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陰で育てる少女たちのチート冒険譚~奴隷少女たちを最強に育てる陰の策略~  作者: spichat
第4章 南部奪還と奴隷少女

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第108話

冷たい風が吹き抜ける。

この世界の時期は春であるにも関わらず、空から舞い落ちる雪は静かに地面を白く染め、吐く息も白く揺らめいていた。


(……ここは、いつ来ても寒いですね)


周囲を見渡しても、人の気配はない。

あるのは黒い岩肌と、どこまでも続く雪景色だけ。

人が住むには適さない、この環境。

食料すらまともに育たない。

その中央に、巨大な黒い建造物が静かに佇んでいる。

外壁には窓らしきものはなく、装飾も一切ない。

まるで誰にも存在を知られないためだけに造られた建物だ。


(……この建物も……不気味で好きになれません)


その最奥、広い円形の部屋には、大きな黒い円卓が置かれている。

円卓を囲むように十三脚の椅子。

既に十二人の黒いスーツ姿が席についていた。

全員が同じ服装で顔が見えないように隠している。

違うのは、その纏う空気だけ。

私は何事もなかったかのように円卓へ歩み寄る。


「失礼します」


誰も返事をしない。

私は空いていた最後の席へ腰を下ろした。

これで十三人。

誰一人として名を呼ばない。

やがて、最も奥に座る人物が静かに口を開く。


「お疲れ様。さて、《疫病》」

「はい」

「報告を、お願いできるかな?」


優しい口調の命令。

《疫病》と呼ばれた黒服は静かに立ち上がった。


「村の様子から。村長は無に帰しました。加えて、観察対象のゼロと接触をしました」


誰も反応を示さない。


「対象はやはり異世界人で間違いありません。我々の目的と衝突することも必須です」

「それで?どうだった?」

「近接戦闘能力、判断能力ともに良好。固有スキルは使用してこなかったため不明。とはいえ、"白"から得ている恩恵は最低限と思われます」

「あら?そうなんだ?」

「力の消耗から固有スキルに力を集約したものと。ステータスは高いですが、それまで」

「そっか……じゃあ、放置でいいのかな?」

「一つ、異世界由来と思われる武器を保持。"拳銃"と呼ばれるものでしたか。あれは脅威です」

「現代武器か~。それは面倒だね」


淡々と事実だけを並べる。

それに対して最奥に座る人物が相槌を打つ。

が、その相槌に興味の色は見えない。

そこへ一人が口を開いた。


「……それだけ?」

「というと?」

「……腕、折れてるよね?」


男は痛い素振りを見せていなかったが、指摘され苦い顔をする。

そこに口を開いた者がニヤリと笑う。


「……攻撃、受けたんだ?」

「防いだ。が、我の能力は知っているだろう?」

「そういうことか。でも、相当威力あったんだね」


会話はこれで終わる。

ここに居る十三人にとって他人など興味のうちに入らない。

それが例え同じ野望を抱く仲間であっても。

別の黒服が静かに頷く。


「ゆくゆくは、楽しめそうですね」


円卓の空気は終始変わらない。

驚きも賞賛もない。

ただ報告を共有するだけ。


「怪我の話はいいよ。で、同行者はいたの?確か、ラグナードだと居たって報告あったけど」

「六名でした。全員、一定以上の実力があると思います。リーダーはヒューマン。頭の回転も早く、連携の要です。特に魔法使いは我と同等の魔力行使が将来的には可能です」

「……相手を褒めるなんてね。見所あるんだ」

「ルナ、と呼ばれていました。」


今度は別の黒服が反応する。


「種族は~?」

「おそらく、ヴァンパイア」

「となると、生き残り、ですかね~」

「……」


問いを受けた黒服は答えない。

部屋に数秒だけ沈黙が流れる。


「まあ、いいです~。会うのが楽しみになってきましたよ~」

「おいおい。まだ、ダメだからね。欲しいんだろうけど、まだ我慢してね」

「分かりました~」


話が一区切りついたところで、《疫病》は静かに首を横へ振る。


「その人物については種族的にも完全な想定外ではありません。ですが、今後も成長するとなればゼロ同様に脅威になり得ます。対象に加えることを提案いたします」


