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自作小説倶楽部 第2冊/2011年上半期(第7-12集)  作者: 自作小説倶楽部
第9集(2011年3月)/テーマ「雛祭り」&「神社」
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NO.5 BENクー著 ひな祭り 『おばあちゃんのお雛さま』

「ウチにはね、古いお雛さまがあったとよ……」

テレビに映るひな祭りの様子を見ながら、おばあちゃんは感慨深そうにそうつぶやいた。それは今で言う七段飾りの大きくて立派なお雛さまで、僕の知らない曾祖母が持っていたものだったらしい。

「そん時あたしは小学校2年で東京に住んどったとよ。でも戦争で租界せにゃならんごてなってね。人形は持っていけんからて、床下の防空壕の中に置いてったたい……」

おばあちゃんたちはそれから1年間を疎開先で暮らしたが、戦争が終わって元の住んでいた場所を曽祖父が尋ねた時、そこは一面焼け野原になっていたという。当然ながら床下の防空壕など跡形もなくなっていたそうである。

「マキエがこまか(小さい)頃は生活するのがやっとだったけん、お雛さまなんか買ってる余裕なかったとよ。ああ、あん人形が残っとったらどぎゃん(どんなに)良かったろかね……」

おばあちゃんはそう言いながら、テレビの中で豪華に飾られたお雛さまを羨ましそうに見ていた。

「あんたたち兄弟のどっちかが女の子だったらね……こぎゃん(こんなに)見しゃん良か(見栄えの良い)人形ば買うてやったとにね(買ってあげたのにね)……」

おばあちゃんは、兄弟のどちらかが女の子じゃなかったのがとても残念でならないらしく、もう一息で7桁に達しようとする高額な雛人形を指差した。

『おばあちゃん、そんな高いものじゃなくて良いから今出てたお雛さまの10分の1を現金で戴けると非常に嬉しいんだけど……』僕がそう言った途端、

「……ああ、マキエの子が女の子じゃなくて良かったばい。余計な金ば遣わんで助かるけんね」

おばあちゃんはそう言うと、テーブルの上にあったサイフをすばやくエプロンのポケットにしまいこんだ。

僕は、思い出と現実の違いをまざまざと悟らされた・・・

-おしまい-

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