ロータス到着
中立都市ロータスに到着しました。
行商人さんは途中でおいてきました。暇すぎたのです。それに馬車の速度も遅いですし。
だからネルヴァの腕にの中で揺られてビューンと町まで駆け抜けてもらいました。
人目も一応他の人たちに迷惑をかけないように街道から離れて進んだので大丈夫でしょう。
馬車で一日、それからネルヴァに抱きかかえられて一日半。
馬車だと一週間ぐらいっていうからネルヴァに抱きかかえられての移動力は馬車の四倍っていう計算になるね。ああ、けどあの行商人さんの安そうな馬車で、一頭引き、それから荷物も結構積んである状態での見込みだからもうちょっと倍率は低いかも。
ああ、そうそう召喚リストからVITを強化する指輪の形の装備型の召喚体を見つけたからそっちにした。
ネルヴァに抱きかかえられて移動するときはそれをつけることにしている。天の加護はコストが高すぎるから。その分強化も大きいんだけどねえ。
この中立都市ロータスの特性はダンジョンだ。
ダンジョンがあるが故の中立都市とも言える。
その昔ダンジョンを放っておいて戦争をしていたら、ダンジョンから大量の魔物があふれ出たことがあるそうだ。それで一国が滅んだらしい。その時の学者たちはダンジョンを長期間放っておくと魔物が増えすぎてあふれ出ると推測した。だからダンジョンのある都市は中立都市にしようという取り決めができた。
たとえ戦争がおこったとしてもこの協定はやぶられることはない。そういう都市だ。
だからこの都市をプレイヤーの集合場所にしようと思ったのだ。
ただ、町を見て回って分かったけど、中立とはいえ、完全に戦争と無関係ではいられないみたいだ。
他種族同士いがみ合っているのが簡単に分かる。
たまに争いごとも発生してるみたいだし。
いや、そうだとも言い切れないかも。もしかしたら普段からこんな感じなのかもしれない。
ダンジョンを探索する荒くれ者どもが集まる都市だし。
普段がどうなのか知らないから比べようがないけど。
「ネルヴァ、それで借りたところはどこなの?下見をしたいんだけど。」
「少しお待ちください。」
そう言ってネルヴァが持っているカバンから一枚の紙を取り出す。
インベントリなんて希少な技能を持っていると知られたくないから、インベントリから物を取り出すときはカバンから取り出すように見せるというカモフラージュをしている。
「この都市のはずれもはずれですね。
一応スラム街からは外れてますが、治安がいい場所ではないのであまり離れないようにして下さい。」
「分かった。」
ネルヴァについて行くにしたがって、だんだん周りが荒みだした。
表通りのような活気がなくなって行く。
そしてネルヴァがここ中立都市ロータスに借りた家についた。
確かに周りはスラム街ではないようだ。
というより外れすぎるのか人じたいがほぼ見当たらない。
普段は表通りと同じくある意味治安がいいのだろう。なにしろ人がいないのだから。
けどなんかこれって裏取引とか、そういう感じの事に使われてそうな場所だ。
人目がないからそういう事するのに最適そうだし。
「中はどんな感じなの?」
塀で囲ってあるからここからじゃ中の様子が見えない。
「もとは道場として使っていたようですので、ただただ広い空間と、倉庫があるだけですね。
ですがこんな低価格の物件にしては珍しく、広い庭もあって、一応トイレもあるらしいですよ。」
「らしい?」
「はい、この都市に来てないので確認できていません。」
ああ。ネルヴァらしくない不明瞭な言い方に少し疑問に思ったけどそうだった。
ネルヴァはほとんどの時間私と一緒にいたんだから実際に見てないのは当たりまえだった。
「ただ、一応業者に掃除と補修を頼んでおいたのですぐに使えるようになっているはずです。」
「とりあえず中を見てみようか。」
「はい。」
中に入って一通り確認してみた。
感想、会場として使うにはいいかもしれないけど住むには向いてない。
「宿取ろうか。」
「そうした方が良さそうですね。
表通りの安全な所で宿をとりましょう。グレードはどの程度にしますか?」
「普通のでいいよ。安全なら。
お金はまだたくさんあるけど贅沢したらなかなかグレード落とせないらしいし。」
ドラゴンとかこっちの人なら普通は倒せないような魔物を狩って素材をある程度売っぱらったから今すっごいお金持ちだ。いやー、オークションってあんなに値段が吊り上るモノなんだね。
人間不信さえなければ会場に行ってその熱狂ぶりとか見てみたかったんだけどね。
「ではご主人様、表通りまで戻りますが」
「ネルヴァから離れないように、ね。」
「はい、そのようにお願いします。」
表通りに戻って宿をとったけど、結局そこそこの値段の宿をとることになった。
なんとこの都市の普通の宿屋にはお風呂がなかったのだ。
お菓子の家には湯沸かし器こそないものの湯船と排水機構はあったから毎日お風呂に入っていたのだ。
それがないというのはきつい。習慣になっていることはやめられないのだ。
そう、生活水準を下げることは難しいのだ。
それでも湯船は一階にしかなく、部屋にはなかったけど。
しかもわざわざ時間単位でお金を払って湯船を借りなければならないみたいだ。
なんか急かされてるようであまりゆっくりはできなかった。
そこが残念だ。
「ネルヴァ。」
髪を拭いてもらいながらネルヴァに話しかける。
「はいなんでしょう。」
「明日からは一応気持ちを切り替えてね。」
「・・・・はい、分かりました。」
少し間があったが理解してくれたようだ。
これまで私達を害する事ができる者はいなかった。この世界の人間は弱いから。人族も獣人も。
どっか秘境とかには私達を害する事が出来るものがいるのかもしれないし、
戦争の前線の方は見てないから分からないけど、それでも一般の兵士から推測するにたかが知れてる。
それが明日からは違う。
明日、プレイヤーがこちらの世界に現れる。
私は上位プレイヤーだったからといって油断はできない。
私はPvPはあまりしていなかったし、二人に囲まれたりすれば危ない。
万全の態勢で挑めば上位プレイヤー二人だろうと勝てる自信はある。
けど戦いはそうはいかないものだ。
基本的に召喚しているのはネルヴァのみと想定しておかなければいけない。
そうなると敵の攻撃の前に私が召喚出来るかが問題になる。
召喚できなければおそらく負ける。この世界では負け≒死だからね。油断できない。
そんな訳でこれからは今までのようなのほほんとした雰囲気でいるわけにはいかなくなるのだ。
けどまあ、今日ぐらいは最後の、のほほんとしてていい日だし。
「ネルヴァ」
「はい」
その日はいつも通りネルヴァに添い寝してもらって寝た。




