

 雷系統の魔法であれば、ヘドロキメラ相手にも立ち回れたのではないかと。

 それ以前に、もっとその魔法をアピールすれば皆が雨衣への評価を変えていたのではないかと。

 で、口を挟んだのはエルだ。


「雨衣のソレは魔法じゃありませんよ」


 だとさ。


「……エル、それは違うよ。これも魔法だよ」


「いえ、魔法ではありませんよそんなの」


「……魔法だって」


「いやいや、バチバチさせるだけじゃ魔法にならないっつってんですよ、おバカ。そのバチバチは殺傷能力ゼロでしょうに」


「……バチバチさせて敵にけん制もできるし、囮役にも使えてるんだけど」


「それは魔法じゃなくオマエの魔力が放電って形で目に見えるってだけですよ」


「……それって最早魔法って言ってもいいじゃないかな」


「お? まだ言いますか??」


「……なにさ」


「え~と、わたくしが言えたことではありませんがこの状況下で喧嘩しないでくださいまし!」


 間に挟まれ痴話喧嘩される花山院にはたまったものじゃない。


「まぁ……………………そうですね。今はそんな時ではねーです。雨衣、ワタシが少し大人げなかったみたいです。ごめんなさいです」


「……ううん。ボクもちょっとカッとなっちゃった。ごめんね、エル。今度、何か驕るよ」


「雨衣、オマエ……やはりイイ奴ですね。流石はワタシの見込んだ相棒です」


「……うん、エルもね。いつも頼りにしているよ、相棒」


「………」


 今、忘れてはならないのは逃走中でボス戦だということ。


(なんですの、これ……なんだか、いろんな意味で疲れて来ましたわ)

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