奥の人物が小さく頷く。

奥の人物にとっては対象か増えようが、大したことではない。

興味の対象にすらなれないのだから。


「君がそう言うなら、そうしよっか」


興味があることはこの世界をどう導くか。

そのための布石かどう動いているかだけ。

今度は別の人物へ視線が向く。


「んじゃ、《飢餓》。お願い」

「はい。ピレネの装置は正常稼働中です。巫女への供給も問題ありません。ロックドラゴンは巫女の命令通り、魔物を迎撃しています」

「ふむふむ。で、どんな感じ?」

「魔物の誘引も想定域内で、ロックドラゴンでも十分対処可能です。ロックドラゴンの疲弊が顕著で、そろそろ均衡も崩れるでしょう」

「そっか……ロックドラゴンも期待外れか。で、お馬鹿さんは?」

「既にサウスノーランドへ移動しております」

「うんうん。そっちは良さそうだね」


短いやり取りだけで終わる。

《飢餓》が静かに席へ腰を下ろした。

続いて別の黒服が口を開く。


「んじゃ、最後。《戦禍》」

「うっす。帝国は、予定通り魔王ボロスが侵攻を継続してんな。首都はわざと城に籠城させて、消耗させてる。北側はほぼ陥落。残すは中央から南だな」

「そっか。魔王ボロスはもうちょっと脳筋かと思ってたけど、そうでもないのか」

「帝国にも一戦級の戦士は多いからな。案外クレバーで俺は好きだけどな。で、十指の損耗はラグナード以外はなし。補充もそう簡単に出来ないってんだから無駄遣いもできないけどな」

「ま、その辺は任せておこうか」

「了解」


その会話を聞いていた《疫病》が静かに眉を顰める。

その表情を逃さず見ていた奥の人物は、迷いなく答えた。


「《疾病》。回りくどいやり方なのは分かるけど、ここは任せちゃおう。こっちが動いて手が足りなくなるぐらいなら、動機を与えて自ら動いてくれる駒の方が楽ちんじゃん?」

「分かっております。考えていたのは別のことで」

「ああ。同じとことを王国にもするのかってこと?」


その一言だけで部屋の空気が僅かに変わる。

一人が地図を机へ広げる。

赤い印がいくつも付けられている。


「王国は、とりあえず内から崩そうか。魔王を動かそうとしても、ヴェルデナは動かないでしょ?」

「恐らく……」

「なら、王国はジワジワいこうか。あとは、帝国の南側だけど、あんまり広げすぎても手に負えないから、ここら辺で引いちゃおうか」

「……巫女は既に配置済、ですが?」

「汚い花火で締めくくろうか、そっちはさ」


奥の人物は静かに何度も頷いて、「綺麗に咲くかな」と呟いている。

数秒の沈黙の後――


「というわけで、相応しい結末を迎えてもらおっか」


誰も表情を変えない。

それが当然であるかのように話は進む。

《疫病》がもう一度立ち上がる。


「ピレネについて補足があります」

「補足?」

「魔王アズラが来ています。脅威ではありませんが、感のいい魔王なので注意は必要です」

「あちゃ~。アズラか。弱いのに頑張るよね」

「一応、戦闘力は削っております」

「……ロックドラゴンが耐えれなくなったら、アズラが出てくるかな?」

「恐らくは」

「彼女にも退場願うしかないか~。残念」


奥の人物は静かに目を閉じた。

アズラのことを弱いなんて言える人物なんてそうそういない。

それをあっけらかんと言ってしまえる。


「ま、関係ないか。他に報告漏れは大丈夫?」

「ありません」

「うっす」


全員が同時に頷く。

それ以上の会話はない。

やがて奥の人物がゆっくり立ち上がった。


「んじゃ、それぞれ行動に移ってね。危ないことはなしだよ?確認だけど、帝国は魔王ボロスに任せて、王国に焦点を当てるよ」

「「「「「了解。」」」」」


その返事と同時に、部屋の各所へ黒い魔法陣が浮かび上がる。

一人、また一人と姿を消していく。

最後に残ったのは、最奥の人物だけだった。

窓の外では雪が静かに降り続けている。


「……さてさて」


その人物は誰にも聞こえないほど小さく呟いた。


「どこまで辿り着けるかな、ゼロくん」


その言葉だけを残し、黒い空間には再び静寂だけが戻っていた。

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