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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第44話

窓から入る日差しで目を開ける。

目の前に広がるのは石造りの天井。

唯一救いなのは、硬いベッドがあるこの部屋には一人ということだ。


(……戻ったか)


身体を起こす。

窓から差し込む朝の光。

静かな部屋。

だが――


(……頭を切り替えよう)


現状を再認識するため、アストラディアで起こっていることを思い浮かべる。

帝国が魔族の襲撃に見舞われていること。

その襲撃から辛くも逃げ、保護しているお姫様がいること。

そして――その襲撃を食い止めるため、帝国に向けて出発しようとしていること。


(色々と問題だけが積み重なっていくな)


ここは一度顔を洗ってからと、部屋を出て宿の裏庭にある井戸へ向かおうとする。

宿の一階に降りると、すでに全員揃っていた。

ミア、リリア、エレナ。

そして、セラ、フィア、ルナ。

総勢六人。


(……はたから見ると増えたな)


改めて思う。


「……おはよう」

「……おはようございます」


それぞれの声。

セラが軽く頭を下げる。


「本日もよろしくお願いします」

「ああ」


短く返す。


(……まだぎこちないが、ここからだな)


六人に促され一緒に朝食を採ることにするが、起きたばかりで先に井戸に向かい顔を洗う。

顔を洗うとさっきまでモヤモヤしていた考えをすっきり洗い流せたような気がした。

六人と一緒に食事を取り、ギルドへ向かう。

朝の街は相変わらず活気がある。

露店は野菜や肉等の生鮮食品を買い求める人でごった返しており、何も起きていない日常の風景そのまま。


(……隣国が魔族に侵攻されているとは思えない)


だが、それは“ここが前線じゃないから”だ。

扉を開ける。

ギルド内の空気が少しだけざわつく。

ベルナスのギルドに所属する冒険者の数は未だに増えず、現状は経験の少ない冒険者たちの集まりとなっている。


(……この状態も、マズイよな)


隣国が魔族による襲撃を受けているなら、現状の戦力ではベルナスは今度こそ陥落してしまう。

街の防衛についても考えを巡らせながら受付へ。

だが――


「ゼロ様」


先に声をかけられる。

ギルド長のハセル。

イケメンエルフが二階から降りてくる階段を早足でこちらに向かってくる。


「おはようございます。ギルド長。どうされました?」

「すみません。少しお時間をいただけますか?」


(……緊急の要件、か?)


ギルド長は明らかに慌てているので、ここは素直に頷く。

六人には下でクエスト受注をしておくように伝えてある。

ギルド長に促され二階の部屋へ。

部屋の中に先客はおらず、静寂に包まれている。

ハセルが息を吐く。


「まず、結論からお伝えします」


一拍。


「帝国への出発準備をお願い致します」

「……承知しました。案外あっさり、ですね」

「ええ。こちらでも色々と“工作”をしましたが、別件もあり許可が下りました」


(……別件?)


国家間の移動が難しいこの世界で、行政の判断が早いということはその”別件”が重要という判断だ。

王国側からすれば魔族の侵攻地域への介入なんて自殺行為であり、普通なら通る話じゃない。


「形式上は“ギルドの依頼”として処理します」

「分かった」

「ただし――」


ハセルが目を細める。


「戻ってこれる保証はありませんよ?」

「こちらに戻ってこないという判断もあり、ということですね?」

「……それは困るので、生きているなら戻ってきてください」


(……少しおふざけが過ぎたか)


ギルド長は苦笑いのままこちらを伺っている。


「無事に戻ってきますよ」


安心したかのようにギルド長が小さく笑う。


「健闘を祈っていますね。よろしくお願いします」

「それで、別件というのはなんだ?」


聞いたところで話すとは限らないが、探りは入れておきたい。

それを見透かされていたのか、ギルド長はすんなりと開示してきた。


「王国側にも被害がありましたので、帝国内にて前線を止めておきたいという理由と、魔族侵攻が本当であれば王国としても恩を売れるという、なんとも政治的な理由です」


聞いたこちらが後悔してしまった。

話も終わり、旅の準備もあるため六人を引き連れギルドを出る。


「顔色が優れないようですが、お話はどうでしたか?」


エレナが心配して聞いてきた。


「いや。どうでもいい政治のネタに使われて気分が良くないだけだ。とりあえず帝国へは予定通り救援に行ける準備が整った。今日のところはクエストをこなしたら、旅の準備をする」


全員の空気が変わる。


(……いい緊張感になればいいが)


「とりあえず、クエストは何を受注したんだ?」

「……ゴブリン」


ミアが簡潔に回答してくれる。


「それなら、アステリアの連携確認をしてみよう。最初はうまくいかないかもしれないが、時間は少ないがやれることをやるぞ」


セラとフィアが頷く。

ルナは無言。

だが――


(……問題なく動けるだろう)


ゴブリン討伐の装備を整え、街の外。

今日向かうのは、西の森手前に広がる草原。

草原には地下に続く洞穴が複数あり、万が一にもゴブリンの巣となった場合には、人だけでなく農業や畜産にも影響が出てしまう。


「今回は巣の発見ではないため、六人の連携確認を主にする。セラ、フィア、ルナは初実戦となるが、無理しないように」


六人を見まわし、思い描いていた陣形を告げる。


「前衛、ミア。まずはターゲットを取るように」

「……了解」

「前衛二列目は、リリアとセラ。ミアと連携して確実に仕留めるように」

「……うん」

「はい」

「後衛はフィアとルナ。フィアは弓で狙撃。倒さなくてもいいが、もう一段目標を高めに設定するなら、機動力を奪う目的で足を狙ってくれ」

「承知しました」

「ルナは自由。無理に動くな。支援できそうなら自己判断で頼む」


沈黙。

だが、小さく頷いた。


「エレナは遊撃として全体指揮。一番忙しいポジションだが、出来ると信じている」

「お任せください」


(……よし)


