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ファンタジー世界のトラベラー  作者: タケトシ
第一章:旅立ち
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第二話:旅立ち



「しかし、クスイとはなぁ~。結構、距離あるよな」

「そうですね。夜になる前に届けたいですね」

 コンハを出た二人は他愛無い話をしながら、クスイへ向かっていた。


「そう言えば、メニイは法術と魔術のどちらの方が得意なの? 俺は剣が得意だけど・・・」

 ゼイルは少し真剣な表情で尋ねる。

「私は法術の方が得意ですね」

 メニイは笑顔で返す。


 すると数メートル先にある草むらが突然 ’ガサッガサッ’っと揺れる。


「なんだ?」

 ゼイルは呟くと同時に、すかさずメニイの前に出て刀身が約一メートルの片手剣を抜き、中段の構えをとる。

「えっ?」

 少し戸惑ったメニイも一拍遅れて、一メートル程のステッキを構える。


 草の揺れが収まった。


 そう感じた瞬間

「グォガーッ!」

 ’ビュン ’とオオカミのようなモンスターが二人に向かって飛び掛かる。

「下がってて!」

 ゼイルはメニイに声をかけながら、モンスターに対して剣を握った右側を前に半身になった。

 踏み込むと同時に剣の切っ先を少し下げた直後、素早く振り上げる。

「ふんっ」

「グォ・・・ガ・・・」

 ’ザシュッ ’と胸を切り裂かれたモンスターが呻く。


 修練で何度も繰り返されたその動きは、とても滑らかで美しいものであった。

 メニイは戦闘中にも拘らず一瞬見惚れてしまった。


 と思ったのも束の間。

「グォガーッ!」

 ’ビュン ’と今度はゼイルの左側からモンスターが飛び出す。

「ちっ、他にもいたのか」

 今度はカウンターの姿勢をとろうとした刹那


  ’バリ バリィッ!! ’


 辺りの空気を揺るがす程の音が響いた。

 モンスターが煙を上げながら地面に倒れこむ。


 ゼイルは心臓が ’ドクンッドクンッ ’と鼓動しているのを感じた。

 緊張が解けると共に、驚いていたのだ。


「今のはライトニングだよね? メニイは魔術の無詠唱発動ができるんだね! まだ若いのに凄いじゃないか!!」


「いえっ。・・・ゼイルさんこそ素晴らしい剣技です! 感動しました」

 メニイは目を輝かせて答える。



 ’ガサッ ’ゼイルの背後の草むらから物音がしている。

「まだいるのか」

 すると彼は精神を集中して体内で魔力を練り、炎をイメージする。

 そして背後に向かって左手を差し出し、

「ファイアーボール!」

 呪文を唱えるとバレーボール程度の炎の球が発生し、飛び出した。


 魔術は元来、体内で魔力を練ってイメージしてから呪文を詠唱し、行使するものである。


 ’ボンッ ’と鳴って球が目標に直撃する。

「ぐっ・・・」

 呻くと地面に倒れた。

 ’ゴォオオオオオ・・・ ’


「うぎゃー!!」

「えっ、ひっ人!?」

 ゼイルが火球を直撃させた相手は人・・・酒場で二人に声をかけてきた紳士?であった。

「ウォーターボール!」

 すかさずメニイが魔術を詠唱し、消火する。

 魔術はイメージが重要な術で、詠唱を伴う方がより緻密な制御が可能であった。


 ゼイルは鎮火した紳士?の肩を揺すって声をかける。

「おいっ、大丈・・・」

 すると上を向いていた紳士?の顔が力無く’カクンッ ’と横を向いた。


「「・・・しっ、死んだ!!?」」

 ゼイルとメニイは絶句した。


 が、メニイは紳士?が呼吸していることに気づく。

「ヒール!」

 彼女は紳士?に向かって両手を広げると、回復系法術 ’ヒール ’を行使する。

 すると紳士?の顔色がよくなってゆき、傷が完治した。


 = 法術も魔術と同様の手順で行使する。

   その違いは操っているエネルギーが異なることである。

   すなわち法術は霊力、魔術は魔力を操る術であった。 =


「よしっ!大丈夫だね。これで問題ないな!」

 ゼイルは戦闘時とは別物の冷汗を拭いながら、喋り出す。

 「じゃあ行こうか、メニイ?」


「えっ、良いんですか?この人はこのままで・・・」

 メニイは紳士?を心配そうにチラチラ見ながら、ゼイルに質問した。


「この状況で意識が戻ると余計ややこしくなると思うよ。これ以上は何もできないよ」

 彼はそう答えると「仕方がないよ」と呟き、速足で歩きだす。

「ちょっと待って下さいよ~」

 そう言ってメニイも後に続く。



 初心冒険者二人が去って五分程度後。戦闘場所でムクッっと起き上がる影があった。

「やはり思った通りだ。・・・いやっ、想像以上だ」

 左手を胸の前で握りしめて呟く。

 「必ず彼らを我が力とするぞ。・・・あと、メニイちゃん可愛い」



「くちゅんっ」

 メニイはクシャミをしていた。


「可愛いクシャミだね・・・な~んつって」

 ゼイルが言うと

「もう、からかわないで下さい!」

 彼女は僅かに頬を膨らませた。


「えっ、風邪じゃないよね? 大丈夫?」

 心配して尋ねるゼイルに、メニイは「違いますよ」と苦笑いして答えた。


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 

 次話は明日(2025/11/2)の13時ごろに投稿する予定です。

 もしよかったらご覧ください。

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