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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第2章 新たな出会いと奴隷少女

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第43話

包丁の音が、一定のリズムで響く。

トントン、と。


「……もう少し細かく」

「……こう?」

「はい、その調子です」


エレナとフィアが並んで野菜を刻んでいる。

セラは鍋の前で火加減を見ていた。


「これで……大丈夫でしょうか」

「はい、問題ありません。少し味を見てみてください」

「……こういうの、久しぶりです」


小さく笑う声。


(……楽しそう)


私はそれを横目で見ながら、皿を並べる。

一枚。二枚。三枚。

……六枚。

手が、少しだけ止まる。


(……多い)


前は、三人だった。

今は――六人。

小さなテーブルは埋まる。

部屋も、埋まる。


「……狭い」


ぽつりと漏れる。

リリアが横から覗く。


「……うん」


小さく頷いた。

夕食の用意をしていると、玄関までの廊下を歩いてくる音が聞こえる。

続いて鍵が回る音。


「……帰ってきた」


私は小さく呟く。

私は玄関まで小走りして扉が開く瞬間を待つ。


「ただいま」


ご主人様。

いつも通りの声。

でも――


(……少し、疲れてる)


靴を脱ぐ動き。

肩。呼吸。

ほんの少しだけ重い。


「……おかえり」


私は言う。

リリアも続く。


「……おかえり」


エレナが一歩前に出る。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


セラも立ち上がる。


「お疲れ様です」


ご主人様の視線が、部屋を見渡す。

すでに用意された人数分のお皿。

ご主人様の視線が一瞬だけ、止まる。


(……やっぱり、多いって思った)


「……飯、できてるのか」

「はい。ちょうど今出来上がったところです」


エレナが答える。


「なら、先に食うか」


短く言う。


(……いつも通り)


でも――少しだけ違う。

今日の夕ご飯はエレナが前から作ってみたいと言っていたロールキャベツ。

エレナは家事の合間にテレビで情報収集という名の楽しみを見つけている。


「……うまいな」


ご主人様が率直な感想を言う。

セラが少しだけ顔を上げる。


「本当ですか?」

「ああ」


短い言葉。

でも――


(……ちゃんと、伝わってる)


食事が一段落したところで、エレナが口を開く。


「ご主人様、本日あったことを報告します」

「聞こう」


エレナの声色が真剣だったためか、ご主人様は流さずに聞いてくれるようだ。

エレナは今日あったことを話し始める。

秋葉原での裏路地であったこと。

そこで出会った黒いスーツの男。

そこで行われていた渡された“何か”と逃げた男。

その時話した会話。

その後のルナの反応とルナの同胞たちに起こったこと。

エレナが、順序立てて話す。

ルナの部分は多少隠しているものの、話の流れや内容に無駄がない。

感情も、混ぜない。


「……以上です」


沈黙。

ご主人様が腕を組む。


「……なるほどな」


低く呟く。

セラが続く。


「この件、アストラディアとも無関係とは思えません」


ご主人様が視線を向ける。


「そうだな。こちらも少し話をしよう。昨日の仕事で同じような格好の男に出会った。その男は目の前で姿を消している。そういった意味でも、何かしら関係はあるだろう」

「この件が帝国と関係ないといいのですが。現状、帝王国がこちらの世界にちょっかいをかけていますので一番疑わしいのですが……」


一拍。


「……確かに」


ご主人様が頷く。

セラは帝国の話になったとたんに元気がなくなったように見える。


(……アストラディアで、何が起こっているんだろう?)


でも、まだ全部分かったわけじゃない。


「で、これからの話だ」


ご主人様が私たち全員に向けて言う。

空気が少しだけ締まる。


「今までの経験上、寝ればあっちだ。」


私たちの世界。


「帝国の件は避けられない。逃げるつもりもないし、セラはもう仲間だ。そのセラの故郷がピンチなのだから、まずは帝国を目指す」


誰も否定しない。

セラが申し訳なさそうにしながらも提案する。


「でしたら、一つ提案があります」

「なんだ?」

「現在の街――ベルナスから最も近い帝国の都市、“ラグナード”へ向かうべきです」


(……どこ?)