草原の草が長く成長している所を重点的に捜索する。

ゴブリンの習性として群れでいない限り、とにかく臆病。

そのため、隠れやすい場所を探していると遭遇する確率は高くなる。

捜索を開始して数十分で早くも戦闘開始。

相手は五匹。

ミアが飛び込み、リリアが追う。

セラはミアとリリアがターゲットになったことを確認して、横からの奇襲のために移動する。


(……いい判断だ)


相手の一匹が間合いを取り始めたところにフィアの矢。

これが注文通り足を的確に射抜く。

ルナ――は今回動かず。


(……密集しているから的確な判断だな)


エレナの声が飛ぶ。


「右、増援です」


全員の視線が動く。

現状ミア、リリア、セラが交戦中で増援への対処が遅れている。

その時、ルナが杖を向け、ブツブツと聞こえない声で何かを唱えている。

次の瞬間、増援できたゴブリンたちは氷の塊の中に封じ込められてしまう。


(……ルナの魔法は別格だな)


ほどなく戦闘終了。


「……終わり」


ミアとセラが息を整える。


「これが……実戦」


フィアは前衛の補助として、相手の行動先に矢を射ってけん制する等、こちらの求めている以上のことをしていた。

ルナは――魔法一発では疲れすらないらしい。


(……とはいえ、戦闘自体は問題なし、かな)


その後、何度かゴブリンの小規模な群れと出くわした後、クエスト完了報告も含めて街へ戻る。

次は買い出しだ。

まずは、武器屋。

前衛のミア、リリア、セラの剣をメンテナンスしてもらう。

防具屋では、それぞれの防具を買いなおす。

今の防具は初心者セットなので、長旅になることも想定して、重量は軽く、それでも防御力は落ちないものにしていく。

道具屋では、長旅になった時用の便利グッズを買い込む。

道中で料理することも考慮して鍋やお皿、コップ。

川の水を飲める水に浄化してくれる道具や虫が寄ってこないようにする道具も売っていたので買う。

食料や薬、携帯食は露店で概ね揃った。

その道中ーー


「エレナさん、これも持っていけ」

「ミアちゃん、これ取れたてだからもっていき。また、手伝いよろしくね」

「リリアさん、よかったら持っておいき」


といった貰い物に恵まれた。

買い物も済み、クエストの完了報告でギルドへ戻る。

いつもの受付嬢が完了処理する。


「確認しました――」


その途中、二階の扉が勢いよく開く音が下にまで聞こえてくる。


「ゼロ様!」


見上げるとギルド長が明らかに慌てている様子でこちらを見ている。


(……なんだ?)


「どうしました?」

「緊急なので、このまま失礼します!帝国にあるギルドからの連絡です!」


空気が止まる。

周りにいる冒険者等構っていられない状況なのだろう。


「ラグナード支部より救難要請が届きました!現在、魔族の侵攻を受け、負傷者多数、死者行方不明者は不明!教会及びギルド支部に避難して防衛しています!」


セラの顔色が変わる。


「……まさか」


ギルド長が続ける。


「まだ持ちこたえているようですが――時間の問題です!」


一拍。

周りの初心者冒険者たちはザワザワと騒ぎ出すが、今はそれを気にしている場合ではない。


「冒険者ギルドからの依頼です!明日、帝国に出発してください!指名依頼先として、ゼロ様及びアステリア!パーティ:アステリアは此度の任務中、パーティクラスをCとします!」


静寂。


(……そこまで来ている、のか)


「緊急で申し訳ありませんが、受注願います!」


ギルド長の話を聞いた受付嬢が超特急でクエスト要件の書類を作成し、差し出される。

受け取る。

ギルド長が口頭で言ったことと内容に差異がないか確認するが、問題なし。


「処理をお願いします。」


受付嬢に紙を渡し、ギルドを出る。

ギルドを出た瞬間、中から奇声が聞こえた気がするが気にしない。

空が赤い、既に夕焼けだ。


「……明日、出発だ」


全員を見る。

誰も迷わない。


(……いいな)


宿へ戻る。

六人とは別部屋は変わらない。


(……出発前に、日本、だな)


ゆっくりとベッドに横になって過ごしていると、部屋のドアをノックする音。


「エレナです。少しよろしいでしょうか?」

「どうぞ」


六人とも緊張しているのか、顔が強張っている。


「……そう緊張するな。出発前に、どちらにしても日本だ」

「そうですね。今から緊張していても、しょうがありませんね」


頭では理解していても、六人とも静かすぎる。


「……何か用事でもあったんじゃないか?」

「一つ試したいことがあるのですが……」


セラからの提案とは積極的だ。


「こちらの、サファイヤとルビー、エメラルドを日本に持っていけるか試してみたいのですが、よろしいでしょうか?」


ちょっと大きめの宝石たち。

こちらの世界では触媒として利用しているのは知っているが、それも日本に持って行ってどうするのか。

斜め上の話題が来て面食らうが、止めるようなことでもない。


「構わないんじゃないか?」

「ありがとうございます。物が持っていけるのか実験したくて」

「そうか」


短く返す。

六人は聞きたいことが聞けたからかそそくさと部屋へ戻っていった。

ベッドに横になる。

目を閉じる。

浮かぶのは――渋谷、黒いスーツの男。


(……エレナ達も接触した。必ず尻尾をつかむ)


ゆっくり息を吐く。

意識が沈む。

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