第27話 ファンたちの祈り
第27話 ファンたちの祈り
■冒頭ナレーション
「怒りは一過性だ。だが、祈りは残る」
タカタ・ユナの死後、「YUNA/REVENGE」のコメント欄は、日に日に“祈り”で埋め尽くされていった。
【あなたの言葉は、生きてる】【今度は私たちが、責任と向き合います】【どうか安らかに】
その声の一つひとつは、静かで、しかし力強かった。
■静岡・高校生ミカの視点
静岡の海辺の町。高校生のミカは、夜の自室でユナの最終動画を何度も繰り返し再生していた。
両親は報道によって壊された家庭の被害者。父は冤罪で仕事を失い、母はうつ病に。家の中からは笑い声が消えた。
「ユナさん……ありがとう。私が声を出してもいいんだって思えた」
ミカはノートを取り出し、初めて自分の思いを綴った。
——“怒ることは恥じゃない。黙らないことが、私たちの第一歩だと思った”
■北海道・元芸人コウヘイの視点
函館の居酒屋のテレビに映るのは、ヒサシの過去のネタ映像。元芸人コウヘイはそれを見ながら、涙を隠すようにビールを流し込んだ。
「本当はさ、あの人のネタ、何度もパクったんだよ。誰にも言ってないけどさ。でも、許される気がした。だって、面白かったから」
カウンターの横でスマホを開き、コウヘイはつぶやく。
「ありがとう、ヒサシさん。そしてユナちゃん……あんたの怒りは、俺の笑いを思い出させてくれたよ」
■レイナ 視点(語り継ぐ者として)
都内、配信スタジオ。ユナの死後、レイナはユナのチャンネルを引き継ぐ形で配信を始めていた。
背景には白いバナーにこう書かれている。
——「Not Anger, But Laughter(怒りではなく、笑いを)」
「私は、ユナの親友でした。彼女は確かに多くを壊した。でもその壊し方は、“未来のため”だったと私は信じてます」
「今度は、私たちが語り継ぎます。“怒り”じゃなく、“祈り”という形で」
■動画演出
レイナの配信には、ファンたちからの手紙や動画が続々と集まった。そこには、怒りではなく感謝があった。
「娘が、報道の被害に遭って口を閉ざしていました。でもユナさんの動画を見て、初めて話してくれました」
「ユナさん、あなたの言葉が、私たちの沈黙を終わらせてくれました」
そして動画の最後には、ユナが遺した言葉が映し出された。
——“誰かの笑いが、誰かの命を奪わない世の中であってほしい。それだけが、私の本当の願いでした”
■ナレーション
その言葉は、今も静かに燃えている。怒りの炎ではなく、“祈り”という形で。
社会は変わらない。だけど、人の心は変わる。
その一人ひとりが、ユナの遺志をつないでいく。
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