初めて聞く場所。


「私が王国に逃げてくるときに寄った街です。山向こうにあります。帝都はだいぶ北にありますのでいくつかの街を経由しながら向かうのが得策と思います。私が逃げてきたことで魔族からの襲撃は予測されますが、交戦状態にある都市からは遠いので、避難民も多くいるはずです。その分情報も集まります」

「……危険は?」

「高いです。魔族は私を追ってきていたので、ラグナードも大なり小なり交戦は予測されます」


即答。


「ですが、他の山越えした先の街を目指すよりも近く、安全かと思います」


沈黙。

ご主人様は腕を組んで考えている。


(……このしぐさの時は、問題ない)


もう、決めてる顔。

その時、エレナが静かに言う。


「ご主人様、もう一点確認しておきたいのですがよろしいですか」


ご主人様の視線がエレナへと動き、先を促す。


「ご主人様が出会ったという黒い男ですが、ルナの同胞たちの件と関係していそうですが、こちらはどうしますか?」

「現状はまだ情報が足りない状態だな。同じような服というだけで判断はできない。ルナは何かあるか?」


ルナがわずかに肩を動かす。


「……今日、見た人は、あいつらに、似ていると、思う」


ルナは、少しだけ俯く。

長い沈黙。


「……でも、今、分かってない、ことが、多いのも、事実」


小さな声。


「……ただ、もし全て、分かった時に、あいつらが、関係していたら」


ルナの赤い目が力強くご主人様を見ている。


「……その時は」


一拍。


「……私にも、力を、貸してほしい」


空気が止まる。

ご主人様はルナの言葉を受け止めてくれている。


「その時は、ここにいる全員で力を貸すさ」


ルナの頭をご主人様がなでる。


(……うらやましい)


それだけ。

それ以上は言わない。


(……それで、十分)


フィアとセラは笑顔で頷いている。

リリアが、ルナの袖を軽く引く。


「……大丈夫」


小さく。

ルナは何も言わない。

でも――


(……少しだけ、違う)


さっきより。

ほんの少しだけ。

ご主人様が目を閉じ、誰にも聞こえないほど小さく呟く。


「……薬……事件」


ぽつりと呟く。


「……黒スーツの男……異世界……拉致」


言葉を並べる。


(……こうなったご主人様は放っておくしかない)


「……まだ足りないな」


目を開ける。

ご主人様の悪い癖で、自分の中で整理して、ある程度答えを見つけてしまう。

私たちもその手伝いがしたいのに……


「だが、方向は見えた」


それだけ言う。


(……全部は言わない)


でも、分かる。


(……何か、掴んでる)


食事が終わる。

お風呂はご主人様が最初に入ることになり、私たち六人で片付け。

エレナ、セラ、フィアは食器や鍋を洗って片付け。

私、リリア、ルナで布団を敷く作業。


「……布団、どうする?」


リリアが言う。

私は部屋を見る。


(……置く場所、ない)


「……頑張る」


そう言うしかない。

もともと一人用の部屋だとご主人様は言っていた。

そんな場所に六人分の布団を用意できるはずもない。

広げる。押す。ずれる。


「……端、そこじゃない」

「……狭い」

「すみません、踏んで、しまいました」

「……大丈夫」


小さな声が重なる。

リリアは戸惑いながらも手伝う。

ルナは黙って位置を直す。

私は布団を押し込む。


(……ぎゅうぎゅう)


でも――


「……なんとか」


リリアが言う。

なんとか六人分の布団を敷けて、満足げに私は頷く。

ご主人様がお風呂から上がり、順々にお風呂に入っていく。

新しく来た三人には、シャワーの使い方やシャンプー、ボディソープの使い方を教えた。

そうこうしているうちに、ご主人様が部屋の灯りを消す。

暗く、静か。

すでに寝息を立てている人もいる。


(……多い)


でも。


(……悪くない)


目を閉じる。

すぐに分かる。

次は――


(……あっち)


アストラディア。

戦いは避けられない。

でも。


(……ここも、ある)


小さく、息を吐く。

意識が沈む。

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